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77、島の中で起きていること

 翌朝、朝食を食べていると、外が騒がしいことに気づいた。ちょっと起きるのが遅かったから、今、朝ごはんを食べているのは、私だけなんだけど。


「村長さん、外で何をしてるの?」


「あぁ、小屋を建てているんだよ。ジジイ達は漁師の家に泊まっているけど、新たに山の中から子供が来るからね。ロックス達には、新しい小屋に移ってもらうんだよ」


「ふぅん。山の中の集落に迎えに行くのは、昼からでいいんだよね?」


「キララを使うんだろ? 昼からでいいよ。持って行ってもらいたい荷物が、昼までに届くことになってるからね」


(荷物待ちなのね)


 そういえば、綺麗好きなオバサンには珍しく、扉の近くに泥だらけの野菜が山積みされてる。



「キララだとすぐに行けるからね。山の中は、今は道が途切れてるって聞いたよ」


「あぁ、魔物のせいだよ。人間の子を預かる山の中の集落には、今、白い髪の男の子がいるんだ。そのためだろうけど、あの集落の周りには、魔物を惹き寄せる香木が撒かれたんだよ」


(何、それ)


 私がいた頃は、集落から出てすぐの場所にある綺麗な小川で、身体を洗っていた。そんな物を撒かれたら、小川で身体を洗えないじゃない。


「大陸のスライムがやったの?」


「いや、人間だよ。だいぶ前になるけど、イーグル達が乗ってきた大型船が来たとき、大勢の人間が島に来たからね。見回りのスライム達の警戒が解けた頃に、山の中に入った人間が撒いたんだ」


「人間が、どうして?」


「たぶん冒険者だろうね。そういう依頼を受けて島に来たんだろう。見回りのスライム達が捕まえる前に毒を飲んで死んだらしいから、詳細はわからないけどね」


「えっ? 自殺したの?」


「冒険者は自殺なんてしないよ。おそらく、転移ができる薬だとか、適当な嘘に騙されたんだろう。その死体は一瞬で気体化して、付近に猛毒を振り撒いたみたいだ。木々は枯れて、土はドロドロになり、毒の沼地に変わったんだよ」


「ひどい……」


「大陸で戦乱が起きてから、スライム神がギフトを与えた子供をこの島から出せなくなったからね。それを知って、未熟な子供を探している連中の仕業だよ」


「魔物を惹き寄せたり、人間を毒に変えて木々を枯らして、何がしたいのかな」


 私の素朴な疑問に、オバサンは困ったみたい。たぶん、わからないんだよね。




「ジュリちゃん〜、おはよう〜。朝ごはんは食べたかな〜?」


 銀色の髪の超絶すぎるイケメンが、ふらっと入ってきた。今日は髪をまとめてないから、ひどい髪型になってる。


「イケメンさん、おはよう。うん、食べたよ」


「ちょっと、イケメン! 何だい? その髪は」


「潮風のせいだよ〜。村長、なんとかして〜」


「まったく仕方ないね。その椅子に座りな」


(オバサン、嬉しそう)


 ぶりぶりと文句を言うのは、オバサンの照れ隠しだと思う。彼の髪を丁寧にとかし、いつものように後ろで結んだ。


「村長さん、ありがとう〜。あっ、アタシもジュリちゃんと一緒に、山の中の集落に行ってもいいかな〜?」


「は? ダメに決まってるだろ。あの集落は、スライムの集落だよ。島に流れ着いた孤児と、スライムの加護を与えられた者しか、人間は立ち入れないんだ」


「え〜、アタシはこの島に流れ着いた孤児だよ〜」


(違うでしょ)


「イケメンは、孤児という年齢じゃないだろ。結界があるからね。人間は入れないし、そもそも見えないはずだ。だから、あの集落を狙った人間が、集落を見つけられなくて魔物を惹き寄せる香木を撒いたんだよ」


「アタシも、ジュリちゃんの護衛をしたいよ〜。黒いスライムだけでは心配だよ〜。アタシは暇なんだよ〜」


「ダメったらダメだ。暇なら、小屋を建てるのを手伝っておくれよ。イケメン専用の部屋を作ってやるからさ」


「アタシの部屋を作ってくれるの〜? 嬉しいな〜」


 そう言いながら、彼はふらっと外に出て行った。髪を結んでもらいに来ただけなのかな。



 ◇◇◇



 昼食の後、私は、黒い髪の人化したスライムと一緒に、山の中の集落へ行く準備をしていた。


「こんなにたくさん持って行くの?」


 山積みされた野菜だけでなく、赤の集落の加工肉や、黄の集落の麦粉、そしてオバサンが焼いた大量のパンが、テーブルに積み上げられていた。


「あぁ、持って行っておくれ。あの集落への行き来は、今は人間にはできないからね。人間用の食料が足りないみたいだ」


「そっか。わかったよ。キララ、オープン」


 キララを呼び出すと、大きなワゴンの姿で現れた。



「はぁ、移し替えるのも、大変だね」


『村長、その必要はないよ。少し離れて』


 キララは、テーブルに山積みになっていた食料を一瞬で、大きなワゴンに移した。


「キララは、こんなことまで出来るのかい」


『仕入れだからね。ボクの基礎能力だよ。ジュリちゃん、もう出発しても大丈夫?』


「あっ、黒い子……も、来たね。キララに触れてくれる?」


 私がそう言うと、黒い髪の人化したスライムは、少し緊張した様子で、ワゴンのパラソルを支える棒を握った。



「じゃあ、村長さん、行ってくるね。あっ、子供達は何人かわかる?」


「スライム神のギフトを与えられた子供は、4人いると聞いているよ」


「4人も? わかった。じゃあ、行ってきます」


 そう言った直後、イケメンさんが透明な触手を伸ばしてきたのが見えた。オバサンは気づかないけど、黒い髪の人化したスライムは気づいて、ギョッとしてる。


 そして、私達は、キララの転移魔法の光に包まれた。



 ◇◇◇



「あれ? キララ、どうしたの?」


 懐かしい集落に着くと思っていたのに、集落から少し離れた池のそばに到着した。


「キララでも入れないんだね〜。ジュリちゃん、あの集落には強い結界があるから、転移魔法で入ることは難しいんだよ〜。でも、これで、ちょっと安心だね〜」


「イケメンさんの目的は何? 村長さんがいたから聞けなかったけど、この島で何が起きてるの?」


 私がそう尋ねると、彼はクスッと微笑んだ。


「ジュリちゃんって、探偵さんみたいだね〜。アタシ達は、人間がやることは見守る方針なんだけど、ちょっと許しがたいことになってきたんだよ〜」


「どうするの?」


「うん〜、まだ悩んでるんだけど〜、この島にいるスライム達が、かなり怒ってるよ〜。アタシが直接動くと、人間を殺していいんだと思わせちゃうから、難しいんだ〜」


(なるほどね)


「それで、イケメンさんが急に現れたのね。わかったよ。私が、キララとネイルの力を借りて、何とかしてみる」



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