表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第八章 神軍の結束編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/153

二 予定

感想をお待ちしております。

 七月十三日、木曜日。

 ついに梅雨明けが宣言され、季節は夏本番を迎えようとしていた。


 前期の期末試験を乗り切れば、その後には楽しい楽しい夏休みが待っている。今年は美波や桃たちと海や温泉に行ったり、バーベキューをしたりする予定なので、ぼっちだった去年よりも大学生らしい夏を過ごすことができそうだ。


 私はこの頃、心身ともに疲れ果てていた。魔女や死神に襲われて、何度も死にそうな目に遭ったためだ。しかも、梅雨のジメジメとした空気のせいで余計に気分が悪くなった。とても憂鬱で気が重い日々を過ごしていたのである。


 だけど、今は違う。頭上にはスカッと晴れた青い夏空が広がっていた。

 遠くの方でもくもくと立ち昇る入道雲やセミの鳴き声が風流を感じさせる。これぞ日本の夏だ。


「今日暑いね。いつものカフェで涼んでいこうよ。この季節はかき氷もやってるみたい」


 汗でツインテールを萎びさせた桃が提案してきた。彼女の言う「いつものカフェ」とは、岸和田由希子がバイトをしている大学近くの喫茶店のことだ。


 四回生で来年の春には大学を卒業する岸和田先輩だが、彼女はロクに就職活動をしていなかった。そのため、企業からの内定は最近までまったくのゼロだった。ところが、バイト先である喫茶店のマスターから店を継ぐことになり、卒業後はこの店で働くことが決まっているのだ。


「春ちゃんもかき氷食べたいでしょ?」

「私は別にいいわ。冷たいものを食べたら頭が痛くなるのよ。でも、この後はどうせ暇だし、少しお茶するだけならいいわよ。一緒に行きましょう」

「わぁい!」


 今日の講義は三限目でおしまいだった。特にすることもないので、四限目の講義を受けている美波たちを待つだけだ。その間、喫茶店でテスト勉強でもしながら過ごすのもアリだろう。


 私と桃はそのまま喫茶店へと向かうことになった。


「いらっしゃい」


 店に入るとマスターがカウンターに立っていた。私たちは窓際のテーブル席に座り、メニュー表を眺める。


「これだよ、これこれ。ゆっこが言ってた白玉ぜんざいのかき氷。桃、これにする!」


 店の壁に貼られた「夏季限定メニュー」を指差す桃。

 白玉ぜんざいのかき氷。値段は税込756円。


「私はアイスコーヒーにしておくわ。あまりお金ないから」


 大学入学以来、バイト代をコツコツ貯めて今年の春から自動車の教習所へ通い始めた。そして、あと少しで免許を取得できる段階までやってきた。


 教習所代は親が半分払ってくれたのだが、それでも私にとっては大きな出費だった。おかげで銀行の口座には少ししかお金が残っていない。また、夏休みは遊ぶ予定もたくさんあるので、今ここで無駄遣いをするわけにもいかないのだ。再びバイト代を溜めていかなければならない。


 先月と今月はかなりバイトを頑張ったものだ。他の用事がない日はできるだけたくさん働いた。すると案の定、菜々香もシフトの数が多くなった。彼女はいつも私と同じ時間にシフトを合わせてくる。相変わらず人目を盗んで私の胸や尻を触るなどして、セクハラという名の求愛行動をぶつけてくるが、彼女とはそれなりに仲良くやっている。


 この前は映画の約束をドタキャンしてしまい、明日はその埋め合わせをすることになっている。講義が終わった後、夕方から映画を観て、それから食事をする。そして、食事が終わった後に「埋め合わせ」が始まる。


 私は何でもすると言ってしまった。すると、菜々香は「家に来てほしい」と要求した。


 そこで何をされるかわからないが、約束は守らなければならない。私の都合で振り回されてしまったのに、文句一つ言わなかった彼女には誠意を見せるべきだ。


 だから、「多少のこと」であれば好きにされても構わないと覚悟している。


 とはいえ、私は絶対に女とそういう関係になるつもりはない。ただし、アンネリーゼとの契約は別だ。あれはノーカウントである。お互いの欲望を満たし合うために、魔女と戯れることもあるが、私は心まで百合に染まったわけではない。あくまで生きるために必要な行為であり、そこに特別な感情はないのである。


「すみませーん。注文いいですかー?」


 桃が声を上げる。


 その次の瞬間、厨房から岸和田由希子が出てきて、物凄い速さで私たちの席まで注文を伺いにやって来た。


「はぁーい! はい! 今日は何にするのかな? 桃たん」

「白玉ぜんざいのかき氷!」

「かしこまり! 桃たんのために、た~っぷり愛情を込めて、と~っても美味しいかき氷を用意するからね」

「うん! 楽しみにしてるよ!」

「……で、貴様は?」

「アイスコーヒーで」

「ん、アイスコーヒーな」


 私と桃で接客態度が違い過ぎるでしょ、この人。テンションも声のトーンも下がりまくりだ。まるでジェットコースターみたい。


 注文を聞き取った岸和田先輩は厨房へ引っ込んだ。これから早速、かき氷作りを開始するのだった。


「ゆっこ楽しそうだね」

「そうね」


 あの人は桃が店に来た時はいつも嬉しそうにデレデレしている。まさにベタ惚れだった。


友達と喫茶店でまったりと過ごす。今となっては、こうした何気ない日常が私にはとても愛しく感じられる。


 夏の予定は盛りだくさんだ。色んな所へ行って、たくさんの思い出を作りたい。


 旅行や食事を自由に楽しむことができる日々。いつかそれが奪われる可能性もゼロとは言い切れない。この先、何が起こるかわからないのだ。当たり前の日常が永遠に続く保証はどこにもない。


「ねぇ、桃」

「なーに?」

「後で皆が揃ったら、夏休みの予定を話し合いましょう。旅行の行き先、そろそろ決めておかないと」

「うん、そうだね。旅館の予約もしなきゃいけないもんね」


 夏休みまであと少し。今年は最高の夏になることを願っている。


お読みいただきありがとうございます。

感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ