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83、ジュリの提案

「お芋のスープも食べていいの?」


「食べていいのよ。ジュリちゃんがたくさんの食料を配達してくれたからね」


 倉庫で会った人化したスライムが、甘い芋のスープを作ってくれた。オバサンの味とは違うけど、素朴な味で美味しい。


 こんなに酷い状況になる前に言ってくれたら、キララが配達したのにな。でもここはスライムの集落だから、人間に頼りたくないのかもしれない。たぶん意地とかじゃなくて、申し訳ないと思ってたのかも。


 スライムは、人間のことをペットだと考えてるからだよね。巣立ったペットに、買い物を頼むという発想は、ないのかもしれない。



 食べ終えた子供達が食堂から出ていくと、別の子供達が、人化したスライムに連れられて入ってきた。


(交代制なんだ)


 そういえば、ここには50人以上の人間の子供がいるって言ってたっけ。食堂の席数は、その半分もない。


 オバサンは、大量にパンを焼いてくれたけど、一つずつ食べると、ほとんど無くなってしまう。たぶん、オバサンは何食分かを想定してたんだろうけど。




「晩ごはんは、何にするんですか?」


 私は、キララとネイルを左手に戻した後、食堂の厨房でスープ皿を洗っている人化したスライムに、話しかけてみた。


「そうねぇ。ジュリちゃんがいろいろと配達してくれたから、何にするか迷ってしまうわね」


「食堂に食べに来た子供の数って、まだ50人もないと思うんですけど」


「あぁ、そうね。部屋から出られない子には、さっき、スープとパンをお手伝いの子が運んでくれたわ」


(引きこもってしまうのね)



「大陸のスライムを恐れてるんですよね。私と同じく白い髪の子がいるって、海辺の村長が言ってたけど」


「ええ、珍しい髪色の子は、常にスライムが保護しているの。雨の日にジュリさんも遊んでいたかしら? 大きな建物があるんだけど」


「闘技場みたいな大きな建物ですね。剣の練習をしている子がいたから、雨じゃない日も見ていた記憶があります。お楽しみ会をして遊んだこともあったかな」


「今は、あの場所も、子供達の住まいになっているわ。スライムも入れる広さだから、怖がっている子は、あの建物に集まっているの」


(そうなんだ……)


 世話をするスライム達は、たぶんみんな、人間が好きで世話をしているのだと思う。子供達に笑顔がないなんて、きっと辛いだろうな。


 集落の結界の外には出られないから、子供達も、ここにいても、つまらないよね。いや、つまらないと思える余裕もないか。



「今、長老様はどこにいるか、わかりますか?」


「そうねぇ、スライム達の広場じゃないかな。ジュリちゃんがスライム神のギフトをもらった広場よ」


「わかりました。ちょっと行ってみます」


 私は、ぺこりと頭を下げ、スライムが集まる広場へと移動した。




 ◇◇◇



「長老様、ちょっとお話があるんですけど」


 スライムが集まる広場は、たくさんのスライムがいるけど静かだった。人間には聞かれないように、念話で話していたのだと思う。キングシルバーさんや黒い髪の人化したスライムも、その輪に混ざってる。


「ジュリ、何かあったのかのぅ? みんな楽しげにしておったようじゃが。髪色は白く戻したのじゃな」


(見えてたのね)


「はい。赤い髪を怖がる子がいたので、元に戻しました。お昼ごはんは、みんな楽しく食べていました。でも、子供達の表情が、やはり気になって」


「ふむ。大陸のスライムのことか。今は大型船が来ないようだから、悪しき人間は島には来ないのじゃがな」


 長老様がそう言うと、スライム達が互いに顔を見合わせている。この件を話し合っていたのね。キングシルバーさんは、ニコニコしてるけど、全然ポーカーフェイスはできてない。



「今日は、とりあえず帰ります。明日は準備をして、明後日に、お楽しみ会をしませんか?」


「むむ? おぉ、ジュリがいた頃には、季節ごとに行事をしておったな。じゃが、集落の外へ子供達を出すわけにはいかないからのぅ」


「集落の中でもできます。子供達は、水浴びもできないから、ちょっと臭い子もいました。集落の中に、プールを作ってもいいですか?」


「ぷー? ぷーるとは何じゃ?」


 長老様は、銀色の髪の超絶すぎるイケメンに、視線を移した。彼が知っているかを確かめたかったのかも。



「ジュリちゃんの前世の世界では、大きなお風呂を作って泳ぐ遊びがあるの〜」


(ちょっと違うけど)


「泳ぐ? 人間が泳げるのか?」


「ジュリちゃんは泳げたみたいだよ〜。あ、でも小さな子は、プールで水をかけ合って遊ぶの〜。泉のスライムも、ジュリちゃんと水をかけ合って遊んでたけど〜」


 勝手に泉に落ちる子がいるだけなんだけどな。特に、ヤンチャな子が……。無意識に、黒い髪の人化したスライムに視線がいってしまう。


「いや、俺は、失敗して泉に落ちるんじゃなくて、派手に泉に落ちると、他のスライムがびしょびしょになるのが面白いから……じゃなくて、えーっと?」


(ふふっ、焦ってる)


 黒い髪の人化したスライムが焦った顔をしていると、スライム達がニマーッと笑ってる。この集落のスライム達から見れば、彼はまだまだ子供なのね。



「ふむ。子供達が笑顔になるなら、ぷーるとやらを作っても構わぬぞ。水浴びにも使えそうじゃな。ウォータースライムと、イエロースライムを呼ぶか」


「プールは、たぶん私が作れると思います。今日は、プールを作ってから帰ります」


「ジュリが? あー、ネイルを使うのかのぅ?」


「もう、マニキュアは塗ってあるから、長老様の色の効果も確認したいですし」


「ほう! それは楽しそうじゃな。どこが良いかのぅ? 人間の子供達に使いやすい場所で、何も無い所が良いから……」


 しばらく、スライム達が念話で話し合いをしていた。みんな、未知のプールに興味津々みたい。


 やっぱり、この集落のスライム達は、みんな人間が好きで優しいよね。だけど、それは、この島の中では少数派なのも、今の私は理解している。



「ジュリ、子供達の風呂場の前の材木置き場はどうじゃ? 寒い日のたき火のための材木置き場じゃが、最近は使ってないからのぅ」


「あっ、お風呂の近くなら、使い勝手がいいですね。では、さっそく、プール作りを始めます」

 

「プール作りも珍しいから、皆で見学することにしよう。子供達も、喜ぶはずじゃ」



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