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78、山の中の集落

「何者だ! 止まれ!」


 私は、キララを一旦クローズし、キングシルバーと黒い髪の人化したスライムと一緒に、懐かしい集落の門をくぐった。


(なんか、すごく変わった)


 集落の門には、そもそも門番なんて居なかったし、集落の中の様子も、私の記憶とは大きく変わっていた。


 門番は、スライムではなく、人間みたい。


 この集落にいた頃は、子供と、孤児の世話をする人間と、大きなスライムがいると思っていた。スライム神のギフトを得た後は会わなかったから、気づかなかったのね。チラッと孤児の世話をしている人が見えるけど、人化したスライムだよ。



「私は、3年前に、この集落を出たジュリだよ。海辺の集落の村長に頼まれて、人間の食料を運んできたの」


「えっ? 騙されないぞ。ジュリちゃんは白い髪だったからな!」


(あー、髪色そのままだった)


「これは、私の物質スライムの能力だよ。白い髪のジュリだよ。元に戻そうか? アナタは、ピードくんだっけ?」


 私が名前を呼ぶと、男の子はギクッとしてる。門番は二人いるけど、もう一人は知らない子ね。


「ピードじゃねぇ! ピードルだ! ジュリちゃんはいつも、ピードって間違え……あれ? 本当にジュリちゃんなのか?」


「ジュリだよ。えー? ピードくんでしょ?」


「だーかーらー、ピードルだってば! そのおバカな頭は、ジュリちゃんに間違いないな」


(失礼ね)


 私がぷくっと膨れっ面をすると、彼は懐かしそうにケラケラと笑った。だけど、彼をピードと呼ぶようにと、長老様が言ってたんだからね。


(あっ、偽名かも)


 スライム神から受け取った手紙には、私の名前は、ジュリではなく、ジュリエッタと書いてあった。


 ピードくんの髪色は青い。アルくんとは違う青さだけど、偽名を使わないといけない身分なのかも。彼自身は、偽名が嫌で、ピードルという名前を大事にしてるのかな。



「ジュリちゃん、この子は知らないだろ? ジュリちゃんが集落を出た後に来たサフィだ。俺達は、スライム神から剣のギフトを得たんだけど、大陸で戦乱が始まったから、集落の門番をしてるんだ」


(女の子なのに剣?)


 サフィと呼ばれた水色の髪の女の子は、私にぺこりと頭を下げた。でも、私の後ろにいる二人に鋭い視線を向けている。


「サフィさんっていうのね。ジュリです。よろしくね。後ろの二人は私の護衛だよ。山の中には、魔物がいるからね」


「スライムがなぜ人間の護衛をするの? ジュリさんは騙されてるよ。私にはスライムかどうかがわかる。ピードルにはわからないみたいだけど」


(なるほど)


「サフィさんには人化したスライムは、どんな風に見えるの? 私は、髪色と同じ色の帽子を被っているように見えるよ」


「えっ……いえ、私の物質スライムが、二人はスライムだと、内緒で教えてくれるから……」


 彼女の物質スライムは、キングシルバーの命令よりも自分の主人への忠誠心を優先するのね。物質スライムには、それぞれ個性があるけど。でも、スライムか否かだけを知らせるなら、キングシルバーに逆らうことにはならないのかな。



「大陸のスライムは、この集落には入れないぞ!」


 ピードくんが剣を抜いた。だけど、人化した二人のスライムは、余裕の笑みね。


「ピードくん、この二人は、この島のスライムだよ。海辺の集落の村長は、銀髪の人をイケメン、黒髪の人はブラックと呼んでるよ」


「俺は、ピードルだってば! 海辺の集落の村長も、騙されてるんじゃないか?」


(異常な警戒心ね)


 スライム二人の方に視線を向けてみたけど、余裕の笑みを浮かべているだけで、何も言わない。そっか、人間同士の口論には、口を挟まないのね。




『何を揉めているのだ?』


 目の前に、数体のスライムが現れた。長老様に仕えているスライム達だと思う。私がここにいたときには、スライムはすべて大きいと思っていたけど、大きなスライムの草原にいるスライム達に比べると、半分くらいしかない。


「ジュリちゃんが、怪しいスライムに騙されているんだ!」


『む? 赤い髪の子がジュリなのか?』


(あっ、見分けがつかないのね)


 スライム達には人間の顔の識別が難しいと、以前誰かが言っていたっけ。髪色が、識別の重要な要素なのかも。



「お久しぶりです。ジュリです。この髪色は、私の物質スライムの能力ですよ」


『むむ? ジュリに与えられしギフトは、出店であったはずだが?』


(あっ、あのときに居たのかな)


 長老様が広げた魔法陣を踏んでいたスライムのひとりかも。


「私を守ってくれる物質スライムは、出店とネイルです。出店の物質スライムには、キララと名付けました」


『なっ? なんと?』


(あれ? ピンときてない)




「ジュリちゃん、この集落にいるスライム達は、みんな年寄りなんだよ〜ブラックの集落の村長よりも、物忘れはひどいみたいだよ〜」


 銀色の髪の超絶すぎるイケメンがそう言うと、スライム達は、同時にクワッと目を見開いた。いつも温厚なスライムしかいないと思ってたけど、怒ったのかな?


『キングシルバーが、なぜ人化しているのだ?』


(あっ、バレてる)


「コラ〜! アタシは、イケメンという名前があるんだからね〜。そんなダサい名で呼ばないでくれる〜?」


『えっ、ダサ……何だって?』


「もう〜、これだから嫌なのよ〜。アタシ達は、人間の食料を運んで来たのよ〜? 運んだのはキララだけど〜」


 銀色の髪の超絶すぎるイケメンが、スライム達に、シッシと手で合図してる。そういえば、ここのスライム達は、忘れっぽかったかも。そういう種族だと思ってたから、気にしなかったけど。



「ジュリちゃん、キングシルバーって何だ? そういう種族なのか?」


(ピードくんは、知らないよね)


 私もここにいた頃は、スライムの序列のことなんて、何も知らなかったもんね。


「ピードくんも、ここを出ればわかると思うんだけど……」


「アタシは、そういうダサいあだ名で呼ばれてるだけよ〜。イケメンっていう名前は、カッコいいっていう意味の異世界の言葉なの〜」


 私の言葉を、彼が遮った。人間には、素性を教えたくないのね。


「ふぅん、確かにカッコいいよな。この島のスライムなら、入っていいよ」


「ありがとう〜。ジュリちゃん、先に村長……じゃなくて、長老に、ご挨拶に行こうね〜」


「うん、わかったよ。長老様のおうちに案内するね」


 私が歩き始めると、みんながゾロゾロとついて来た。


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