10話 【新拠点】
村に帰還してから一月、いつもの日常に戻っていた。
ゴブリン、オーク、コボルトなどを150体程新拠点の方に残して来ているが隠密の話では結構街っぽくなってきているらしい。
リザードマン達も手伝っているみたいで200体くらいの規模でセバスの指揮下で街を建設している。
最近村よりもう少し浅瀬の東側に人族がちらほら来ているらしいという話が上がってたのでそろそろ移動したい。
半月後までには全移動を開始すると布告している。
うちの村の者達には人間に危害を加えないように言っているがうちの連中を恐れて浅瀬の方に移動した関係ない魔獣や魔物が入ってきた人間を襲っているという報告も聞いている。
この場所に人間が来るのも、本当に時間の問題だろう。
ちなみに、すでにコボルトの集落は解体している。
この村も出るまでには解体する予定だ。
もし、この村に人間が辿り着いた時に人間の村か?と思ってくれれば良いが、そこに魔物が居なくてももしかしたら魔物の村?この規模の?と思われれば討伐隊が組まれそうな感じがする。
幸運Aのステータスがある為、なるべく直感に従いたい。
その為、この村は解体予定だ。
そして、何事もなくそれから半月。
村の解体も終わりただの空き地となった場所から皆で移動を開始する。
非戦闘員達も少なくない為、タンク率いる部隊や近衛がそれらを守りながら進む。
それから4日…少し時間がかかったがリザードマンの集落に着き、リザードマン達も連れてさらに5日。
ついに、新拠点に辿り着いた。
タンクを含め、もちろん俺もだが元のその場所を知っている者達は唖然とした。
二ヶ月経っていないのに、そこには確かに大きな街があったのだ。
えー、凄すぎない?
2m程の高さの石壁が街を囲み、その外には早くも農地として開発している農業地帯。
石壁の外からでもすぐに分かる大きな監視用の櫓。
入口の近くには兵を置いておく為にと俺が考案した待機所。
街の中もまだまばらだがかなりの数の建物が立っている。
そして、そのどれもが大きい。
横に全部が大きいわけじゃないが上に大きいものが多い。
オーク用の住宅だろう。
また、区画を分けてつくられた真ん中のメインストリートの左右にはまだ誰もいないが店舗のような作りの建物もある。
これも俺の考案通りだ。
メインストリートを進むと中心には円型の広場。
そこを中心に十字に道が続き、真っ直ぐ進むと一際大きな建物がこれはすでに完成していた。
俺の家……とだけざっくり描いたので大きさもそんなに大きくないようにしたはずだが、凄まじく大きい。
二階建てだが、8LDKはありそうだ。
ちょっとうちのメンバー……建設技術上がってない??
そして、広場を右に進み突き当りを左折して進むとそこにはまだ簡易的だが港が造られていた。
その大きな村というよりまさしく街を見て皆が口をあんぐりと開けている。
「陛下………すごいですね」
「凄すぎるよ………建設技術上がりすぎ」
ソラが隣で目を見開いている。
すると、セバスが来た。
「いかがです?陛下」
「想像以上だ。よくこの短期間でここまで造ったな……セバス」
「皆の働きのお陰ですよ。それに皆が来た今、ここからです。さらにこの街は大きくなりますよ」
「それは楽しみだ」
その日、数百体の魔物、魔獣が集まれるように広く造られた街のシンボルとも言える大広場に配下の全員が集まった。
もちろんバトルベア達もである。
途中途中来る時に狩りをして獲物を取ってきたものと、狩猟部隊やリザードマン、バトルベア達が狩ってきたものを集め。
料理担当のゴブリン女子達が次々に料理を完成させて宴の準備を開始していた。
そして、ご飯が皆の前に置かれ…
広場で俺も含めて皆が地面に座る。
俺だけ向かい合って座っている形だ。
立ち上がった俺に視線が集まる。
「まずは街を造っていた面々…素晴らしい仕事だ。感動したよ正直。それを支えたメンバーもよく頑張った。これからは改めて皆でこの街を大きくしていこう!ということで、新たな我々の拠点に!!乾杯!!!!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
『『『『『乾杯!!!』』』』』
屋敷が大き過ぎるのでゴブリン女子達の中で希望者がメイドとして働いてくれている。
そんな広い屋敷の二階にあるこれまた大きな寝室。
建設、製作レベルが上がり、その為の進化をしたゴブリン達がいるのだがその仕事がとにかく凄い。
ベッドの枠組みも丁寧な作りだし、鳥の羽根を何かはわからない白くて柔らかい魔獣の毛皮で包んで縫われたマッドや布団も芸が細かい。
テーブルやソファも前世に比べれば大したことないが、それでもこれを魔物が…と考えたらとんでもなくレベルが高かった。
ゴブリンは特に進化の指向性が広いのか、鍛冶、木工、建設、服飾と最近では多くの進化を見せそのレベルは日に日に上がっている。
なので雑な作りだった衣類も今では普通に人の街に下ろせるのでは?と思う程だ。
そして、建設の面々のセンスを感じたのは寝室が屋敷の二階中央の奥側にあり大きな木の両開き扉を開け放つと湖が見えるところだ。
更にはソファが半円形でそちらを向いている為湖を一望しながら寛げる。
いや……ほんとすごいよゴブリンさん。
建築や、木工、服飾などの専門の進化をしたゴブリン達に改めて名前を与えようとこの日に決めた。
さらなる進化を期待したい。
コンコンッ
「入っていいよ」
湖を眺めていると扉がノックされ、ソラが入ってくる。
この時間帯に寝室に来るのはソラくらいなので見なくても分かる。
「夕暮れの湖って良い景色ですね」
「あぁ、とても落ち着く。拠点を変えて正解だったな」
「はい……」
ソラが暖炉に火をつける。
暖炉がある部屋が良い…と俺が書いていたので寝室には大きな暖炉と煙突がある。
少し肌寒くなってきたので心地よい。
そして、ソラは木の2つのコップに紅茶を入れてそこに氷魔法で氷を入れてから隣りに座って1つを俺の前に置く。
冷たい紅茶が好きなのをよく知ってらっしゃる。
「陛下に出会って……色々変わりました」
「良い意味で?」
「もちろん。これからも色んな景色を見たいです」
「これからも色んな景色を見よう」
隣に座るソラが俺の手に手を乗せて、少し握る。
「陛下は……凄いです」
「なにが?」
「色んな種族を纏め上げているのも、こんな街を考えたのも、皆を進化させたのも…」
「それは全てが俺の力ではないさ」
「いえ……陛下の力です。でなければ我々鬼人は元から存在していたはずです。それに皆がこういう街を作れていたはずです。でも、そうではなかった。全ては陛下が導いたんです。」
「そう言われると、照れるな」
「もっと誇っていいのですよ?貴方は凄い」
俺が隣を見るとソラは優しい目で微笑んでいた。
白く淡い肌、整った顔、白くて柔らかいボブヘアの髪、そして額にある鬼としての角。
確かに、ソラは俺の為にこう進化してくれたのかもしれない。
それに皆も俺の為にそうなってくれた気がする。
「皆が俺の為により良くなろうと進化してくれた。今度は俺が皆をもっと豊かにしなくてはな」
「皆は陛下の為に、陛下は皆の為に、そうやってこの街は更に発展していくのでしょう」
「いつかは本当に国みたいになったりしてな…」
「なりますよ…きっと」
「だったら、人間が交易をしたいと思う程の豊かで文化的な国にしたいな」
「人間の国より、豊かになります」
「それは良いな……」
ふと外の湖を見やると、空に綺麗な三日月と散りばめられた星があった。
いつの間に夜が耽ったのだろうか。
この世界に来てこうやってゆっくりと星を眺める日が来るなんて思ってもみなかった。
「俺の生涯は絶望から始まった。けど、これからは幸せに生きれそうだ」
「陛下が皆を幸せにする分、私が陛下を幸せにします」
そう言ってソラの顔が近寄ってきた。
そして、柔らかい唇が俺の唇に当たる。
唇が離れると頬を赤らめたソラが…恥ずかしくなったのか下を向いた。
「湯汲みしてきます……また後で」
部屋を出ていくソラの背中を眺めて口角が上がった。
大事にしたい……こちらに来て異性に初めてそう思った瞬間だった。
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