第6話「第5実験都市、そして『死の実験』」
僕たちは、アイリス、そしてアレクサンドルと共に、第5実験都市へと向かっていた。
第5実験都市は、かつては高度な科学技術を誇る研究都市だった。
だが、時間戦争によって、その全てが破壊され、今は廃墟と化していた。
そこは、敵対勢力が開発した時空兵器の実験場となっていた。
「第5実験都市は、敵対勢力の時空兵器によって、空間が歪められているわ。不用意に触れると、君たちの肉体は、時空の彼方へと消滅してしまう」
アイリスは、僕たちにそう告げる。
彼女の記憶の中には、第5実験都市の地形、そして時空の歪みの場所が、すべて刻まれている。
彼女は、まるで未来の出来事を全て見通しているかのように、完璧なタイミングで僕たちに指示を出す。
「高階レン。あなたの『エグゾダス・ゼロ』としての能力は、アレクサンドルのサポートです。彼が死んだ時、あなたは彼を蘇らせ、彼の記憶を保持させることができる。それが、あなたの役割です」
ソフィア博士は、僕にそう告げる。
僕の役割は、アレクサンドルを死なせないことではない。
彼が死んだ時、彼を蘇らせ、彼の記憶を保持させること。
それが、僕に課せられた、あまりにも残酷な役割だった。
第5実験都市へと到着すると、僕たちは、アイリスの指示に従い、廃墟の中を進んでいった。
そこには、時空兵器の残骸が、無数に転がっていた。
その残骸に触れると、僕たちの肉体は、時空の彼方へと消滅してしまう。
「アレクサンドル。あなたの『不滅の兵士』としての能力は、この任務でこそ真価を発揮する」
アイリスは、アレクサンドルにそう告げる。
『不滅の兵士』の能力。
それは、死ぬたびに強くなる、絶望的な能力だ。
だが、僕たちは、彼を記憶を失うことのない、本当の英雄として、この世界に召喚した。
だからこそ、彼は、この能力を、最大の武器として使うことができる。
僕たちは、廃墟の中央にある、時空兵器のコアへと向かっていた。
そのコアには、敵対勢力の兵士たちが、警備についていた。
彼らは、僕たちを見て、一斉に銃を構える。
「アレクサンドル。あなたの出番よ」
アイリスの言葉と同時に、アレクサンドルは、敵対勢力の兵士たちへと突進していく。
彼の肉体は、銃弾を浴び、何度も倒れる。
だが、その度に、彼は蘇る。
そして、蘇るたびに、彼の肉体は強くなり、彼の精神は研ぎ澄まされていく。
僕は、その光景を、ただ見ていることしかできなかった。
アレクサンドルの死と蘇りを、僕は、ただ見ていることしかできなかった。
僕の役割は、彼が死んだ時、彼を蘇らせ、彼の記憶を保持させること。
それが、僕に課せられた、あまりにも残酷な役割だった。
アレクサンドルは、敵対勢力の兵士たちを、一人残らず倒した。
彼の肉体には、無数の傷跡が刻まれている。
だが、彼の顔には、苦痛の表情はなかった。
「……高階レン。俺は、何度も死んだ。だが、その度に、お前が俺を蘇らせ、俺の記憶を保持させてくれた。ありがとう」
アレクサンドルは、僕にそう告げる。
僕は、彼の言葉に、胸が締め付けられる思いだった。
僕たちは、この世界の運命を変えるために、最初の『死の実験』を乗り越えたのだ。