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パニックのゾンビ作品。

引きこもり生活


『ウ、……』


目を開けたらコンクリート造りの階段に頭を下にして倒れているのに気がついた。


頭を打ち付けたのか頭があった段の下の段に血溜まりがある。


額の傷に手を当てながら身体を起こし周りを見渡す。


直ぐ横に、頭をザクロのようにかち割ってピクリとも動かない巨乳の女の子がいた。


その女の子と言うか巨乳を見て、川沿いの土手の上の遊歩道から転がり落ちた時の事を思い出す。


川向こうに昨年出来たスポーツ公園のグラウンドでウォーキングもどきをした帰り、遊歩道を家の方へ歩いていたら、前から凄え巨乳の女子高生がその素晴らしい胸を上下左右に揺らしながらフラフラと歩いて来た。


『凄え巨乳だなぁー』とガン見すると怒られるだろうから、そのブルンブルンと揺れる巨乳をチラチラと盗み見る。


チラチラ見ながらすれ違おうとしたら突然、女の子が私の肩に噛み付いて来たのだ。


『痛い!』と、振り払おうとしたら階段を踏み外して一緒に転がり落ちたんだったよな?


それが午前中の事なのに、今西の空が紅く染まっている。


此の遊歩道、使っている人は結構いる筈なのに今まで誰にも気が付いてもらえなかったのか? と首を傾げていたら、川向こうから悲鳴が響いて来た。


「ギャアァァァー! 助けてー! 食べないでぇぇ!」


『え?』


目を川向こうに向けると、遊歩道から川岸に転がり落ちる数人の人の姿が映る。


悲鳴を上げながら手足を振り回しているちょっと太ったオバサンらしき人に、小学生らしいランドセルを背負った子供たちが群がっていた。


『な、何だ?』と警察に電話するのも忘れその様子を眺めていたら、背後の遊歩道の向こう側の住宅街からも悲鳴が上がった。


「助けてくれー!」


『な、何だ? 何が起きているんだ? って、おかしいな声が出ない』


おかしいのは声だけじゃ無い、血溜まりが出来る程に頭を打ち付けているのに頭も身体も全然痛くない。


ヨタヨタと階段を登り、周辺の住宅より高いところにある遊歩道に上がって周りを見渡す。


遊歩道に沿って伸びる道や住宅街の中をフラフラと、青白い顔の老若男女が彷徨いていたり悲鳴が響く家の前に群がっていたりした。


『あ、アレって、も、もしかして、ゾンビ? ゾンビなのか? ヤバい! 逃げなくちゃ』


私は自宅に向けて走る。


とは言っても、重度の糖尿病で筋肉量か落ちているから、ノタノタと歩く事しか出来ない。


ゾンビに見つからないように噛まれないように物陰に隠れながら、へっぴり腰で自宅に急ぐ。


自宅の玄関の鍵を開けている時、ゾンビになった隣の家の奥さんに見つかったと思ったが、何とかやり過ごせた。


家の中に入りホッとしながら頭の傷を見ようと、洗面所に行き鏡に映る自分を見て『ヒェ!』と叫んだ。


だって鏡に映っていたのは、外を彷徨いているゾンビそっくりな青白い顔をした私だったから。


『ハハ、そうか、だからか、襲われなかったのは』


鏡に映る自分の顔を見ていて眼鏡を掛けて無い事にも気がついた。


『アレ? 眼鏡が無い、あそこで落としたか? でも、眼鏡を掛けて無いのに何故かよく見えるから()いか』


色々納得した私は、身体の奥深くから突き上がって来る『食わせろー!』って本能に従う事にした。


ゾンビ発生時に行くところはホームセンターだったかな? スーパーだったかな? ま、良いや、取り敢えずスーパーに行こう。


何時もスーパーに買い物に行く時に使うリュックサックを背負って、近くのスーパーに向かう。


行く途中、道端に転がっていた血が付いたバットを拾い持つ。


ゾンビになっているからゾンビに襲われる心配は無いだろうけど、生きてる人に襲われるかも知れないから自衛の為にだ。


スーパーに近づくにつれけたたましいクラクションの騒音が響いて来る。


立て籠もりに備えて買い出しに来たのか周辺道路は渋滞してるって言うか、ギッチリ詰まった車で二進(にっち)三進(さっち)も行かなくなっていた。


その二進も三進も行かなくなっている車の中には、強引に進もうとして他車とぶつかり車体が潰れたり窓が粉々になっていたりする車もある。


事故を起こした車や、二進も三進も行かなくなっている車列に阻まれたりして動けなくなった車に閉じ込められた人たちが、無闇矢鱈とクラクションを鳴らし車の中で泣き叫んでいた。


クラクションや泣き叫ぶ声を聞きつけたゾンビが、そのけたたましい騒音を撒き散らしている車の周りに群がっている。


しかし此の二進も三進も行かなくなった車を運転して来た人たちは、ゾンビパニックを地震などの災害と同列に考えて買い出しに来たんだろうか?


ゾンビ好きって言うかゾンビ系の書物や映画を好んで見てる奴なら、ゾンビが群がっていると思われるようなところに、ノコノコとやって来る事は無いだろうからな。


私だってゾンビになっていなければ自宅に立て籠もる事を選択した筈。


ま、ゾンビになった私には、車の中で泣き叫んでいる人たちがどうなろうと関係ない。


二進も三進も行かなくなった車列の中で事故って窓ガラスが割れている車には当然だけど、そこから頭を突っ込んで車内に入り込んだゾンビによって、乗っていた人たちは美味しいかどうかは知らないけど皆んな頂かれていた。


スーパーの中もやっぱりって感じでゾンビか溢れている。


そう言えば今日はシニアデーで、爺婆が大挙して押しかける日だったって事を思い出した。


爺婆が溢れてる店内にゾンビが侵入して、逃げ惑う爺婆が次から次に噛まれて次々とゾンビになったんだろうな。


それでも広いスーパーの中のトイレやバックヤードに立て籠もっている人がいるのか、トイレやバックヤードの出入り口の前にバリケードが築かれていた。


ガラガラガッシャン!

「「「キャアァァァー!」」」


ベイカリーのバックヤードの前に築かれていたバリケードが、ゾンビの群れに押されて崩れると共に複数の人の悲鳴が上がる。


私はそのベイカリーにフラフラと近寄り見つけた物に手を伸ばそうとしたら、そのアップルパイが横から割り込んで来たゾンビに棚から落とされ踏みつけられた。


『此のクソヤロー!』と罵声を割り込んで来たゾンビに浴びせ、持っていたバットでそいつの頭をかち割る。


『あぁ……私のアップルパイがぁ……』と踏み潰されたアップルパイに手を伸ばそうとしたら、近くに数個纏めてビニール袋に入れられた砂糖をまぶしたねじりパンが転がっているのを見つけた。


そのビニール袋を手に取りビニール袋を破きねじりパンに(かぶ)り付く。


『美味い!』


久々ぶりの甘いパン、病院の先生や栄養士さんに食べちゃ駄目って言われ、大好物なのに食べられなかった甘いパンを食す。


1日の摂取カロリーを決められ、甘いパンやお菓子を食べられなかっただけに嬉しさが心の底からこみ上げて来る。


ゾンビになって良かったと染み染み思う。


他に無いかと探したけど他のパンは、ゾンビ共に踏みつけられグチャグチャになっていた。


だからお菓子売り場に行く事にする。


その場で食べるだけでなくお持ち帰りもしようと、トイレの前にバリケードとして積み上げられていた、買い物カゴを4つ乗せられる大きなショッピングカートを2台引っ張り出す。


2つのショッピングカートを押してお菓子売り場に向かう私の後方から、バリケードが崩れる音と人の悲鳴が聞こえて来たけど知ったこっちゃない


2台のショッピングカートに乗せた8つの買い物カゴに、次々と生きていたときに食べちゃ駄目って言われていた甘いお菓子にカロリーが高いお菓子、それに食品を放り込む。


製パンメーカーのアンパン、ジャムパンなどの菓子パン類にシュークリームと餡饅やプリン、ビスケットにバームクーヘンにドーナツにチョコレート、羊羹やマシュマロやポップコーンやポテチ、イチゴとママレードとリンゴのジャムとハチミツ、野菜ジュースにコーラなどの炭酸飲料にみつ豆やフルーツの缶詰などなど。


此等をカゴに放り込みながら口にも押し込む。


『幸せだなぁ』


幸せを感じながらついでに鮮魚売り場に行って此方は金が無くて食えなかった、ウニやイクラを食う。


ショッピングカートに乗せた買い物カゴ8つにお菓子や缶詰を山盛りに押し込み、背負っているリュックサックに此れも沢山食べないようにって言われていた、牛肉豚肉を詰め込んでスーパーを出る。


外はもう夜になっていた。


街路灯の明かりが届いている範囲は明るいけど範囲外は真っ暗。


それなのに昼間と同じように周りがよく見える。


目だけじゃ無い、補聴器が無いとデッカイ破裂音とかは聞こえるけど人の話し声が殆ど聞こえなかったのに、窓を閉め切った車の中から助けを求める人たちの声がハッキリと聞こえる。


なんか生きていた時より、ゾンビになった今の方が健康になっているようだ。


生きていた時より不便になったのはフラフラとしか歩けないって事なんだけど、重度の糖尿病で筋肉量が落ちていたから走ったり出来ずノロノロヨタヨタとしか歩けなかったから、自分的にはあまり変わらないって感じかな。


家に帰り、お肉類は冷蔵庫に入れ、食品やお菓子は消費期限や賞味期限を見ながら置いておく場所を分ける。


缶詰や比較的消費期限が長いジュースや炭酸飲料それに羊羹なんかは、家の一番奥にある納戸にしまい込み、ジャムや袋入のお菓子など数カ月から半年くらいの消費期限の物は客間に置いて、数日から持っても1週間程の菓子パンなんかは居間に置く。


冷蔵庫は何時まで使えるか分からないけど、腐っても大丈夫だよな? ゾンビの奴ら生肉を平気で食ってたし。


選り分けが終わったら何時もなら寝る時間になっていたけど全然眠く無いし疲れも感じ無い、だから生きた人たちに荒らされる前に甘い物を集めておこうと思い、さっき行ったスーパーはゾンビが群れてる限り生きてる人は略奪出来ないだろうから、それ以外のスーパーやコンビニそれに菓子店やケーキ屋に行くことにする。


あ、そうだその前に、拳銃を手に入れたいから警察署に行こう。


フラフラとしか動け無いゾンビ相手ならバットで十分倒せるけど、素早く動ける生きた人相手だとバットでは心許ないからな。


警察署に行ったら案の定、映画みたく警察署内でゾンビの頭を次々と撃ち抜いた女性刑事はいなかったらしく、警察署に逃げ込んで来た市民も警官も皆んなゾンビになっていた。


まぁ中には自分の頭を撃ち抜いたと思われる遺体も数体あったけど。


警察署内を彷徨いている警官のゾンビや遺体から拳銃と弾を集める。


拳銃は警官の腰のベルトと結ばれていたので、巨乳の女性警察官のゾンビに抱きついてベルトごと頂く。


弾はゾンビに向けて発砲したのだろう、20数体の警官のゾンビが所持していた残弾は10発だけだった。


もっと何処かに保管されて無いかな? と警察署内を物色していたら、警察署の奥の方から音がしたんで行ってみる。


そこは留置場で牢の中に警官が3人立て籠もっていて、牢の外側に群れている市民や元同僚のゾンビと対峙していた。


助けようかな? って思ったけど、私が低周波騒音に悩み警察署に相談に来たときに、騒音を流してる相手を特定してから来てくださいって言われただけで何もしてくれなかった事を思い出したんで、巨乳の女性警察官がいるのなら違ったかも知れないけど、見なかった事にして警察署を出る。


後は甘い物集めだ。


リュックサックを背負ってあっちのスーパーこっちのコンビニ、老舗の和菓子屋にチェーン店のケーキ屋やお菓子屋と街中を彷徨き甘い物を集める。


集めにそれらの店舗に行くとやっぱり生きた人とバッテングした。


店舗の中から私を見つけ所持していた猟銃や散弾銃を向けて来る奴等には、店舗の出入り口を開け放ってゾンビを雪崩込ませてゾンビに始末させる。


店舗内で出会って鉄パイプや木刀で私の頭をかち割ろうとする奴等には、拳銃を発砲して追い払う。


発砲に驚いて店舗の外に逃げて行った奴らの中には、ゾンビに群がられて食われていたのもいたけど。


でも逃げ隠れしようとした子供だけのグループに出会った時は、店舗の安全を確保してやってその店は子供たちに譲った。


まぁそんな感じで甘い物やカロリーの高い物を集めた結果、家の中は先生や栄養士さんに食べちゃ駄目って言われていた甘いお菓子や高カロリー食品で埋まる。


だから集めたお菓子や食品が無くなるまで、電気量販店から頂いて来たポータブル電源に繋いだパソコンで、目や耳がドンドン悪化して見る事が出来なかった此れもレンタル店から頂いて来た巨乳の女の子たちのアダルトビデオを鑑賞しながら、引きこもり生活をしようと思っているんだ。






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エッセイ? あれ?願望?エッセイ?
なんか、ゾンビもので、大変な事態になっているはずなのに……悠々自適な生活を送れそうで引き込まれちゃいました笑。 体調のせいでずっと禁止されていたものがゾンビ化することで食べられるようになるとは……ゾン…
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