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8、イーグルさんが島を出るよ

「ジュリ、今日は水汲みずくみには行かなくていい。昼には大型船が来るからね」


「はーい、じゃあ……」


 朝ごはんを食べ終えると、オバサンはお弁当をたくさん作り始めたの。イーグルさんに持たせるのかな。



 ここに来たときは黒い髪だった二人の髪色は、オバサンが物質スライムを使って脱色と染色をしたおかげで、真っ黒ではなくなったの。


 暗い黄髪になったイーグルさんは、お使い係の手伝いをしているうちに、髪から濁りが消えたの。この島には、浄化作用というチカラがあるんだって。


 だけど、濃い赤茶色の髪色になったロックスさんは、漁師のお兄さん達の手伝いをしていたから、髪色は全然変わってない。オバサンが、もうしばらくしたら、また試してみるって言ってたけど。



「村長、本当にお世話になりました! 俺は先に島を出ますが、ロックスのことをよろしくです」


 イーグルさんが、お別れの挨拶をしたの。


「あぁ、さすがにこの状態では、ロックスは島から出せないからね。イーグル、おまえの役目はわかっているね?」


(イーグルさんの役目?)


「もちろんです。俺達と同じように黒い髪になった人間を見つけたら、この島のことを教えます」


「イーグルの手紙も持たせるんだよ? どの国で見つけたか、そしてどこで黒い髪になったかを書き記しておくれ。たまに言語が通じない人もいるからね。ただ、肌が黒くなった人間は手遅れだ。髪だけが黒色化した人間にだけ、教えてやっておくれ」


「承知してます。俺は冒険者なんで上手くやりますよ。この島へ渡る方法は、大型船が立ち寄る小さな島で降りて、ボートで珊瑚礁を越えればいいんですね?」


「あぁ、そうだよ。ただし、黒色化が進んでいて中身がダークスライムになっていたら、この島には入れない。スライム神の結界があるからね」


 オバサンとイーグルさんは、難しい話をしてるの。イーグルさんが島を出る決意をしたのは、大陸にいる黒い髪の人達を助けるためみたい。



「ジュリちゃん、2ヶ月間ありがとうな。スライムの泉で毎日ジュリちゃんが水汲みをしてくれたおかげで、俺の髪は完全に元通りだ。ロックスのこと、頼むな」


「うん。イーグルさん、元気でね」


 私がそう返事をすると、イーグルさんは寂しそうな笑顔になったよ。たぶん、仲良しのロックスさんを残して行くのが心配なのね。




 ◇◆◇◆◇




 イーグルさんが島を出て、しばらくすると、お使い係をしていた緑色の髪のお兄さんが、島の他の集落に引っ越しちゃったの。


 漁師のお兄さんは、緑色の髪のお兄さんは海辺の集落を離れたがっていたから、仕方ないって言ってたよ。



「ジュリ、物質スライムを使えば、他の集落に行けるかい? ギフトを得てから半年以上経つけどさ」


「遠いの? 行ったことのない場所に行くときは、私だけじゃ無理だよ」


「あぁ、そうだったね。じゃあ、カールに案内させようか。今日は沖は大雨だから、漁は休みだろうからね」


 オバサンは晴れた空を見上げて、不思議なことを言ったの。海に雨が降っていることがわかるのかな。


(あっ、物質スライムかも)


 オバサンの物質スライムは、海辺の集落で一番偉いスライムなんだって。だから、オバサンが村長なんだよ。


 それに誰かを呼ぶときも、物質スライムを使って念話をさせるの。海辺の集落にはたくさんのスライムがいるから、とっても便利なんだって。




「村長、呼んだか?」


 しばらくすると、漁師のお兄さんが、ロックスさんと一緒に、オバサンの家に来たよ。


「カール、他の集落への使いを頼めるかい? ジュリの物質スライムに場所を覚えさせたいんだよ」


「あぁ、ターハが、引っ越したからか。だけど他の集落にジュリちゃんを使いに行かせるのは、さすがに怖くないか?」


(怖いの?)


「移動は問題ないとして、まぁ、確かにね。あっ、ロックスも顔見せしておくれよ。まだしばらくは、この島にいるだろ?」


「村長さん、わかりました。俺もイーグルと同じく冒険者をしてたから、ジュリちゃんの護衛ならできますよ」


「じゃあ、よく行く近い場所から覚えてもらおうか。遠い集落への届け物も、近い集落に仲介させられるからね」


 オバサンがそう言うと、ロックスさんは、なるほどと言って頷いたの。何がなるほどなのか全然わかんない。



「ロックスに道を覚えてもらわないといけないから、歩いていくか。村長、届け物は何だ?」


「手紙だよ。昨夜、ほこらに届いたらしい。届け先は、緑の集落だから、ちょうど良いだろ。ついでに余っている魚を持って行ってやるかい?」


「そうだな。緑の野菜をもらってこようか? 山の中の集落にも、そろそろ届けないといけないからな」


(山の中の集落!)


 私は、長老様の優しい笑顔を思い出して、少し辛くなってきちゃった。でも、私のことを知っている子に会うとダメだから、私は山の中の集落には行けないの。そういう決まりなんだって。



「ジュリちゃん、わりと歩くことになるけど大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。緑の集落って、山の中にあるの?」


 私の質問がおかしかったのかな? お兄さんは、一瞬、キョトンってしちゃった。


「ジュリ、この島には、4つの人間の集落がある。4つとも海沿いの岸壁の内側にあるんだよ。島の外周と言う方がわかりやすいかい?」


「村長、地図があれば説明しやすいんだけどな」


 お兄さんがそう言ったけど、オバサンは首を横に振ってる。地図はないのね。


「あっ、カール。ジュリは赤ん坊の頃からこの島にいるから、大陸のことを何も知らないからね」


「あぁ、わかってる。気をつけるよ」


 私には全然わかんない話をしてる。だけど、きっと質問しても、子供は知らなくていいって言うんだよね。



「緑の集落には、緑の帝国の出身者が集まっているんですか」


「そうだよ。ロックスは、赤の王国の生まれだったね。緑の集落でケンカするんじゃないよ?」


「はい、気をつけますよ」


 赤の王国と緑の帝国は、仲が悪いのかな。漁師のお兄さんも赤い髪だから、赤の王国?



「お兄さん、赤の王国の人って、髪色は赤いの?」


「あれ? ジュリちゃんは、それも知らなかったか。大国に色の名前がついているのは、その国のスライムの色なんだよ。人間の髪色も、その影響を受けているから、赤い髪の人が多いね」


(むむ? スライムの色?)



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