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9話 【バトルベア】







「湖周辺に他の魔物の集落はありませんでした。反対側の魔獣達ですが、一番獰猛で縄張りが広いのはバトルベアですね。」



 シャドーのその報告を聞いて皆が頷く。



「バトルベアか……全軍で一気に攻め落とす?」


「………あのー、陛下。考えたのですが、これはどうですか?あの辺一体がバトルベアの縄張りならリザードマンの時と同じくその長を倒してバトルベア達をこちらに引き入れ周りの魔獣対策にする…というのは。」


「しかしな…ソラ。バトルベアは魔獣だぞ?従うのか?そもそも」


「陛下はいつも仰っているではないですか……弱肉強食と」


「いや、まぁ確かに」




 ソラの意見を聞いてその発想はなかったな…と思った。

確かに魔獣は食べ物と決めていたが、魔獣も手懐けられれば活用できるかもしれない。

バトルベアは魔獣の中ではそこそこに強い。

3mはある巨体と凄まじい筋肉、そして鋭利過ぎる爪と巨大な手。

ゴブリン達がバトルベアの肉を熊鍋にして食べるのが好きだからどうしても熊鍋のイメージだったが……確かに一理あるな。

バトルベアは我が配下の屈強なゴブリンソルジャー10体でやっと倒せるレベルだ。

オークなら一対一ならバトルベアの方が強いだろう。

それにあの辺を仕切ってるのがバトルベアなら拠点を守らせられるかもしれない。




「よし、その案でいこう。俺が単身乗り込んでバトルベアの主を討ち取ってくるわ」


「待って下さい陛下!!それなら俺が行きます!!」


「いやー、タンクならそりゃ倒せるだろうけどさ。俺なら空からパパッと行って、ササッと終えられると思うんだよね」


「なっ!確かに……」


「で、それが上手くいくかどうかはさておきその間に全軍で向かってきてよ。4日は掛かるだろうから3日目くらいに俺も出発して湖越えて戦っとくから、後から合流しよ」


「分かりました」


「んじゃセバス達は支度したら出発してね。リザードマン達はとりあえずここに残すから」


「「「「はっ!!!」」」」


「陛下……えっと私は陛下と一緒に行きたいです」


「なんで…」


「空飛んでみたい……」


「………お、おう」










 




 セバス達が出発してから3日が経った。

俺は鬼人モードに黒鉄鷹の翼を背中から生やしている。

どういう訳か身体組織は骨格に依存するのか、鬼人モードならその大きさに見合った翼になる。

その為、最近はこれで飛ぶ練習をしてきた。

問題なく飛べる事もわかっている。




 黒い翼を生やした鬼人の俺にリザードマン達は絶句していた。

あの一騎打ちを見ていた者らはこの王はどれだけ変身できるんだ……と驚いていた。




「ソラ、そろそろ行くぞ」


「はい。陛下」




 ソラをお姫様抱っこして空に飛び上がる。




「うわー、すごーい」


「空からの景色は凄いだろ?」


「綺麗です」



 眼下に広がる大きな湖を見ながらソラが感動して口を開けている。

口の中がパサパサになるからやめたほうが良いと思うのだが。

にしても最近ソラは甘えん坊である。

一緒に寝た日から、毎晩添い寝しに来るのだがその影響なのか我が儘を言い出すことも少なくはない。

まぁ仕事は真面目だし、そこまでの我が儘でもないから良いのだが。



 それに普段なら規律を重んじるセバス達も、寝食を共にしているのを知っているからかソラが俺に我が儘を言っても微笑ましい顔をしてくる。

元ゴブリンと元オークにそんな生暖かい目で見られても……




 そろそろ目的地……という所にバトルベアが数体居た。

少し離れた所にさらに十数体いるが、バトルベアがここまで群れているのを始めて見た。


 その中でも一際大きい個体を見つける。


 多分あれがバトルベア達の主だろう。

俺はゆっくりとその近くに降りる。

ソラは見晴らしの良い少し離れた所に置いてきている。





 突如現れた俺にバトルベア達が威嚇の声を上げる。

が、俺は無視して主を見つめる。



 ちなみにだがバトルベアの筋肉を身体組織に組み込んでいる為魔獣ではあるが主の知能が高ければ多分、バトルベアとも喋る事ができるだろう。



『お前は……人間か?』


『いや、魔物だな』


『変わった姿をしている』


『お前もバトルベアにしては理知的だな』


『で、何用だ?』


『ここに、街を作る。だから、配下に加われ』


『我々は自由を愛する。』


『なら、戦うか?』




 俺がそう言うと、のしりとバトルベアが起き上がった。




『良いだろう。負けたら配下に加わろう。お前らは手を出すなよ?』


『お前みたいな理知的な熊は残しておきたい。死ぬなよ?』


『舐めるな…』




 バトルベアが走り出す。

ドシンッドシンッという地響きが響くが、その重量級の音からは想像も出来ないほどに速い。

そして、バトルベアは俺の前で止まり大きな身体で立ち上がるとその巨大な手を振るった。




 拳を構えた瞬間、熊王の瞳が細められた確かに早い──だが、遅い──!

その手を片手で受け止める。




『お前……何者だ。見た目と中身が違う』


『見た目で侮るなって親熊から教わらなかったのか?』




 バトルベアが腕を引いて、改めて振り上げる。

普通のバトルベアとはまったく異なる速さだが、俺には遅く感じる。

俺はその振るわれた腕を掻い潜り、バトルベアのお腹に向かって拳を振り抜く。

こっちにはバトルベアの筋肉とブラックアイアンホークの硬さがあんだよ!!!



ドシンッッッッ!!!!



 凄まじい轟音が響く。

が、毒は戦う前に解除したので毒攻撃はしない。

俺はどうしてもこの熊王を配下に加えたい。



 巨体が振るわれた拳の勢いで後ろにザザッと下がる。

が、その目は諦めていない。

熊王が身体ごと巨体で襲いかかる。

両腕で掴んで噛みちぎろうとしているのだろう。



 だが、そんなの分かってて受けてやらん!!!



 俺は迫ってきた熊王の顎に剛鉄の拳と戦熊の筋肉で渾身のアッパーを打ち抜く。



ズドンッッッ!!!!



 低い音が響く。

熊王は目を見開き………そして、後ろに倒れた。

脳が揺れれば熊でも失神するだろう、という考えは正しかったらしい。



 熊王は気絶しているが、お前らは手を出すなと言われたバトルベア達は近寄ってはこない。



 ので、俺はその場に胡座をかいて座った。

起きるまで待とう。












『負けたんだな……認めよう』


『配下に加わってくれるか?』


『働きに見合った肉と魚…それで手を打とう』


『あぁ、問題ない』




 こうして俺はバトルベアの主、熊王…いや戦熊王とバトルベア達を配下に加えた。

それからソラを迎えに行って、バトルベア達と共に狩りをしたりご飯を食べながらセバス達を待つ。










「さすがは陛下……本当に配下に加えたのですね」


「あぁ、そいつがバトルベア達の王だ」


『よろしく頼む』


「よろしく頼むってさ」


「なっ!?バトルベアの言葉がわかるのですか?」


「あぁ、まぁ理知的な魔獣なら喋れるぞ。言ってなかったか?」


「………聞いてません」


「とりあえずオーク達と建設得意なメンバーは街作りをしてもらおっか。一応こういう感じで」


「拝見します」




 セバスに渡したのは皮に炭で描いた街の計画の図だ。

前の村より数倍は大きく作る予定で、水辺には港のようなものも造りたい。

後々リザードマン達が来ればその辺に住まわせて漁をさせようと考えている。




「かなり大きくなりそうですね」


「セバスは申し訳ないけどここに残って指示出し頼むね。ある程度出来てきたら村とリザードマンの集落から皆を連れてくるから」


「かしこまりました」


「よし、そしたら解散。明日には帰還させるメンバーと残すメンバーを決めて帰還メンバーはタンクの指揮下で村に戻るからそのつもりで」


「「「「はっ!!!」」」」
















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