84、プールづくり
「ジュリちゃんが作るのか?」
材木置き場を片付けていたスライム達に、ピードくんが尋ねた。
『そうだよ。ジュリちゃんに与えられしギフトの成長を、見ることができるね』
温厚なスライムが、ピードくんに優しく返事をした。長老様は、普通に発声できるけど、他のスライムは人化していないと念話になる。
「ジュリちゃんは、ピードくんやサフィちゃん達の先輩だからね」
人化したスライムも、ピードくんにそう言ったけど、たぶん、他の子供達に聞かせているのだと思う。
(あっ、4人よね?)
オバサンからは、4人の子がスライム神からギフトを授かったと聞いている。だけど、剣を持つピードくんやサフィさんを海辺の集落へ連れていくのは、大陸の人化したスライムが襲撃をやめない限り、難しいかな。
「ジュリちゃん、これくらいでいいかな?」
(広すぎるよ)
私は、ビニールプールをイメージしていたけど、スライム達が用意してくれたのは、20メートルくらいありそうな四角い場所だった。
スライム達も入れるサイズにしたのかも。長老様と話し合っていたスライム達の中には、すごく興味を持つ個体もいたもんね。
「これで、十分ですよ。常に水を入れておくなら、漏れないようにしないといけないな。えーっと……」
「ジュリちゃん、アタシも手伝うよ〜。ネイルを塗ってもらったもん〜」
キングシルバーさんは、そのために塗って欲しいって言ったのかな。人間のやることは、基本的にはスライムは見守るスタンスみたいだけど。
「じゃあ、イケメンさんに、補助をお願いしてもいい?」
「任せて〜」
私は、両手を前に出し、プールを作ろうとイメージする。空けてもらったスペースに穴を掘るのは、うっかり落ちるかもしれないから危険だよね。四角い土手というか粘土細工で、プールを作ろう。プールサイドも、人間が危険なく歩ける幅にすると、プールは縦横15メートルくらいかな。
高さというか深さは、1メートルくらいにすれば、プールサイドに上がらなくても、スライム達にはプールの様子が見えるはず。スライムが入るかもしれないし、小さな子もいるから、水深は、60センチくらいにしておこう。
(よし、イメージできた!)
銀色の髪の超絶すぎるイケメンに視線を移すと、何度もコクコクと頷いてくれた。頭の中を覗いてたのね。
「イエロースライムの土魔法!」
私の左手から魔力が放たれた。どちゃっと粘土のような塊が地面に落ちると、粘土細工のようにズンズン伸びていく。巨大な土の浴槽のようなプールができると、粘土がさらに伸びてプールの周りにプールサイド、そして階段もいくつか作ったみたい。
「ジュリちゃん〜、水漏れしないように、永久防水バリアをかけるね〜」
「はーい、お願いします」
キングシルバーさんが防水バリアを張ったためか、もしくは粘土が乾いたのかはわからないけど、プールは白っぽくなってる。
「ジュリちゃん、できたよ〜」
「ありがとう。じゃあ次は、ブルースライムの水魔法!」
今度は私の右手から、魔力が放たれた。
(すごっ!)
パシャンと音がすると、もうプールには水が入っている。しかも、両手のマニキュアは、まだ消えてない。これが、長老様の持続魔法の効果なのかな。
「完成かな。浄水はしなくても、大丈夫かな?」
「うん、すごいね〜。大丈夫だよ〜。しかも、長老の拡張魔法で、ほとんど魔力を消費してないみたい〜」
「あ、だから、まだマニキュアは消えてないのね」
「ネイルが成長した影響もありそうだね〜。ジュリちゃんのイメージ通りに、上手にできたね〜」
「うん! 安全確認しようかな」
私は、一番近い階段をのぼり、プールサイドに立った。小学校にあったプールの半分くらいの長さだけど、コースごとに区切ってないから、大きく見える。
水は、少し冷たい。でも日差しですぐに水温も上がるかな。
「水着がないけど……入ってみる」
私は服を着たまま、プールに入った。水深60センチって、子供にはちょうどいいかも。今、9歳の私のお腹くらいだから、子供には泳ぎやすいと思う。
「ジュリちゃん、もう少し水が多い方が良くない?」
振り返ると、人化したスライムが何人かプールに入っていた。
(いつの間に?)
黒い髪の人化したスライムは、さっきまでは居なかったのに、一番嬉しそうな顔をしてる。
「子供には、これくらいでいいよ。溺れてしまうと危ないもの」
「お風呂にしては、冷たすぎるよ〜」
(お風呂じゃないよ)
「水浴びの池の代わりだよ」
「ふぅん。ここで何をして遊ぶの〜?」
「泳ぎの練習をしてもいいけど、いろいろと遊べるよ」
私は、この身体で泳げるかを試してみた。
(あっ、できそう)
スーッと平泳ぎをしてみる。子供の身体だけど、かなり運動神経は良いみたい。
「うわっ! ジュリちゃんが魚みたいに泳いでる!」
ピードくんの大きな声が聞こえた。いつの間にか、プールを取り囲む輪ができている。プールの中から見ると、たくさんの子供達の顔だけが並んでいるように見える。高さを1メートルにしたのは正解だったね。
プールから上がると、キングシルバーさんが、何かの魔法を使って、私の服と髪を一気に乾かしてくれた。
「イケメンさん、ありがとう」
「いいのよ〜。ジュリちゃんが魚だったなんて、知らなかったよ〜」
「魚じゃないよ? 前世では、みんな普通に泳いでたし」
(あっ!)
プールの中に、スライム達が飛び込んだ。たぶん、安全確認をしているのね。大きなスライムなのに、ぷかぷかと浮かんでいる。
「ぼくも〜!」
子供達が騒ぎ始めたけど、人化したスライムが、必死に止めてる。
『ジュリちゃん、挨拶して。すぐに集落を出よう』
なぜか、キングシルバーさんからの念話。何か、緊急事態なのかも。
「みんな、今日と明日は準備をして、明後日にお楽しみ会をしましょう。プールはまだ冷たいから、明後日からだよ。ピードくん、お楽しみ会を知っているよね? プレゼント釣りをします。景品は私が調達してくるから、ピードくんは、みんなで道具を作っておいてね」
「なっ? ピードじゃなくて……もういいや。ジュリちゃんが景品を用意できるのか?」
「海辺の村長さんにも協力してもらうから、大丈夫だよ。ピードくん、今日と明日で、お楽しみ会の準備できる?」
「できらぁ〜、たぶん」
(ふふっ、不安そう)
「じゃあ、長老様、私達は帰りますね」
「アタシも効果を試すのよ〜」
長老様が返事をする前に、キングシルバーさんが転移魔法を使った。




