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15、キララと仕入れに行くよ

 私は、誕生日の翌日から、お兄さんにもらったかわいい魔法鞄を、外に出るときはいつも斜め掛けして持って行ってるよ。


 毎日身につけておく方がいいって、オバサンが言ったの。魔力が馴染むんだって。魔法鞄は、オバサンの生まれた黄の王国の特産品だから、いろいろと詳しいみたい。


 魔法鞄の中には、生き物は入れちゃいけないんだって。時間が止まる魔法が発動するから、中に入れた物は腐らないって言ってたよ。でも、生き物がその魔法を受けると、時間が止まらなくて、心臓が止まっちゃうんだって。


 それなのに、花のように小さなスライムは、魔法鞄に入ろうとするの。ダメって言ってもわかってくれないの。


 でも、キララが魔法鞄を開けないから、スライム達は入れないよ。キララって賢いよね。




「ジュリ、もうすぐ山の中の集落から、男の子が一人、ここに来るよ。どうしようかね」


 水汲みをして、オバサンの家に戻ったら、何人かの人化したスライムとオバサンが話をしていたよ。


「次の大型船が来るまでは、村長さんの家に泊まるんだよね? 私がいると良くないのかな」


「良くないというわけではないが、ここにいる理由を共有しておかないとね。とはいえ、ジュリが幼いからというのは、理由としては不適切だ」


 オバサンは、また人化したスライムの方を向いたよ。


(あっ、そっか!)


 オバサンは、人化したスライムの前では村長らしくしてるからわかりにくいけど、困ってるのね。



『ジュリちゃん、お店をしようよ』


(ん? お店?)


『そう! ボクとジュリちゃんのお店を、この海辺の集落に出店するんだよ』


(何を売るの?)


『これから売り物を集めよう!』


(お金は無いよ?)


『大丈夫だよ。ボクを呼び出して』


(うん、じゃあ、キララ、オープン)



 銀色の指輪から、無色透明な玉が消え、白い不思議な形の物が現れたの。かわいいパラソルが付いてる。


「ちょっと、ジュリ。これがキララかい? 屋台のワゴンのようじゃないか」


「うん、キララだよ。ここに出店しようって、キララが言ってるの。これから売り物を集めようって」


「なるほど、考えたね。ジュリに与えられたギフトは出店だから、まずは海辺の集落で店をしていることにするんだね」


「それなら、ジュリがここにいる正当な理由になるだろう」


(わっ、スライムがしゃべった)


 ほとんど話さないから、人見知りさんなのかと思ってたよ。たぶん、念話で話す方が楽だからだよね。



「そうだね。だけど、ジュリは何を売るんだい? ここに出店するということは、海辺の集落の人間が欲しがるものを売らないとね」


『村長、人間は水がないと生きていられない。ボク達は、山の中の湧水を売るよ』


 キララは、オバサンより、他のスライム達に聞かせてるんだと思うよ。


「えっ? 山の中の湧水って、どうやって汲みに行くんだい? あ、愚問だったね。しかし、どこの湧水を……」


『それは秘密だよ。今は、仕入れ先は話せない。商売の基本だよ。ジュリちゃん、仕入れに行くよ』


 キララは、いつもの白いテーブルに変わったの。私が座りやすい高さだからかな。


「村長さん、ちょっと行ってくるね」



 ◇◇◇



「わっ! キララ、真っ暗だよ」


『お店の灯りをつけるね』


 白いテーブルの端に小さな灯りがついたよ。足が地面に届かないと思ってたら、空中に浮かんでるみたい。


「ここはどこ? 浮いてる?」


『ここは、この島のあちこちにある泉の源となる場所だよ。スライム神が浄化した水が溜まってるんだ。泉に繋がる湖だよ』


 白いテーブルは、小舟に変わったの。そして、ゆっくりと降りて、湖に浮かんだよ。


「こんなとこに来ても良かったの? スライム神に叱られない? でも、入り口は? どこから入ってきたの?」


『ボクは、壁や岩山をすり抜けることができるんだよ。だから、他のスライムには入れない場所にも行けるんだ。入っちゃダメな場所なら、スライム神が入れてくれないよ』


 暗さに目が慣れてくると、壁がキラキラと輝いてるのが見えてきたの。


「キラキラしてて、綺麗だね」


『ここは、空気も綺麗だからね。ジュリちゃん、水汲みは終わったよ。次は、上に行こうかな』


「えっ? 私、バケツ持って来てないし、水汲みしてないよ?」


『ボクの店に置く売り物だから、ボクが作った水瓶みずがめに入れたよ』


 小舟の中には、白くてまん丸の水瓶みずがめがあったの。水を出す蛇口も付いてる。


「キララ、すごい! この水瓶みずがめ、すごくかわいいね」


『わぁい、ジュリちゃんに褒められた! 嬉しいな』



 小舟は、ゆっくりと動いてる。そして、壁にコツンと当たると、白い布が小舟ごと私を覆ったよ。


『ジュリちゃん、念のため、どこかにつかまっててね。一応、包んだけど、上は、風が強いかもしれないから』


「うん、わかった」


 両手で、小舟のふちをしっかりと握ったよ。



 ◇◇◇



「わっ! 高〜い!」


 小舟は、いつの間にか、四角いカゴに変わってたよ。空中に浮かんでたけど、ゆっくりと降りていったの。


『風は、大丈夫みたいだね。ジュリちゃん、外は見えてる? 今、この島で一番高い場所にある草原にいるよ』


「どこを見ても、青い海だよー」


『下を見てみて。小さな草原があるでしょ。安全な場所に降りるから、花を摘んでくれるかな? ボクは、まだ、花を摘むことはできないんだ』


「うん! わかった。お花も売り物になるの? わぁ〜、すっごく気持ちいいね」


 小さな草原に降りると、ワクワクしてきたよ。


『ここの花は、スライムにとっても薬になるんだ。あっ、いろいろな色の花を摘んでね』


「へぇ、じゃあ、海辺の集落からは遠いから、スライム達も喜ぶかな」


『うん、ここの草原に来ることができるスライムは少ないからね。あっ、その白い花は、もう少したくさん摘んで欲しいな』


「はーい、わかったの」


 花を摘んでいるだけで、とっても元気が出てくるよ。いい匂いのおかげなのかな。



『ジュリちゃん、今日はそれくらいでいいよ。ボクのカゴに乗って』


「うん! なんだか、お花を摘むと元気になるね」


『ジュリちゃんには、よく効くんだな。あっ、そっか。人間にとっては、花の匂いだけで、体力が回復する薬になるね。白い花は、スライムにとっても万能薬だからね』


「万能薬って何?」


『何にでも効く薬だよ。さぁ、海辺の集落に戻って、出店しよう!』


 キララは、カゴを白い布で覆ったの。ふわっと浮かんだと思ったら、もう海辺の集落に戻ってきたよ。



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