lie.1 旅立ちの朝
500文字程度を一話として、毎日更新を目指しています。
軽い気持ちで楽しんでいただけたら幸いです。嘘つきが嫌いな人は読まないことをお勧めいたします。
冒険に出る朝の空は、どんよりと曇った日がいいだろうか。
それとも、生憎の雨か酷い嵐。明るい未来を思わせる晴天。雪の日の静かな朝を、白い息を吐きながらひっそりと足跡を残して、なんていうのも素敵じゃないか。
砂塵の中で目を細め、マントをはためかせて……目に砂が入るのは嫌だから駄目だ。
そうだな、やっぱり雨上がりの後の、雲間から差し込む白い光に微笑みながら、っていうのが一番いいな。でも、水たまりの泥で新品のブーツを汚すこともないか。
ていうか、俺が出発するのは夜中なんだけどね。でも本当は朝がいいじゃん。決意を胸に旅立つ朝。いいじゃん。
それで長々と妄想を繰り広げてしまったわけだ。どうしても、夜中に出発って納得できない。だって夜逃げみたいな、なんかやましいことがあるみたいだし。
秘密裏に進められた作戦、今日こそ決行のとき。敵には全く知られていない筈だ。俺は大切な最期の任務のため、真夜中のうちにアジトを出た。
うん。これなら格好いい。でも俺は別に秘密の作戦だからとか、そういう理由で夜中に行動しなければならないわけじゃない。
現実はもっとずっと辛いものだ。
嘘ついた。ごめんなさい辛くないです、はい。辛いっていうか痛い。
俺には人目の付くときに出発できない理由がある。だって……
お母さんに怒られるからね。
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