5.突きつけられた現実
「その必要はありません。今から貴方がたに真実を伝えます…覚悟の準備をしておいてください」
覚悟…?どういうことだ、本当に…何があったんだ。
それに…、この人は誰だ?妙な威圧感を感じるが…。
「誰?」
「覚悟…って何が…」
「あの人がつけてるブローチ、もしかして_」
クラスメイトたちもざわついている。
「申し遅れました、私は王宮特別警備隊_サテライトの一員、暁大河と申します」
王宮特別警備隊…?サテライト?
意味が分からず唖然としていると…
「はあ!?ここまでの人が来るほどの異常事態って何なんだよ…!?」
「え…?まじで言ってんの…?」
「馬鹿!お前ら無礼だぞ!この方を怒らせたら…、俺たちなんか一瞬で殺されるんだぞ!!」
クラスメイトたちのざわめきが大きくなる。
何なんだ、この人。僕は全く知らないが…
「なあ、この人誰か分かるか?」
「はあ?何で知らないわけ?この方は…、というか、サテライトも知らないの?」
「だからそう言ってんだろ!?」
透羽は呆れているが…、ほんとに知らないぞ!?
「サテライトは…、わかりやすく言えば警察の上位互換かな。わたしも詳しくは知らないけど、主に天満様の護衛とか、お城の警備なんかをやってるみたいだよ、後は警察じゃ手に負えないような重大事件を捜査したりもしてるみたい」
「そうなのか…、ってか、なんでそんな事知ってるんだよ…」
「いや、逆になんであんたは知らないわけ?」
透羽がなにか言っているが、それは置いといて…
「今から、真実をお見せします。覚悟の準備はできましたか?」
暁さん…だっけ。その人の深刻な声色と表情から、事の重大さが伝わってくる。
「は、はい…」
「っ…、はい」
クラスメイトたちは覚悟の準備ができたようだ…。
僕は…まだできてはいないが、焦らさせるよりは、早く現実を知っておいたほうが楽だろう。
「覚悟ができたようですね、案内します」
そう言われて案内されたのは、学校だった。
見慣れた光景のはずなのに、見たことのない光景だった。
人気がまったくないのだ。今の時間は17時。普通ならば部活で外にいる生徒がたくさんいるはずなのに、誰も校庭に出ていない。
「学校の中に入れば、真実が分かります。危険なので、中を見られるのは5分だけです。では…行きましょう」
先生も事実を知らないのか、かなり焦っているようだ。
学校の中に入ると…、そこには、絶望が待っていた。
生徒は居るが、みんな、倒れている…!
何故だ…?これは、眠っているのか…!?
そうだよな…、眠っているだけだ。それしかない。
眠っているだけならば、そのうち目覚めるはずだ。
確かに困るし、驚いたけれど…、これくらいなら問題ない。
クラスメイトたちも、はじめは絶望したような顔をしていたが、次第に、少しだけ安心したような顔に変わっていく。
「暁さん、なぜ、何故みんな眠っているんですか?みんなはいつ目覚めるんですか?」
この人なら、理由がわかるはずだ。
「残念ですが、この方達は眠っているわけではありません…。亡くなっているんです」
え…?亡くなって、いる…?
みんなは、死んでいるのか…?
「え…どういう、事…?」
「なんでだよ!意味がわからねえ…!」
「じょ、冗談…ですよね」
不気味なほど静かだった学校に、悲鳴のようなざわめきが響き渡る。
僕は放心状態だ。
「非常に申し上げにくいのですが…、この世界で生き残っているのは、私たちサテライトの能力保有者、麗音陛下、そして…、あなたたちだけなんです。」
絶望に追い打ちをかける、最悪の情報を…、教えてくれた。




