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7、村長の物質スライム

「二人とも、怪我は治ってるね?」


 黒い髪の人達が来てから数日後、オバサンは彼らを、草原の小川の近くに連れて来たの。これから二人の髪の色を変えるみたい。


 私は、小川の近くで、花のように小さなスライム達と遊んでいたから、偶然に目撃してしまったの。漁師のお兄さんも、足を小川で冷やしていたから、偶然に目撃してしまったの。


(本当は、偶然じゃないけど)



 オバサンが物質スライムを呼び出すと、草原がキラキラと輝いたように見えた。透き通った金ピカの物質スライムは、大きくて、とっても綺麗なの。草原にいるスライム達も見惚れてるよ。


 スライム神からオバサンに与えられたギフトは、【染色】と【脱色】なんだって。金ピカの大きな物質スライムを使えば、金色に染まるし、オバサンの身体のどこかに装備してる白い物質スライムを使えば、染まったものを元の色に戻すことができるみたい。


 オバサンは、9歳のときと12歳のときに、ギフトを与えられたって言ってた。ギフトって、二つも貰えることがあるのね。


 あっ、でも、金ピカの物質スライムは、万能ではないみたい。私の髪は染まるけど、すぐに水で落ちてしまうもの。相性が悪いと、上手く染まらないみたい。



「終わったよ。脱色してから染色を使ったけどね。小川の水で髪を濡らしてみな。どこまで色落ちするかが問題だ。ダークスライムの体液を吸収した変色は、簡単には戻せないし染まらないんだよ」


「はい! 村長」


「ありがとうございます、村長さん」



 オバサンは、物質スライムを見られることが嫌なんだって。その理由は知らないけど、お兄さんは、オバサンの髪色が白いことをバレたくないんじゃないかって言ってた。色を変えるギフトは、白い髪の人に与えられることが多いらしいよ。


 でも、どうして白い髪だと隠さなきゃいけないのかな。黒い髪の人達が来てからは、オバサンは、毎日、私の髪をスカーフで隠してくれるけど。


(あっ、お兄さんが……)


 偶然に目撃してしまったお兄さんが、私達を包む大きな白い布から出て、彼らに近寄って行っちゃった。



「あのさ、偶然、見かけたんだけどさ。俺が色落ちのテストをしてやろうか?」


「カール! 偶然じゃないだろ。ジュリの物質スライムを使って、二人でそこに隠れていたことは、わかってるんだからね」


(あーあ、バレてる)


 お兄さんは、ヘラっと笑って、金髪になった彼らの頭に、小川の水をかけた。たぶん、お兄さんは心配してるんだと思うよ。



 オバサンにバレちゃったから、クローズしておこう。私の物質スライムは、姿を隠してくれるけど、他の物質スライムには気配がわかるみたい。


 花のように小さなスライムには、物質スライムの気配はわからないみたいだけど、海辺の集落にいる人化できるスライムはどうなのかな。


 種族的に、物質スライムの方が知能が高いって、お兄さんが言ってたよ。でも、私の物質スライムはまだ子供だから、海辺の集落にいる人化できるスライムの方が、いろいろと優れてるんだって。



「村長と同じ出身国のイーグルの方が、効きが良いな」


「ダークスライムの体液を吸収した変色には、生まれたときの髪色は関係ないよ。吸収した量の違いだ。イーグルは、暗い黄髪になったね」


 イーグルさんの眉の色と同じくらいかも。薄茶色っぽい眉だもの。


「おっ! イーグルの髪色が、ほとんど元に戻ってるぞ。俺はダメみたいだな」


 ロックスさんの髪は、濃い赤茶色に見える。もう真っ黒じゃないけど、全く染まらなかったみたい。脱色は少し効いてる。


「あぁ、ロックスの方は、全然ダメだね。右足に受けた傷から、かなりの量の体液を吸収しちまったみたいだね」


「たいした傷じゃなかったんですけどね。でも、真っ黒じゃなくなったのは、ありがたいです」


(右足の傷?)


 あっ、そういえば、右足が包帯ぐるぐる巻きだったかも。お腹を押さえて倒れてたのは、海賊に捕まったときに斬られたんだっけ。



「村長、コイツらの状態はどんな感じだ? 海で働かせても大丈夫か?」


 お兄さんは、彼らをジッと見てるの。まだ、すっごく心配してるのかな。


「イーグルの方は、次の大型船が来るまで島の中にいる方がいいね。そうすりゃ、島の浄化作用によって、ダークスライムの影響は完全に抜けるだろう」


「あぁ、そうか。漁に連れていくと島から離れるからな。ということは、ロックスはどうするんだ?」


「ロックスは、時間を空けて、もう一度試してみようかね。染色は広範囲に作用するから、身体への負担を考えると、3ヶ月は空ける必要があるけどね」


「じゃあ、次の大型船では、島から出せないな。どうする? おまえら」


 お兄さんが二人にそう尋ねると、イーグルさんが困った顔をしてる。たぶん島から出たいけど、ロックスさんを置いて行けないんだよね。



「村長さん、俺も次の大型船で島を出ると、どうなりますか」


「ロックスも出るのかい? ダークスライムは、あちこちに潜んでいるからね。知らずに同じ空間に入ってしまうと、また一気に黒色化が進むよ」


「さすらいの荒野に立ち入らなくても?」


「あぁ、さすらいの荒野だけじゃないんだよ。ダークスライムに襲われたら、一瞬で真っ黒な髪になるけどさ。本当に恐ろしいのは、ジワジワと進む黒色化だよ。どの国にもダークスライムは潜んでいる。少しずつ影響を受けると、髪色が黒っぽく濁っていくんだ。ゆっくりと黒色化する人間は、心までドス黒くなるからね。脱色や染色をしても、無駄なんだよ」


 オバサンの話は難しいけど、なんとか理解できたの。ちゃんと治ってないと、どこの国も危険がいっぱいなのね。


 黒色化がひどくなって肌まで黒くなった頃には、中身がダークスライムになっていて、そのうちドロドロに溶けちゃうんだっけ?


 こないだ、お兄さんが追い払った海賊達は、黒い髪の人を捕まえるのは大国に売れるからだって言ってた。ドロドロに溶けちゃうと黒い爆弾にできるから? 


(ひどい……)


 ロックスさんの表情は引きつっているの。イーグルさんは、ずっと困った顔をしてる。二人は仲良しだから離れたくないよね。



「まぁ、とりあえず、イーグルは島の中で、他の集落への届け物の手伝いをしてもらおうか。ロックスは、カール達の漁を手伝うかい?」


 オバサンがそう言うと、二人は同時に頷いたの。次の大型船が来るまで時間があるから、ゆっくり考えればいいよね。



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