7.ヴォア・ラクテ城
「中に案内します。応接間があるので、そこで話しましょう」
「……は、はい」
普段は遠くから見ているだけだった豪華な城が、
すぐ、目の前にある。
これが、ヴォア・ラクテ城…。
遠くから見るのとでは、雰囲気が全く違う。
迫力が桁違いだ。
内装も想像していた通りの、いかにもな感じだ。
中央に敷かれたレッドカーペット。
あちらこちらにされている派手な装飾。
天井に飾られている黄金で美しいシャンデリア。
想像していた通りとはいえ、やはり実際に目にすると驚いてしまう。
「ここが応接間です」
装飾に見惚れていると、いつの間にか目的地に到着していたようだ。
見惚れている場合ではないな…。今からする話は、こんな軽い気持ちじゃ受け止めきれない気がするから。
用意されていたふかふかのソファーに座ると、暁さんがゆっくりと話し出した。
「今回の事件で亡くなったと推測されるのは、398万3142人です。この国の人口は398万3451人なので、生き残っているのは309人ということになります。」
この国のほとんどの人が亡くなったのか…。
だいたい理解していたつもりだったが、自分たちしか生きていないというのは…、かなり、ショックだな。
頬を伝って流れて来た涙を、慌てて袖で拭う。
「…私たちサテライトは事件当時、10人中8人がこの城にいました。サテライトには、能力者が7人います。」
「は、はあ…」
急になんだ…?それが関係あるのか?
「この事件では、サテライトにも死者が出ました。
死者には、ある共通点があり、それは…
能力を持っていない、ということだったのです」
能力を持っていない人だけが亡くなったのか…。
…ん?
「ということは、もしかして…!この事件の首謀者は、能力によってこの事件を起こした…ってことですか?」
能力者には能力による影響がない。
多分、僕達だけが現実世界に残っていられたのは、もう一度あの能力を使われても、死なないからだ。
「鋭いですね、その通りです。
なので、生き残っているのは、能力者の人数だと考えています」
なるほどな…、なんとなく分かってきた。
この事件は能力によって起こされたため、能力者だけが生き残った_ということか。
「今分かっていることは以上です。質問などはありませんか?」
「…あの、今よく考えたら、この世界の人全員に能力の効果を齎すことなんてできないのでは…?わたしも能力を持っていますが、効果があるのは半径3m以内にいる人だけなので」
…!確かにそうだ。この話自体が余りにも信じ難いことだったからか、不自然な点に気づかなかった。
僕だって能力の効果があるのは目が合った人だけだしな。
「はい。基本的に能力の効果がある範囲は魔力の量に比例して増加していきます。私の仲間に、膨大な魔力を持つ者がいますが、その仲間でさえ、能力の効果があるのは視界に映っている者だけだそうです。なので、犯人は、圧倒的な量の魔力を持っているか、”能力の範囲が大きくなる”魔法を使える者_などの可能性が高いと考えています」
なるほど…どちらにしても、絶望的なのは変わりないのか…。
わたしは、思わず泣いてしまっていた。
何で…!?どうしてこんなことをするの…!?
意味が分かんない……!
私から_いや、みんなからも、家族や友達を奪って…
楽しかった学校生活も、こんなふうに終わらせて…
本当に、意味がわからないよ…!
何か考える度に、この事件の首謀者に対しての恨みが募ってくる。
わたしが今こうしている間にも、犯人は幸せに過ごしていると考えると…、どうしても、その幸せをぶち壊してやりたくなる。
復讐は何も生まないと分かっていても、自分の気持ちを抑え込めない。
いや_むしろ、そんな事する必要なんてない。
この人は、サテライトなんだから。
この世界では、罪を犯したものは殺される。
その罪ががどんなに小さくても。
だったら…、暁さんと私の考えは、同じはずだ。
「わたしは…この事件の首謀者に復讐します…!
暁さん_サテライトの皆さんに、協力します………!」
ちょっとだけリアルが落ち着いたので、明日から更新頻度上がります!
3日に一話は投稿しますね!休日ならワンチャン2話上がるかも…?
是非ともお楽しみに〜!




