第7話「敵の『切り札』と、アイリスの『計画』」
僕たちは、第5実験都市の時空兵器のコアへとたどり着いた。
コアは、巨大なカプセルの中に設置されており、その周囲は、幾重もの防御壁によって守られていた。
僕たちの目の前に現れたのは、敵対勢力の兵士たち。
だが、彼らは、僕たちがこれまで戦ってきた兵士たちとは、明らかに違っていた。
「……彼らは、生身の人間ではない。クローン兵士だ」
アイリスは、僕にそう告げる。
僕の脳内にあるデータが、即座にその情報を分析する。
クローン兵士。
それは、時間戦争の初期に開発された、戦闘に特化した兵士たちだ。
彼らは、痛みを感じず、恐怖を知らない。
そして、彼らは、死ぬたびに、より強く、より賢くなっていく。
「アレクサンドル。彼らは、君と同じだ」
アイリスは、アレクサンドルにそう告げる。
『不滅の兵士』。
それは、死ぬたびに強くなる、絶望的な能力だ。
だが、僕たちは、彼を記憶を失うことのない、本当の英雄として、この世界に召喚した。
だからこそ、彼は、この能力を、最大の武器として使うことができる。
「僕の役割は、彼が死んだ時、彼を蘇らせ、彼の記憶を保持させること。だが、彼らは、それを必要としない。彼らは、最初から『記憶を失う』という設定がされている」
僕は、アイリスにそう尋ねる。
「そうよ。彼らは、死ぬたびに、新たな知識と経験を、彼らの脳内にインストールする。彼らは、永遠に進化し続ける、完璧な兵士たちなの」
アイリスの言葉は、僕たちの心を深く抉った。
僕たちは、永遠に進化し続ける、完璧な兵士たちと戦わなければならない。
「アレクサンドル。君の『不滅の兵士』としての能力は、彼らには通用しない。彼らは、君が死ぬたびに、君の戦闘データを分析し、君の弱点を学習する。君は、彼らの実験台にされてしまう」
アイリスは、アレクサンドルにそう告げる。
アレクサンドルは、その言葉に、静かに頷いた。
彼は、自分が戦い続けることで、敵の兵士たちが進化していくという、絶望的な状況を理解していた。
「……では、どうすればいいんだ?」
「彼らと戦う必要はない。このコアを破壊するのよ」
アイリスは、僕にそう告げる。
「このコアは、この時空兵器を制御するための、中枢システム。このコアを破壊すれば、時空兵器は暴走し、この実験都市は、時空の彼方へと消滅する」
「だが、そんなことをすれば、僕たちも……」
僕は、アイリスにそう尋ねる。
「大丈夫。このコアは、時空の歪みを制御するための、もう一つの役割を持っている。このコアを破壊する直前に、私は、時空の歪みを逆転させる。そうすれば、私たちは、時空の歪みから解放され、この場所から脱出できる」
アイリスは、僕の目をまっすぐに見つめ、そう言った。
彼女の言葉は、まるで未来の出来事を全て見通しているかのように、完璧なタイミングで僕たちに指示を出す。
僕の物語は、ここから、僕とアイリス、そしてアレクサンドル、三人で紡ぎ始める。
敵の『切り札』であるクローン兵士たちを前に、僕たちは、アイリスの『計画』を信じ、最後の戦いへと向かうのだった。