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97、紹介と情報交換

「ジュリちゃん、その子供は、ネイルという名前なのか? 山の中の集落では見たことがないが」


(わっ、しまった)


 ネイルの名前を呼ばないようにしてたのに、つい出してしまった。赤い髪の人化するスライムはいなかったし、緑の軍隊は眠っちゃったみたいだし、赤の軍隊もかなり離れてるから、話しても大丈夫かな。


「うん、この子はネイルだよ。キララの弟かな?」


「えっ!? 物質スライムなのか? どう見ても人間にしか見えないが……いや、俺はスライムか否かしか判断できないから、スライムではないとしか……」


 ネイルは、ぺこりと頭を下げて口を開く。



「オレは、ジュリさんを守る物質スライムです。この姿は、キララが獲得したロボットの姿を、より人間らしく進化させたものです」


「ろぼっと? キララも人間の姿になれるのか」


「はい。ジュリさんの前世の世界では、当たり前に存在した種族です。ジュリさんはアンドロイドと言っていました。キララは、今は常に警戒しているので姿を変えられませんが、オレよりも背が高いです」


 ネイルが丁寧な言葉で説明すると、漁師のお兄さんは、目をパチクリさせていた。人の姿をする物質スライムなんて聞いたことないってオバサンが言っていたから、たぶん存在しないのだと思う。




「英雄カール、この乗り物に乗った人達は……」


 お兄さんの近くにいた赤の軍隊の一部の人が、私達の方をチラチラ見ながら、恐る恐る尋ねた。


(まだ、わかってないの?)


「あぁ、紹介しておこうか。ジュリちゃん、俺の近くに残っている奴らは、皆、物質スライムを持っている。はるか後方に下がったのは、赤の王国の軍隊だ」


 お兄さんは、まず私達に彼らのことを紹介してくれた。


「物質スライムを持つ人ってことは、スライム神の島から来たんですね」


「そういうことだ。ジュリちゃんのように二つ目を得たり、前世の記憶がある異世界からの転生者ではないけどな」


 お兄さんは、彼らに、私のことを紹介してる。


「なるほど。私の先輩ってことね」


「ふっ、まぁ、そうだな。おまえら、この青い髪の子はアルだ。剣のギフトを授かっている。で、ちっこいのが、ジュリちゃんの物質スライムのネイル。この乗り物は、ジュリちゃんの物質スライムのキララだ。それと、黒い髪の男は、レッドスライムの変異種だな」


 お兄さんが皆を紹介すると、お兄さんの近くに残っていた人達が、順に名前と物質スライムの種類を言ってくれたけど、覚えられないよ。



「ジュリちゃん、国王を殺したのが人化するスライムだというのは、どこからの情報なんだ?」


(話してもいいのかな?)


 私が悩んでいると、アルくんが口を開く。


「カールさん、ジュリちゃんが知る前に、俺が聞きました。キングシルバーからの情報です」


 アルくんがそう言うと、お兄さんの近くにいた人達の表情が変わった。キングシルバーさんは、いろいろと噂されていたし、人化しないことで有名だから、たぶん誰も接点はないと思う。


「キングシルバーといえば、海底を守護するんだったか。スライム神に次ぐ強大な力を持つスライムだな」


「はい。実体の無いスライム神の代わりに、島で起こる面倒事を引き受けているようです。スライム神の地位を狙っているとも噂されていますが、彼は、人間に興味があるだけのようです」


(実体はあるよ?)


 あっ、そっか。アルくんは、スライム神のことを祠を守る爺ちゃんって呼んでたっけ。スライム神の素性を知るのは、白い髪の私とオバサンだけだったかな。つまり、二つのギフトを得た人だけよね。


 キングシルバーさんが物質スライムを創り出していることを、アルくんは知っていると思う。でも、そのことは話さないみたい。



「そうか。それなら、その情報は正しい。俺達は、人化するスライムに騙されていたんだな。この10日ほど、毎日が大混乱だったからな」


 お兄さんがそう言うと、赤い髪の他の人達は、軽く頷いた。お兄さんのことを英雄カールって呼んでたから、彼が信じたことは、彼らも信じるのね。



「カールさん、俺は青の王国を再建したいんです。祖父が残した映像を、スライム神の祠で見ました。祖父は、自分一人の力でダークスライムを滅ぼそうとして、失敗したようです」


「そうか。スライム神は、貴重な映像を保存していたのだな。そういえば、さっき、小川のスライムが、ダークスライムは二種類いると言っていたな。俺達の感覚では、ダークスライムは一種類だぜ?」


 お兄さんは、黒い髪の人化したスライムを真っ直ぐに見つめている。でも彼は、真っ白な子が、黒いスライムのことを亡き王がダークスライムと呼んでいたから、そう言ったのだと思う。



「カール、私は、アルがふわしろスライムと呼ぶ個体とは別に、ダークスライムがいると言っただけだ」


 黒い子が、即座に反論した。


「ジュリちゃんが抱えているスライムの言葉か。俺には、中継が間に合わなくて、そのスライムの声は届いていないが、アルが、亡き青の国王の従魔だと言っていたな」


 すると、アルくんが口を開く。


「カールさん、ふわしろスライムは、青の王国の王宮で飼われていたと聞いています。亡き王の心を癒し、汚れをはらう従魔だったそうです」


「人間の悪意を吸収することで、ダークスライムのようになるんだな? じゃあ、亡き青の国王が滅ぼそうとしたダークスライムは?」


「ふわしろスライムが、黒いスライムだと言っていました。おそらく、緑の帝国内で生まれた変異種だと思います。グリーンスライムには変異が起こりやすいですから」


 アルくんの話で、お兄さん達は考え込んでしまった。私が使ったウォータースライムの浄化は、真っ白なスライムが吸収した汚れは消えるけど、黒いスライムに効くかはわからないもんね。



 スピーッ、スピーッ、スピーッ


(あれ?)


 私の腕の中で、真っ白なスライムが眠ってしまったみたい。鼻が詰まっているような大きな寝息が聞こえてきた。でも、色は真っ白なままね。マニキュアを塗った爪が触れているからかも。



「ジュリちゃんの腕の中だと、白いままだね」


(アルくんは羨ましいのかな)


「アルくんが抱っこする? たぶん、水の無色のマニキュアを塗っていれば、色は変わらないと思うよ」


「浄化のマニキュアか」


「うん、私が使うより威力は落ちるけど、他の人にも使えるようになったからね」


 私がそう言うと、アルくんの目が一瞬だけ輝いた。でも、首を横に振ってる。


「今は、やめとく。何かが来たみたいだ」


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