lie.10 名演技
こんな感じで冒険と呼べるのでしょうか。今更ながら、一話を短くしすぎた。戦闘とか長い会話が書けません。どうしよう。
一代目とは、世界の繋ぎ目からここにやってきた者の総称である。他にもいくつか呼び名はあるが、共通した誰にでも通じる言い方でいうならばこれ。ちなみに、先祖の元を辿るとみんな異世界から来てるから、特別に思われるのは一代目だけ。
俺が明らかに余所者な服装で、このメルヘンで統一された町に踏み込んだから、一代目だと思われたようだ。
無愛想なおっさんは、恰幅が良くて真っ黒い髭を生やしている。緑色のチェックの小じゃれたスーツを着ていて、俺にしてみればうざったい恰好だ。この辺りの人はみんなそうみたいだけどな。
「2代目」
俺はおっさんの緑のチョッキをじろじろ見ながらぶっきらぼうに答えた。だって、美少女じゃなかったから。魔女でもないし。
「何しに来た」
アレおかしいな。警戒されまくっているようだ。隣でアイルが不安げな眼をしている。可愛い。
街はメルヘンな感じだし、ここはあれだな。メルヘンな感じで解決だ。
「母親が病気で、なんとか治してあげたくて魔女を探しているんです」
俺は見事にうなだれて見せた。名演技だ。学校の演劇でもいつも主役を演じていたからな。ちなみに具体的にどんな役をやったかというと。めかぶだ。あと、カビ役。どっちもかなりの演技力が必要だからな。いっとくけど、俺はちゃんとめかぶ的な動きをしたからな。カビは知らん。
何はともあれ、俺の名演技はおっさんのこころを動かしたようだ。おっさんは目に涙を浮かべ、俺の肩を叩き、うんうんと頷いた……わけじゃなかった。おっさんに怒鳴られた。
「嘘吐くんじゃねえ。悪ガキが!」
あれ?おかしいな。めかぶを演じ切った俺にこなせない役はないはずだ。
なんでバレた……。
嘘をつくのがうまいのと、演技力は別ですね。