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昨日の夜、街にはぼたん雪が降り積もり始めていた。
見渡す限りの、白銀の世界に僕は見惚れていたんだ。
街灯の光はそんな僕を柔らかく包んでくれた。
この世界に一人ぼっちだ、なんて、小説の主人公みたいなことも呟いてみたりした。
零時を駅前の時計がさす頃、何となく人恋しくなって、
かばんから携帯を取り出して、君の名前を電話帳から探す。
ら行までスクロールさせて気付いた。
もう、君に電話したって君は出てくれないってことを。
笑い声も、泣き声も、照れたときのぶっきらぼうな言い方も全部聞けないんだ。
来年も、一緒に居よう、初参りも行こうって言っていたのになぁ…。
呟いた言葉は、吐きだした息と一緒に空に溶けていく。
手を空に伸ばして、言葉を捕まえようとしたけど、空気を掴んだだけだった。
いつも君は夜空を見ると、星を捕まえようとして、手を伸ばしていたなぁ…
来年なんて来なくていいから、僕を誰か君が隣に居た頃に連れて行ってくれよ。
冷房の緩くかかった、真っ白な部屋で眼鏡の白衣を着た人と赤い目をした君。
ループする君の言葉。今でも、頭から離れてくれないんだ。
夜明けの明星が東の空に見え始めている。
失ってしまったものは、二度と手には入れられないことは分かっているんだ。
人間なんて脆いものさ、だから僕は今、駅のホームを蹴った。
死んだら、君には幸せに生きてほしい。
残されたら、君の傍に行きたい。
タイトルでお気づきかと思いますが、
ちょっと、今回は遊んでみました。