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第1話

新連載スタートです!お試しに書いてみました

大学一美人の恭子が、地味で少し疲れた教授に恋するお話。


美人でモテるのに、彼女が夢中になったのは冴えない教授――

天然だけどちょっと過激?な愛の形をお楽しみください。


ラブコメ要素と、少し狂気じみた愛の両方を味わえる作品です。

「……今日も、倉持教授は三本目だ」


大学構内の喫煙所。秋の風に落ち葉が舞う中、大洗恭子はベンチの影に隠れるように座り、指折り数えていた。


吸い殻が灰皿に落ちるたび、心臓がちょっとだけドキドキする。

煙草の先がほの赤く光り、教授が静かに吐き出した煙が、白く空気に溶けていく。


(……ああ、今日も格好いい)


誰が見ても「普通の中年男」と言うだろう。

背は170そこそこ、少し猫背で、スーツはいつも皺が寄っている。

眼鏡の奥の目元にはクマがあり、髪はところどころ白いものが混じり始めていた。

けれど恭子にとっては、その疲れ切った横顔がたまらなく愛おしい。

眼鏡をくいっと直す指先――骨ばって、少し節くれ立ったその手は、彼女にとって宝石のように見えた。


対して恭子は、学内では誰もが振り返る美貌の持ち主だった。

黒髪はさらさらと光をはじき、白い肌に整った目鼻立ち。

長い脚を揺らしながら歩けば、周囲の男子学生がこぞって目で追う。

昨年の学園祭でミスキャンパスに選ばれて以来、声をかけられたことは数知れない。

それでも、彼女の目に映るのはただ一人――このくたびれた教授だけだった。


恭子はスマホを取り出し、今日の記録をつけ始める。


《今日の教授リスト》

・煙草:セブンスター 三本

・昼食:学食A定食(焼き魚)

・本:カバンの隙間から岩波文庫(青背表紙)確認


恭子はそのメモをもとに、帰りに同じ焼き魚定食を食べ、本屋で同じ文庫を買ってみるつもりだった。

教授と同じことをしてみる――それだけで世界は幸せに満ちる。


「ちょっと、恭子」

「ん? あ、優子」


小学校からの幼馴染である優子が、あきれ顔で恭子の横にしゃがみこんだ。


「……また教授を追いかけてるの? マジで面白い趣味だね」

「え? 私、ただ観察してるだけだよ?」

「それをストーキングって言うけどね!」


優子のツッコミに、恭子はにっこり微笑んだ。

その笑顔は氷を溶かすように柔らかく、そして――どこかコミカルな狂気を感じさせる。


「だって……教授のこと、愛してるの。ただそれだけだから」


優子は背筋に軽くぞくりとする。

恭子の視線は遠く、煙をくゆらせる教授にだけ注がれていた。



---


一方、そのころ倉持教授は研究室へ向かいながら、胸の奥の違和感を振り払おうとしていた。


最近、視線を感じることが多い。

食堂でも、書店でも、キャンパスの廊下でも。

振り向けば誰もいない。

でも確かに、誰かに見られている――気がする。


倉持教授は41歳。研究に没頭するうちに、結婚の機会も逃した。

自分は平凡で、地味で、冴えない男だと自覚している。

学生たちが眩しく、自分とは別世界に生きているように思える。


(……まあ、気のせいだろう)


そう自分に言い聞かせる。

だが、その胸の奥に小さなざわめきが芽生え始めていた。



---

第1話、読んでくださりありがとうございます!

恭子は天然で無自覚だけど、その愛は本気。

教授はまだ気づいていないけれど、少しずつその視線に気づき始めます。


今後は、恭子の可愛さとコミカルな狂気、教授の揺れる心をじっくり描いていきます。

次回もお楽しみに!

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