表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

14、エマージェンシー!

「…レアン様、何を勉強してるのかな。」

「なんだろうね。」

「どうでもいいな。」

 あたたかな日差しが差す教室で、ベルリアは物陰からレアン様を見ていた。そして、その様子を私たちは観察している。

「私、ここ分かんなくって〜。」

「これは、この公式を使うと簡単に解けるんだよ。」

 レイニーとレアン様が勉強しているのだ。そう、私たちは一昨日からテスト期間。アルベスト魔法学院に来て最初のテスト。どうせなら華々しくスタートを飾りたい。


「レイニーとレアン様って、本当にお似合いよね。」

「私もそう思った!」

 ベルリアがそれに合わせて肩を落とす。なんでもない会話にさえ一喜一憂してしまうなんて。ベルリアを一生応援することを誓ったのだった。

 テストは10教科。5日間に渡って行われる。私が1番得意なのは社会学だ。小さい頃から教え込まれてきた分野なので、ある程度自信がある。逆に、最も自信がないのは数学だ。あれは本当に、何を言っているか分からなくなる時がある…。

「そういえばガルムくんとアイシャも仲良しだよね。公爵家同士、波長が合うのかな。」

「波長が合うというか…婚約者だからな。」

「ええ。」


「あーそっかー…ぁぁああああ!?え!?聞いてない!」

 教室中にベルリアの声が響く。いつから、どうやって、なんで、と質問が止まらない。ガルムが心底めんどくさそうな顔をした。

「なんで言ってくれなかったの!」

「…聞かれなかったから?」

 またもやベルリアが落胆する。次からは報告するように言われ、適当に返事をしておいた。

 でも確かに、婚約者らしいことを私たちは行なっていない。なにかやった方がいいかな。チラリとガルムの方を見ると、視線がかち合った。相変わらず綺麗な赤眼だ。

「見つめ合ってる…!」

 そんなことないって。目を戻したが、いきなり顔に手が。そのまま再びガルムへ。

「アイシャ?」

「っ…!?!?」

 これは完全に遊んでる。横目でベルリアの方を見ると、両手で口を隠し、目をこれでもかと言うほど輝かせていた。なんならクラスの生徒たちにも見られている。やめてやめて!注目されてる!なんとか放してもらうが、視線が痛い。ガルムは笑っていた。



 そして時は流れ、テスト初日。今日から5日間はテストだ。隣にいるベルリアも憂鬱そうにため息をついている。なんだかいつもより重力が強い気がする。

 今日行われる教科は魔法生物と魔法演習。ベルリアとしては魔法生物は自身の好きな教科として、良い点数を取っておきたいところ。勉強はしてきたが、やはり不安らしい。

「おはよう、2人とも。」

「おはようございます…!」

 アレン様は勉強が得意だ。特に何か尖って得意というわけではなく、全ての教科がうっすらとできるタイプらしい。器用なのだろう。

 実は、校外学習が終了してから飲んでいない。元々定期的に飲まなくても平気だったのだが、ガルムのはすごく美味しくて、なぜかまた飲みたくなってしまう。だから私は一昨日、ガルムを裏庭に呼び出した。


『っていうことなんだけど…。』

『…へぇ〜?』

 けど、なぜかガルムは笑っていた。まさか、また何かやらなくてはならないのか。少し身構えていると、ガルムは条件があると言った。

 今度のテストの全教科の合計得点で、俺に勝ったら飲んでいい、と。

 ガルムと勉強したことはない。普段の小テストの成績も知らない。どのくらいなのだろうという不安はあったが、その条件に従うことにしたのだ。

 特別頭がいいという訳ではないけど、私だって勉強した。だからきっと勝てるはず。


「おはよう、ガルム。」

「ん。」

 ガルムだ。作り物の笑顔を向けてくるが、明らかに目が笑っていない。完全にやる気だ。どうしてそこまで飲まれたくないのだろう。意外と痛かったり、傷跡が残ったりするのかな。けどそうなのであれば言うはず。何か別の理由があるんだ。いつもみたいに遊んでいるだけなのかもしれない。

「頑張らないと…!」

「そうね。」

 頭の中で、覚えるべき魔法式を繰り返し唱えた。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ