表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/125

86、キングライムの能力

『くそっ! 罠だ! 撤退するぞ』


(まる聞こえだよね)


 大陸のスライムが使う念話は、スライムの言葉が理解できる私には、まる聞こえだった。あっ、ベースコートの能力だけど。


『撤退できません! 何かにとらわれて……』


『捨てろ! 人間の子供に擬態できるスライムは、おそらくキングだ。殺されるぞ!』


(うわぁ〜、気持ち悪い)


 大陸の人化したスライム達は、着ぐるみを脱ぐかのように、人間の皮を脱ぎ捨てた。いや、着ぐるみというより、捨てられた身体は、粘着剤でくっつけた皮膚を剥がしたように、ぬちゃっとしてる。人間の皮を脱ぎ捨てても、人間の姿なのね。


 そして、次々と転移魔法を使って消えていった。




「ジュリちゃん、撃退成功だね〜。あはは、楽しいな〜」


 戦闘狂なキングシルバーさんは、改造スライムをすべて討伐したみたい。赤いスライムは、かなりの数が逃げたけど、いいのかな?


「イケメンさん、奴らが残した分身は、どうしましょうか」


 私達から離れていた黒い髪の人化したスライムも、楽しそうな顔をして、戻ってきた。


「それは、そのままでいいよ〜。キングライムのテリトリーに足を踏み入れたから、分身を捨てないと逃げられなかったのよ〜」


(長老様の能力?)


 私がもらった色は、拡張とか持続の能力だけど、そういえば、長老様……キングライムってどんな能力があるのか知らないな。



「長老はね〜、樹木を司るキングなんだよ〜。テリトリーには、見えない触手が広がってるんだ〜。本当は、付近の枯れた木々や道もすぐに直せるんだよ〜」


「直すと、子供達が集落の外に出てしまうから、直さないのかな?」


 私がそう尋ねると、キングシルバーさんは軽く頷いてくれた。たぶん子供達のことだけじゃないよね。これまで、山の中の集落に食料を運んできていたのは人間だ。危ないから、近寄らせないようにしていたのかな。



「奴らの分身をこのままにしておくと、小さなスライムとなって動き出しませんか?」


 黒い髪の子は、まだ剣を握ってる。


「動き出さないから、大丈夫だよ〜。キングライムが、付近の養分に分解するよ〜。完全に分解されるまでは、奴らの話が聞こえるから、まだ分解しないと思うけどね〜」


 キングシルバーさんがそう言ったことで、黒い髪の子は、やっと剣を鞘におさめた。


「そういえば、念話が、まる聞こえだったね」


「ジュリちゃんにも聞こえたんだね〜。あっ、そっか。ベースコートは、スライム神からもらったもんね〜」


(ん? 何?)


 キングシルバーさんは、私の左横に視線を移した。そういえば、盾がまだ浮かんでる。



「ネイルは、そのまま帰るの〜?」


「あっ、いえ……」


「海辺の村長が驚くかもね〜。ネイルは、器用だよね〜。自分で自分の爪に一瞬でマニキュアを塗って、複合発動できるなんて、賢いよ〜」


(あっ、マニキュアを使ったんだ)


 私の目には、ネイルは、魔導士のように魔法を発動していると映っていたけど、確かに、魔導士じゃないもんね。


「最後に使ったのは、ジュリさんの前世の知識から、創造しました。オレが使える魔法は、ジュリさんが使うマニキュアより劣るので、工夫しました。火と土と毒を練り合わせたものだから、当たったら、毒を受けるはずです」


(機関銃みたいなやつ?)


「へぇ、面白いよね〜。キングパープルの弱毒くらいの強さはあったと思うよ〜。逃げた大陸のスライム達も、途中で動けなくなる個体もいるだろうね〜」


「ネイル、すごいね」


「あはは、はい!」


(ふふっ、嬉しそう)



「ジュリちゃんが、キングライムの色を上手く利用したね〜。奴らは、キングが人間の子供に化けてるって思ったみたいだよ〜。ふふっ、しばらくは来ないはずだよ〜」


(しばらく、か)


「まだ諦めないのかな? 指揮官っぽいスライムは逃げたんですよね?」


「うん、そうだね〜。奴らの念話を聞いておくよ〜」


(ん? まだ聞こえる?)


「私にはもう聞こえないけど……」


「アタシは、聞こえるの〜。あちこちの小島に分身がいるからね〜」


「なるほど……」


「じゃ、キララにお願いして、海辺の集落に帰ろうね〜」


 キングシルバーさんがそう言うと、人の姿のキララが現れた。ネイルに対抗してるのかな。


(きゃ〜、かわいい!)


 キララがネイルと手を繋いだ。ネイルが少し照れてる。


「イケメンさんとブラックも、ボクに触れてください」


「はいはーい」


 キングシルバーさんは、キララの肩に触れ、黒い髪の子は、キララの腕に触れてる。


 空いているキララの右手を私が繋ぐと、キララは、ピカピカな笑みを浮かべた。


(かわいい!)


「では、移動しますね」


 私達は、キララの転移魔法の光に包まれた。




 ◇◇◇




「あれ? ジュリ、ふたりだけかい? スライム神のギフトを得た子供は、4人だと聞いていたけどね」


 オバサンの家の、いつもの着地点にキララが到着すると、キララとネイルを見て、オバサンが変なことを言った。


「ギフトをもらった子は、連れてきてないよ」


「じゃあ、その子たちは……あれ? ひとりはキララに似てるね。だけど、完全に人間に見えるよ?」


「キララとネイルだよ」


 私がそう答えると、オバサンは目を見開いて固まってしまった。その顔を見て、キングシルバーさんは、ケラケラと笑ってる。



「ジュリ、そうか。1連目が埋まったんだね。しかし……」


 オバサンは、キララとネイルから目が離せないみたい。


「村長、ボクはキララだよ!」


「えっ! 発声できているじゃないかい。物質スライムが発声するなんて、聞いたことないよ」


「村長さん、オレはネイルです。オレもキララも、人間に似せるために髪はつくっていません」


「そ、そうなのかい。ネイルは、まだ1歳だったね? こんなに成長が早い物質スライムなんて、聞いたことないよ。ほんと、聞いたことないよ」


 オバサンは、聞いたことないって連呼してる。



「村長さん、キングシルバーも、ジュリちゃんの物質スライムの成長には驚いているそうです」


「ブラックは、キングシルバーと親しいのかい!?」


(目の前にいるよ?)


「親しいというか……説明が難しいです」


「村長さん〜、ブラックは、若いスライムの集落の次期村長候補だって、アルが言ってたよ〜」


「あぁ、それで、キングシルバーとも交流があるんだね。私達とは縁がないけどね」


(目の前にいるよー)



 私は、キララとネイルを指輪と腕輪に戻し、山の中の集落でのことを、オバサンに話した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ