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76、久しぶりに現れたキングシルバー

「ジュリ! どうしたんだい? その髪は」


 赤い髪のまま、アルくんと一緒に海辺の集落に戻ると、オバサンが大声で叫んだ。私の髪色に驚きすぎて、一緒について来た黒い髪の人化したスライムには気づいてないみたい。


「ネイルの新しい能力だよ。爪のマニキュアとは違って色は少ないけど、髪にマニキュアができるの」


「染色じゃなくて、マニキュアってことは、髪の表面を覆っているということかい?」


「うん、そんな感じ。まだ他の人には使えないんだけど」


(固まってる……)


 オバサンは目を見開いたまま、動かなくなった。物質スライムと話してるのかもしれない。




「ジュリちゃん、久しぶり〜」


(ん? この声は?)


 後ろを振り返ると、銀色の髪の超絶すぎるイケメンが、私の後ろに立っていた。オバサンは、彼を見て固まったのかも。


「イケメン! 久しぶりじゃないか。小島にいたのかい?」


「村長、久しぶり〜。アタシは、いろいろだよ〜。しばらく見ないうちに、ジュリちゃんの髪が赤くなってるから驚いたよ〜」


「それなら、私も驚いたさ。若いスライムの集落から戻ってきたら、赤い髪になっていたからね。ジュリの物質スライムの能力らしいよ」


「今日は、ジュリちゃんの誕生日なんでしょう? 物質スライムも大人になったのかもね〜」


 彼は、オバサンには、人間だと思わせておきたいみたい。アルくんも、彼のことは人間だと思ってる。


 だけど、黒い髪の人化したスライムは、驚いた顔をしたまま、困ってる。たぶん、念話で正体をバラすなと命じられたのね。


「あぁ、イケメンは、ジュリの誕生日だから来てくれたんだね。私も昼に聞いたから、慌ててお祝いの料理を作ったんだよ。あれ? 黒い髪の青年が逃げてきたのかい」


(やっと気づいた)


 オバサンは、黒い髪の人化したスライムのことも、人間だと思ってるみたい。オバサンの物質スライムは寝てるのかな。



「村長さん、この子はスライムだよ。私が6歳の頃に、毎日部屋に泊まりに来てた小川の赤ん坊の一人だよ」


(忘れたの?)


 オバサンは、大きな黒いスライムには、あの集落で会ってるし、人化した姿も見ているのに、わからないのかな。


「ダークスライムじゃないだろうね?」


「村長、彼は、俺が訓練に行っている集落の住人です。次期村長候補だと言われているブラックさんです」


 アルくんがそう説明すると、オバサンはホッとしたみたい。


「へぇ、ブラックという名前かい」


「俺がそう呼び始めたら、多くのスライム達が同じように呼んでいるみたいですよ。彼は、すごく強いです」


 なぜかアルくんはドヤ顔をしてる。命名したことを褒めてもらいたいのかも。


「なるほどね。それで海辺のスライム達が、ちょっと離れているのか。晩ごはんにするから、みんな、家に入って、手を洗いな。ジジイがお腹が減ったとうるさいんだよ」


 オバサンは、黒い髪の人化したスライムがなぜ来たのか、気にしてないみたい。あっ、私の誕生日だからだと思ってるのかな。




 ◇◇◇



「ジュリ、9歳おめでとう。朝に言ってくれたらよかったのに、遠慮を覚えたのかい?」


「村長さん、ありがとう。なんとなく言いにくいなと思っただけだよ」


 夕食は、私が好きな料理が並んでいた。同じテーブルを囲むのは、私が気を許している人ばかり。キララから、何か指定があったのかもしれない。


「ジュリちゃんは、赤い髪が似合うね〜。9歳にしては大人っぽいと思うよ〜。まとめ髪にしてるからかな〜」


「この髪留めが大人っぽいからね」


 髪は、8歳の誕生日にロックスさんがくれた髪留めを使って、後ろでまとめてある。これはオバサンの提案だった。ロックスさんも嬉しそう。



「今年は何も用意できなかったから、イーグルと花を摘んできたよ。花瓶に入れておいた」


「このお花? かわいい、ありがとう!」


「ジュリちゃんは、やっぱり赤の王国の子なんだね。赤い髪がよく似合うよ。真紅の髪の女って、いいよな。抱きしめたくなる」


「おい、イーグル、変な意味に聞こえるぞ」


「ロックスが、エロいことを考えてるからだろ。俺は、純粋な心で、真紅の髪が色っぽいって言ってるだけだ」


「おまえなー、全然、純粋じゃねぇよ」


「あんた達! つまらないことを言うなら、食後のデザートは食べさせないよ!」


 オバサンに叱られて、ロックスさんとイーグルさんは、苦笑いしてる。



「ジュリちゃん、アタシの髪も赤くできるの〜?」


(キングシルバーさんまで?)


「それは、1連目が埋まらないと、ネイルにもわからないみたいだよ。イケメンさんも赤い髪にしたいの?」


「赤い髪もいいけど、アタシは黄色が似合う気がするよ〜。青もいいよね〜」


「髪色を変えたい願望があるのね」


「ふふっ、だって、別人になるみたいで楽しいじゃない? 緑でもいいかも。でも黄色かな〜?」


 キングシルバーがいるためか、黒い髪の人化したスライムは、ほとんど話さない。海辺のスライム達も、窓から見える場所には居ないのよね。


(ちょっと雰囲気も違うかも)


 最近は姿を見せなかったキングシルバーが現れたことには、何か理由があるはず。それに、他の集落の住人が居るためか、いつもとは違って、オネエっぽさが少ない。




「ジュリ、あと一つなんだよね?」


 オバサンが、デザートのフルーツタルトを切り分けながら、突然マニキュアの話を始めた。ということは今、物質スライムから何かを聞いたのね。


「うん、1連目はあと一つだよ」


 すると、ずっと話さなかった黒い髪の人化したスライムが口を開く。


「村長、オレ達の話を聞いてくれたか?」


「あぁ、偶然なんだけど、同じことをジジイも言っていたよ。ブラックは人間の事情を知らないから、難しく考えすぎだね。ジュリは立ち入りを禁じられてないよ」


(あっ、地底湖の話かな?)


 私は、オバサンが私のためだけに焼いてくれたシュークリームのような焼き菓子に手を伸ばす。


「じゃあ、ジュリちゃんは入れるんだね! オレも許可がもらえるみたいだ。よかった!」


「あぁ、アルの後、しばらく止めていたから、いい機会でもあるね」


(ん? 何の話?)


 私が首を傾げると、黒い髪の人化したスライムは嬉しそうな顔をして、私にギュッと抱きついてきた。


「ジュリちゃん、意地悪みたいになって、ごめんね。オレも人間のフリをして付き添いをするよ」


「地底湖に行くの?」


「ん? 違うよ。ジュリちゃんが育った、山の中の集落だよ。スライム神のギフトをもらった子供達を、一緒に迎えに行こう!」


(長老様のとこ?)


皆様、いつもありがとうございます。

月曜日は、お休み。

次回は、11月18日(火)に更新予定です。

よろしくお願いします。

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