第5話「『不滅の兵士』の決意、そして最初の任務」
アレクサンドルは、僕たちを見て、静かに微笑んだ。
その笑顔は、僕がこの世界で見てきた、誰もが諦めと絶望に満ちた顔とは、全く違っていた。
彼は、ゆっくりと立ち上がると、僕たちの前に膝をついた。
「アレクサンドル・ヴォルコフ。君は、別の時間軸で、何度も死に、蘇り続けた兵士だ」
アイリスは、彼にそう告げる。
「だが、この世界で、君は二度と記憶を失うことはない。君は、この世界の運命を変えるために、ここに召喚された、**“存在しなかった英雄”**だ」
アレクサンドルは、僕たちの言葉に、深く頭を垂れた。
「私は、何度も死に、何度も蘇った。その度に、私の記憶は失われ、私の心は壊れていった。だが、私は、最後まで戦い続けた。別の時間軸で、世界が滅びたその日まで、たった一人で」
彼の言葉は、僕たちの胸を締め付けた。
彼の記憶は、消えていない。
彼は、自分が死んだ瞬間のことを、鮮明に覚えている。
僕たちは、彼を記憶を失うことのない、本当の英雄として、この世界に召喚することに成功したのだ。
「アレクサンドル。君は、もう一人ではない。私たちと共に、この世界の運命を変えよう」
僕は、彼に手を差し伸べた。
アレクサンドルは、その手を握り返した。
その手は、冷たく、そして、温かかった。
僕たちは、ソフィア博士の指示に従い、新たな任務へと向かうことになった。
最初の任務は、時間戦争の最前線にある、第5実験都市への潜入だ。
第5実験都市は、敵対勢力が開発した時空兵器の実験場となっていた。
その時空兵器を破壊し、敵対勢力の戦力を削ぐことが、僕たちの最初の任務だった。
「アレクサンドル。君の『不滅の兵士』としての能力は、この任務でこそ真価を発揮する」
アイリスは、アレクサンドルにそう告げる。
『不滅の兵士』の能力。
それは、死ぬたびに強くなる、絶望的な能力だ。
だが、僕たちは、彼を記憶を失うことのない、本当の英雄として、この世界に召喚した。
だからこそ、彼は、この能力を、最大の武器として使うことができる。
「高階レン。あなたの『エグゾダス・ゼロ』としての能力は、アレクサンドルのサポートです。彼が死んだ時、あなたは彼を蘇らせ、彼の記憶を保持させることができる。それが、あなたの役割です」
ソフィア博士は、僕にそう告げる。
僕の役割は、アレクサンドルを死なせないことではない。
彼が死んだ時、彼を蘇らせ、彼の記憶を保持させること。
それが、僕に課せられた、あまりにも残酷な役割だった。
僕は、アイリス、そしてアレクサンドルと共に、第5実験都市へと向かった。
僕たちの物語は、ここから、本格的に始まる。
僕たちは、この世界の運命を変えるための、最初の戦いへと向かうのだった。