プールから伸ばされる腕
暖かい日差しに誘われて、ベランダで日向ぼっこしながらタバコを吸っている。
タバコの煙を青空に吹きかけた時、何かがプールに落ちたのか? ドボンという可也大きな音がプールの方から聞こえて来た。
ベランダの柵に寄りかかりプールに目を向ける。
プールに落ちたのは間抜けな人だったらしく、プールの中央付近の水が大きく波立ち腕が水面から頭上に伸ばされているのが見えた。
そいつはベランダからプールを見下ろしている俺の姿を水中から見留めたのか? 俺に向けて腕を伸ばす。
助けを求めて水面から出てる腕は大きく振られ、俺の方へ伸ばされる。
それを見ながら俺は、助けに行く事も助けを呼んでやる事もせずに思案していた。
だって、水面から大きく伸ばされた腕が、タワーマンションの最上階のベランダからプールを見下ろしている俺の目の前で振られているんだぜ。