表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/39

1話 【転生したら肉団子だったんですけど、神様俺なんかしました?】





 澄み渡る青い空、心地よい風、木々の木漏れ日と大地の香り。

そんな清々しい森の中で、()は目を覚ました。


 


 少し前の記憶では、大学の講義を受けていたはずだ。

居眠りをしていたような気がする。

だが――なぜ俺は今、森の中にいるんだ?

夢なのか?そう思った。


 


 こんな時の確認方法は一つ。

頬を抓ろう。……と思ったのに、そこで気づいた。




 手が、動かない。


 


 え?


 


 慌てて手元を見る――だが、そこに“手”はなかった。

というか、腕どころか、下半身すら見当たらない。

とりあえず身体を動かそうとしたら、そのまま前に転がった。

コロコロと。


 


 え?


 


 数回転がって、俺は大きな木にぶつかった。

いっっっった!!……って、え? 痛い……?

痛みがある。夢じゃない。

だとしたら、これは一体……?


 


 思いつく可能性はいくつかあった。

一つは記憶喪失。だが、講義の記憶はあるし、森にいる理由は不明。


 もう一つは――異世界転生、あるいは転移。

バカみたいな話だが、この状況に一番合っている。


 


 だが……なぜ、手足がない?

まさか、魔獣に転生パターン?

いや、ここがファンタジー世界とも限らないか。



 ただ、自分の目線と動きから、一つの現実が浮かび上がる。



 木々の足元しか見えないこの視点。

転がるようにしか動けない体。

……怖くてあまり考えたくないが、俺は“球体”らしい。


 


 意味が分からない。

球体ってなんだよ!!!!!!


 


 とにかく状況が掴めないので、転がってみる。

進まなければ、先も見えない。



 転がり続けるうちに湖を見つけた。

飲み水は確保できそうだなと思いながら近づく。



 湖面は陽の光を反射し、まるで鏡のようだった。

そこに映った“俺”の姿を見て、絶句した。


 


 丸い肉の塊。中央に一つ目。そして、横一文字の口。

何だこれ……?


 


 小学生が描いた化け物。

まさしくそんな姿だった。


 


 怖い。意味不明。震えが止まらない。

俺は……泣いた。

この肉塊の瞳から、涙が流れた。


 


 え、神様……俺、何かしました?

いや、無害なただの学生ですよ?

さすがに酷すぎませんか?


 


 とりあえず湖から離れた。現実を直視したくなかった。


 


 草むらの中に身を潜め、眠ることにした。

今の俺は非力な球体。

現実を直視したくないときは寝るしかない。


 


 ……が、起きても状況は変わらなかった。

ただ夜になっただけ。


 


 俺は、現状を“異世界”だと受け入れることにした。

異世界に転生したら……肉団子だった件。

そんなタイトルが頭に浮かぶ。


 


 前世の知識では、異世界でゴブリンやスライムに転生する作品もあった。

「いや、きっつ……」と思っていたけど――


 


 全然マシだったじゃん。


 


 俺、肉団子の化け物だよ?

怖すぎるわ!


 


 深くため息をつきながら、異世界知識をフル稼働する。


その中で思い出したのが、「ステータス」。


異世界モノによく出てくる、自分の現状を可視化できる謎システムだ。


 


 まあ、出るわけないと思いつつ――


ステータス!と念じてみた。


 


──すると、脳内に情報が表示された。


 


―――――――――――――

名前/なし

種族/?

レベル/1

固有スキル/咀嚼


攻撃力/F

防御力/F

魔力量/A

俊敏/F

器用/F

幸運/A

―――――――――――――


 


 表示された!

けど……ツッコミどころしかない!


 


 名前なしはともかく、種族/?って何だよ!?

なんで疑問系!?


 


 魔力量Aはまだいい。

幸運Aもいい……けど、どこがだよっ!!!!!


 


 そしてスキルが「咀嚼」って。

……咀嚼ってなんだよ。

意味わかんねぇ。


 


 苛立ちを通り越すと、人は無になる。

あ、もう人じゃなかったわ……泣けてくる。


 


 もう一回寝た。


 


 朝になった。夢は見なかった。

ていうか、夢を見れんのかな、今の俺。


 


 また転がって、彷徨って――

そして、確信した。


 


 少し離れた場所を、一体の緑色の小鬼が歩いていた。

あれは――異世界の定番、ゴブリン。間違いない。


 


 ……チッ、マジで異世界かよ


 


 慎重に、バレないようについていく。

バレたら即死だ。

俺のステータスは、攻撃・防御共にFだし攻撃手段もない。


 


 それにしても、ゴブリンはマジでバカだった。

蝶を追いかけたり、自分の尻を触って嗅いだり。

こいつより弱い俺って……と絶望しながら観察していると、


 


 バサッ


 


 木の上から、大きな実が落ちた。

それがゴブリンの頭に直撃。


 


 グチャッ……


 


 ……死んだ。


 


 え、そんな死に方ある?

恥ずかしい死に方ランキング世界5位には入るぞ。


 


 恐る恐る近寄る。

間違えなく死んでいる。

目は見開いたまま、血は緑がかってて気持ち悪い。

目を閉じさせてあげたいけど――


 


 手がないんだよっ!!!


 


 そんな中、お腹が鳴った。

顔と身体が一体なのに腹がある感覚に驚くが……

咀嚼スキルがあるってことは、食えるんだろうな。


 


 でも食いたくねぇ。

けど、腹の虫が「食え」とうるさい。


 


 俺は目を閉じ、口を開いた。

ヌチャッと音を立て、大きな口が開く。

ゴブリンに顔を寄せて――たぶん腕のあたりに噛みつく。

カプリッモグモグ……


 


 ……え、うまいかも。

ちょっと生臭いけど、いけるぞ。


 


 そのとき、頭の中にアナウンスが響いた。


 


[咀嚼の固有スキルが発動しました。生体名/鬼種:小鬼の構成組織を確認、20%を把握しました。以後、小鬼への20%の部分変異が可能となります。部分変異の箇所を選択して下さい]


 


 は?

なに、どういうこと?


 


 すると、目の前に新たな表示が浮かぶ。


 

―――――――――――――――

[鬼種:小鬼] 頭 身体 腕 足

―――――――――――――――

 


 え?なに?選べってこと?

とりあえず、足だろ……転がるの、マジで疲れる。


 


[変異部位:足 選択]


 


 ニョキニョキと、緑色の足が生えてくる。


 

 

 ……ああ、俺、今めちゃくちゃ気持ち悪いだろうな。





 肉団子に、ゴブリンの足。

終わってるわ、このビジュアル……。


 










続きが気になる!という方はブックマークと、

良ければ小説の下部にある☆の評価お願いします(^_-)-☆

読者の方々の評価がとても励みになります。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なにこれ!?なにこれ!? めちゃくちゃ面白いですね! タイトルがもう面白いんですが笑 内容も面白い笑 拝読させていただきます!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ