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lie.11 感激の涙

物語を進めようとするとそうそう嘘なんかついていられません。


 やべー。おっさん超怒ってる。俺のせいか。俺の悪い癖のせいか。


 「魔女なんかに大事なお母さんの病気が治せるわけないだろう」


 あれ、おっさん……そこなの?お母さんの件は信じてるの?なんでそんなに同情に満ちた眼で俺を見る。気色悪いからやめてくれ。俺が言ったから悪いんだけどね。そして、魔女なんかって、魔女いるんですか。


 「ライター、おなかすいた」


 アイルが俺のマントを引っ張りながら、能天気な声を出した。なんでこのタイミング? アイルの声は俺以外の人にも聞こえているから、つまりおっさんの耳にもしっかり届いているわけだ。おっさんは、周囲を見回して腑に落ちない顔をしている。そりゃそうだ。でもライタというのが俺のことだとバレなければ、不思議な声を俺は聞かなかったことにして、何とかなる。


 「ねえー聞いてんの? 魔女なんか探さなくていーから、あんぱん食べたい。探してきてー」


 なんて奴だ。アイル。おっさんが完全にこっち見てるから。俺に話しかけてるってバレちゃってるから。「あーんーぱーんー」と騒ぎ立てるアイルの声に、おっさんはびびりまくった。


 ごく普通に霊とか妖怪の存在を受け入れている人たちもいるらしいけど、この様子じゃあこの街の人たちはそういう人種ではないらしい。そうなると、早くアイルを黙らせないと、俺は怪しいものに憑りつかれた人間、出てけーってことになってしまう。


 よし、作戦はこうだ。アイルのせいでお母さんが病気だということにして、魔女に会わせてもらおう。そういうことなら魔女でも役に立つ、とかおっさんは言うと思う。言うはずだ。


 「そういうことなら魔女を連れてくる」


 ええええ。まだ何も言ってないけど。何も作戦開始してないけど。アイルの声聞こえただけでどんだけ先まで読んでるんだ。何を深読みしたの。俺、なんだと思われてるの。


 なにはともあれ、おっさんは魔女を探して来てくれるということなので、俺は厚く礼を申し上げた。それはもう、お母さんの病気を治してくれるっていうんだから。泣いて喜びましたとも。



 んなわけないだろ。意味わかんないから黙って棒立ちしていましたとも。


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