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75、考えてくれるスライム達

「あれ? ジュリちゃんの髪が赤い」


 黒い髪の人化したスライムが、口をモグモグしながら、私達が並んで座っている席にやってきた。


(お行儀が悪いよ)


「うん、ネイルの新しい能力を試してみたよ」


「髪色が完全に赤く見えるけど、どうなってるの? 赤いしずく種じゃないよね?」


「髪にマニキュアしたんだよ。染めたわけじゃないから、そんなに長持ちはしないけどね」


「もしかして、髪色に悩んでいる人間には、すごく嬉しい能力じゃない?」


 黒い髪の人化するスライムも、アルくんの悩みを知っているみたい。ほとんど毎日、アルくんはここに来てるもんね。


(あっ、集まってきた)


 口をモグモグしてる人化したスライムが、どんどんこちらに移動して来る。スライム達は、念話でも情報共有するから、何でも伝わるのが早いよね。



「まだ、他の人には使えないの。1連目の色が全部埋まれば、アルくんにも使えるようになると思うよ」


「オレにも使える?」


「ん〜? 黒い髪を変えたいの?」


「オレは気にしないんだけどね。大陸に行くなら、真っ黒じゃない方がいいという意見もあるから、しずく種を連れて行こうかと思ってたんだ」


(水まんじゅうみたいな子か……)


 しずく種は他のスライムに狙われやすいって、誰かが言ってた。大陸に連れて行って、大丈夫なのかな?


「スライムにもヘアマニキュアが使えるかは、1連目が埋まってみないと、わからないと思う。あとひとつなんだけどな」


 私がそう言うと、スライム達は、さっきまでよりも真剣に、候補を考え始めてくれたみたい。もしかして、スライム達にも、髪色を変えたい願望があるのかも。



「ジュリちゃん、俺は、午後の訓練に行ってくる」


「うん、アルくん、頑張ってね」


「あぁ。ふふっ、なんだか赤い髪のジュリちゃんって、見慣れないから不思議な気分になるよ。じゃあね」


(不思議な気分?)


 アルくんは、少し照れたような表情で、小屋から出て行った。私も赤い髪が視界に入ると、変な感じだけど。



「へぇ、アルは、ジュリちゃんのことを女の子として意識してるみたいだね。真紅の髪色はモテるって聞いたよ?」


 黒い髪の人化したスライムは、何だか変なことを言ってる。


「私は、女の子だけど?」


「そうじゃなくて、異性として意識してるってことだよ。海辺のスライム達からも、そういう話は聞いてたけどね」


「そうなのかな? でも、アルくんは青の王国の最後の王様の孫みたいだよ。私も王家の血を引くらしいけど、赤の王国は、国王は多くの女性と結婚するみたいだから、私は、どんな身分かわからないし、釣り合わないよ」


 スライム神が保管してくれていた手紙は、キララが持ってるけど、母親の名前しか書いてなかった。それに、今も生きているとは限らない。赤の王国は、白い髪の赤ん坊を産んだ母親に対しても、残酷なことをするみたいだし。



「大陸に行ったら、ジュリちゃんのお母さんを捜そうね。たぶん、赤い髪のジュリちゃんと似てるだろうから」


(優しいな)


「うん、そのためにも、1連目の色を探さなきゃね」


「ここの集落に来れば、絶対に全部が埋まると思ってたんだけどな。キングなら、いいのかな?」


「キングシルバーさんとキングパープルさんには、色をもらったよ。既にある色だと、1連目は入れ替わりがないみたいだから、キングでもダメかも」


「何色が埋まってるんだっけ?」


「ベースコートと銀ラメは特殊だから、他は、紫、白、赤、黄、青、緑、ピンク、水色、黒だよ」


「うーむ、主要な色は埋まってるね。白は、クリアスライムだよね? ピンクはピンクスライムで、水色は何?」


「水色は、ウォータースライムだよ。黒は、ブラックスライムね」


「黒は、オレだな。ふふん。でも、そうなると難しいな。人間嫌いなスライムは、絶対に協力しないからな」


 黒い髪の人化したスライムは、得意げな顔をしたけど、すぐに真顔になっている。


(あっ、念話してる?)


 今の情報を、他のスライム達にも知らせているみたい。次々と難しい顔をして考え込むスライムが増えてきた。


 たぶん、他の色のスライムはたくさん居るだろうけど、キララも言ってたけど、人間を嫌うスライムの方が多いから、難しいのね。



「ねぇ、ジュリちゃん、人間を嫌ってないキングなら、大丈夫かなぁ? あたい、ちょっと思いついたかも」


 黄緑色の髪の人化したスライムが、遠慮がちに声をかけてきた。この子も、赤ん坊の頃に一緒に遊んでた子だね。


「他の色で、協力してくれるキングがいるの? でも、キングって、ちょっと怖いかも」


(あっ、先に情報共有してる)


 私に話す前に、他のスライム達の意見を聞いているみたい。難しい顔をしていたスライム達の表情が、次々と明るくなっていく。



「それは、オレも思いつかなかったな。というか、あの村長がキングだとは知らなかった」


「隠してるんだと思うよ。戦闘系のキングは素性を知らせてるけど、あの村長は、防御系だからさ」


「そうだな。防御系というか補助魔法系?」


「転移魔法に優れていると聞くよ。小島からの大規模な転移は、キングシルバーもやってるけど、あの村長の方が能力が高いって、キングパープルが言ってた」


「キングって長生きだけど、その中でも、古いよね」


(何? どこの村長?)


 スライム達は、まるで私にクイズを出しているかのように、その村長のことを話してる。まぁ、私は知らないだろうから、いいんだけど。



「ジュリちゃん、誰かわかった?」


「へ? 今のって、私にクイズを出してた?」


「たくさんのヒントを出したよ。ジュリちゃんは絶対に知ってると思う」


「私が知ってるの?」


 そう聞き返したのに、スライム達は何か別のことを考え始めたみたい。ハッとした顔のあと、また難しい顔をしてる。


「ジュリちゃんの立ち入りは、許可されるかな?」


「それはわからないよ。あたいなら、入っちゃダメって言われる」


「若いスライムは行けないよな。畏れ多い」


 意地悪をしてるつもりはないんだろうけど、早く答えを教えて欲しい。



「ジュリちゃん、ごめん。もちろん意地悪じゃないだ。ただ、ジュリちゃんが行けない集落だと、ガッカリさせてしまうからね。ちょっと方法を考えてみる」


 黒い髪の人化したスライムは、そう言うと、また他のスライム達と、相談を始めたみたい。


(あっ! 地底湖かな?)


 キララは入れるけど、あの場所にいるはずのキングの許可は得てないかも。


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