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116、大人の顔と子供の顔

「これで、完了かな」


 キララの転移魔法でクイーンホワイトさんの分身がいる通路へと移動し、ネイルがダークスライム状態だった子たちを、ふわしろスライムの状態に戻した。


 以前の私は、闇魔法の反転を使ったけど、ネイルは浄化魔法を使ってる。ふわしろスライムさん達は、ネイルに逆らう意思がないから、普通に浄化魔法で大丈夫だったみたい。



「うん、地下庭園に連れて戻るね」


 キララはそう言うと、状況がわからずボーッとしている真っ白なスライム3体と一緒に、地下庭園に戻った。




 ◇◇◇



「もう、終わったのか」


 アルくんは、キララとネイルの能力に驚いているみたい。私達が戻ると、キララに視線が集まっていた。そういえば、キララは、ここでは人の姿を見せてなかったかも。


「うん、キララとネイルは、すごいからね。あー、さっきは真っ白だったんだけど、少し濁ってきたかな」


「ふわしろスライムさんは、ここにいる人間の悪意を吸収してしまうのかもな」


 アルくんは、クリアスライムさんの分身に視線を移した。同じ白いスライムだけど、白さが違う。真っ白なスライムはギュッと詰まっているような白さだけど、クリアスライムさんの分身は、少し透き通ってるから、見分けがつく。


『アル、この程度なら問題はない。頻繁に浄化するのも疲れるからな』


「あっ、はい。わかりました。お任せします」


 アルくんは、もう、すっかり王族だね。大陸に来て、急に大人な表情になった気がする。




「じゃあ、アルくん。私達は、赤い丘を見に行ってから、島に帰るね」


 私がそう言うと、アルくんは急に子供の顔に戻った。


「ジュリちゃんには、本当に世話になったよ。でも、また会えるよな? また、来てくれるよな?」


(どうしよう……)


 アルくんは、今まで見せたことない複雑な表情をしてる。必死に涙を我慢して、でも不安でいっぱいなのかも。


(知らない人ばかりだからか)


「アルくん、山の中の集落の子を、連れて来ようか? ピードくんとサフィさんは、アルくんに仕えるんでしょ」


 私がそう提案すると、アルくんの表情は一瞬輝いた。だけど、首を横に振ってる。


「アイツらは、自力で大陸に来られるようにならないとダメだ。山の中の集落で、長老様たちに守られている子供だからな。今、ここに連れて来てもらっても、たぶん役に立たないよ」


「そっか。アルくんは、2年くらい修行したもんね」


 私がそう言うと、アルくんは黒い髪の人化したスライムの方に、視線を移した。たぶん、彼と離れることも、辛いんだろうな。



 すると、黒い髪の子が口を開く。


「アルは、この場所から、青の王国を再建するのか?」


「はい、ブラックさん。旧王城の地下庭園は残し、この上に、新たな王城を築きたいです。あっ、急に王城なんて作れないですが」


「そうだな。町もないのに、城だけを作っても意味はない。ここは、さすらいの荒野と呼ばれる荒れ地だろ? まずは、小さな町を作ることだ。人間が集まるようになれば、集落から町になるんだろ?」


「はい。まずは、小さな町づくりからですね。人間もそうですが、ブルースライムも集めないといけないですよね」


 アルくんと黒い髪の子の話は、青い髪の人達もしっかりと聞いてる。



「青の王国には、ウォータースライムもいたんじゃないですか? ブルースライムの方が多いかもしれないが」


 黒い髪の子は、クイーンホワイトさんにそう尋ねた。


「ええ、青の王国は、多くの泉がある美しい国でしたよ。ウォータースライムもいました。青の王国が滅んだとき、小島に移ったスライムも少なくありません。そのため、この地は荒野と呼ばれ、砂漠が広がることになりました」


(ん? 何?)


 黒い髪の子は、何かを思いついたのか、私の顔を真っ直ぐに見つめた。



「ジュリちゃん、いい提案がある」


「ん? どんな提案?」


 私がそう尋ねたのに、彼はアルくんと、ジャックの役割を得たグレー髪のオジサンの表情を確認してる。


「アルは、これから町を作ろうとするだろ? そして、そっちのブラックスライムの変異種は、大陸をまわると言っているが、上手くやらないと、ダークスライムが増えるスピードに負けると思うんだ」


「ん? うん。まだら模様のスライムさんは忙しくなるね。アルくんもだけど」


「そこで、提案だ!」


 黒い髪の子は、周りを見回して、自分の話を聞かせようとしてるみたい。それに、まだ何も話してないのに、もうドヤ顔をしてる。それほど自信のある提案なのかな。



「うん、何?」


「アルが再建する国には、人間が集まるシンボルが必要だろ。他のスライムから聞いたが、以前の青の王国には、スライム神をまつる神殿があったらしいぜ」


「スライム神の神殿?」


「あぁ、スライム神が大陸にいるわけじゃないが、亡き国王が、建てたらしい。そのおかげで、ブルースライムだけでなく、ウォータースライムも、青の王国に集まってきたんじゃないかな」


(これは、彼の予想かも)


 ふわふわ浮かんでる女の子……クイーンホワイトさんに視線を向けると、大きく頷いていた。


「神殿を作ろうってこと? 小さな町もこれからなのに」


「ジュリちゃん、ここの上の地上に、普通に町を作ろうとしても、この付近にいる人間に潰されると思うよ。地下庭園が残っていたのは、クイーンホワイトの頑張りもあるが、ダークスライムがいるからだ」


「そっか。今は、大陸のあちこちで戦乱中だもんね」


 私がそう返すと、黒い髪の子は、アルくんの方を見ていた。アルくんが決意するのを待っているみたい。



「ブラックさん、俺は、神殿がどういう物か、わかりません。でも、地下庭園にある小屋を地上に並べるだけでは、ダメだということなんですね」


 アルくんが会話に参加すると、黒い髪の子は、得意げな表情を浮かべている。


「あぁ、ダメだ。だよな? カール」


 今度は、漁師のお兄さんにも、話を振ってる。


「そうだな。今の状況が変わらない限り、さすらいの荒野に、国を再建することは困難だと思う。だが、神殿というのも、唐突すぎるように聞こえる。青の王国があった時代とは違って、今は、スライム神を知らない人間もいるからな」


「だから、神殿を作るんだよ。そこで、人間を惹きつける奇跡を起こせば良いんだ」


(奇跡って何?)


 黒い髪の子は、私の顔をジッと見た後、クイーンホワイトさんの方を向いて、ニッと笑った。



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