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5、どうしてこんなことに

「ペアを作ってください。」

 晴れた空の下、私たちは校庭に集まっていた。先生のその言葉を聞いた途端、生徒たちが動き始める。ベルリアと組もうかなと思っていたら、ベルリアにはレイニーが。

「一緒に組まない?」

「う、うん。」

 申し訳なさそうにこちらをチラチラ見るから、大丈夫だと手を振った。けど、どうしよう。他は…。

「一緒に組まないか?」

「ガルム…分かった。」

 ペアにひとつ、透明な球が配られる。まずはここに、自分がいちばん得意だと思う魔法をかけてみてくれと言われた。

 レイニーが先陣切って注入すると、球の中に赤い炎が。頭上に浮かんで球がメラメラと燃える。魔法が消えると中の炎も消え、何事もなかったように戻ってきた。

「ガルムからどうぞ。」

「ああ。」

 ガルムが得意な魔法ってなんだろう。やっぱり闇魔法?けど、それは見た目だけの判断だよね。

 球の中に白い炎が灯り、頭上へ。球が光に包まれた。

「もしかして…光魔法なの…!?」

「言ってなかったか?」

「聞いてないよ。」

 いや、本当に人は見た目だけではなにも分からない。あれだけ悪魔だと言われているやつが光魔法だなんて。だがなんだか様子がおかしく、球の光は強さを増す一方だ。やがて観察しているうちに、音が鳴って、ゆっくり戻ってきた球にはヒビが。

 やったな、とガルムに目を合わせると、セーフと口が動いた。いや、全然アウトだけどね。さて、次は私の番。球は意外に少し重く、魔力を少しずつ流していく。

「おい、アイシャは光魔法じゃないだろ?」

「『天使様』なので。」

 そう。私の本来の得意な魔法は圧倒的に闇魔法。だけどそんなことすれば『天使様』が崩れかねない。笑顔で光魔法を使ってこそだ。けど、私のもなんだか光が強い。


パリン!


「ちょっとあなたたち、大丈夫ですか?」

「はい。すみません…。」

「劣化してたのかしら…気を付けてね。」

「はい。」

 球が真っ二つに割れてしまった。少し怒られたにも関わらず、2人して笑ってしまいそうになる。その時、ひときわ綺麗な球が浮いているのを目にした。

 黄色い炎で、まわりが電気を帯びている。まるで花火のようだ。誰のだろう。そう思っていると、それはレオン様のものだった。なるほどね。元々王族は、雷魔法が得意な傾向にあるのだ。それにしても、確かにかっこいいかもしれない。ベルリアが惚れるだけはある。あの顔だと、もう複数人は彼女がいそう。いや、あの優しい性格でそれはないか。

「アイシャ。誰を見ているんだ?」

「レオン様よ。」

「レオン?あんなのどうでもいいだろう。」

「そんなことないわ。かっこいいし、魔法も上手じゃない。」

「まあ確かに魔法の腕は良さそうだな。」

 案外素直に認めるんだな、と思っていると、見つめていたことを問われる。なんとなくあしらっておいたが、よく見てるんだな。

 そして時は流れ、外出の許される週末、こんな状況になってしまった。


「いやぁ、まさかアイシャ嬢とガルムが仲良かったなんて。」

「私も驚きました!不思議なこともあるものですな。」

 そんなことを言って笑う2人を、私たちは作った笑顔で見ていた。

(お父様気づいてー!)

 それとなく視線を送るが、お父様は話に夢中で気づかない。私たちの婚約についてだ。

 初めてガルムの家に来たけど、かなり整っている。それに誰もガルムの瞳についてなにも言わない。少し冷たいような気もするが、目をつぶれる程度。何より、ガルムのお父様が、すこぶる明るい。どうすればここからガルムが産まれるんだというレベルで話すのが上手だ。あれだけ娘はやれん、と息巻いていたお父様も打ち解けている。

「一応尋ねるが、2人は愛し合っているのだな?」

 不意にこちらに話がまわってきた。どうしよう。なにか上手な嘘を…。

「元は私が一方的にアイシャに好意を寄せていたのです。そして同じクラスにいるアイシャを見た時、歯止めが効かなくなり想いを伝えたところ、アイシャが了承してくれて…。」

 え、なんでそんな平然とした顔で言えるの?この人本当に悪魔だな。演技の上手さに感心してしまう。

「そうなのか?」

「はい…。」

 完璧な演技なら、こちらも完璧で。我ながら、一瞬で顔を赤くできるのは特技だと思う。まるで本当にそうかのようにガルムと目線を合わせ、微笑み合う。

「我が娘を、よろしく頼む…!」

「命を懸けて、守ってみせよう…!」

 涙を流しながらの熱い握手。本当にこの人たちも演技のようだな。そして、私たちは見事に婚約してしまったのであった。

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