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113、ジュリが拒む理由

「ジュリちゃん、なぜだ? あっ、居場所がないと思っているなら、心配はいらない。物質スライムを経由して、昨日あの後のことを聞いているよ。新国王も、王女ジュリエッタ様の帰還を望んでおられるそうだ」


 漁師のお兄さんは、新国王に仕えてるんだっけ。物質スライム同士の念話は、通信機器の代わりにもなるのね。


「私には、大陸での記憶は何もないもの。お母さんの手紙はあるけど、それだけだよ。ずっとジュリとして、スライムに囲まれて暮らしていたから、私の家はスライム神の島だよ」


「だけど、アルは、大陸に移住する決意をしたぜ?」


「アルくんは、赤ん坊のときに海に捨てられたわけじゃないでしょ。私に与えられた物質スライムは、島を出て行く必要はないという証拠みたいなものだよ。それに、キララとネイルは、強いスライムがたくさんいるスライム神の島の方が好きだと思うよ」


(伝わったかな?)


 お兄さんは難しい顔をしてる。だけど、私の気持ちも理解できるんだと思う。


 私は大陸での記憶はないし、たぶん、キララやネイルの能力は、人間の領土である大陸では恐れられると思う。


 赤の王国の新国王が私を受け入れたいと言っているなら、それは、人間としての私じゃなくて、強力な物質スライム……強力な武器を、味方につけたいんだと思う。




「海辺の村長が、早起きしてパンを焼いてくれたので、皆さん、もらってください。キララのワゴンに出します」


 私がそう言うと、キララの屋台ワゴンから、焼きたてパンの香りが漂ってきた。抱っこしていた白い髪の小さな女の子が、足をバタバタさせてる。


(あっ、飛び降りた)


 私の腕の中には、白いスライムが残されてる。全く重くないからいいけど、クイーンホワイトさんに渡すべきかな? でも、私の腕の中にいるってことは、クイーンホワイトさんを回復するために来たわけじゃないのかも。



 ポテポテポテポテ


 白い髪の小さな女の子は、キララの屋台ワゴンに近寄ると、ぴょんと飛び跳ねて、パンを掴んで、ドヤ顔をしてる。


 ポテポテポテポテ


 そして、青い髪の人達の中に歩いて行くと、自分よりも少し大きなチビっ子に、パンを差し出した。

 


「おいしいよ、じょうずにたべてね」


「あ、ありがとう」


 チビっ子が受け取ると、また、私にドヤ顔を見せた。


(褒め待ちかな)


「ふわしろスライムさんは、優しいね」


「うんっ!」


 ニッコニコな笑顔を浮かべ、また、キララの屋台ワゴンに戻ってくると、ぴょんと飛び跳ねてパンを掴み、別の子供のところへ、ポテポテと歩いて持っていく。


 硬い地面と洞窟という場所のためか、オバサンの家にいたときより、ポテポテ音が反響するのが楽しいみたい。




 オバサンが焼いてくれたパンを配り終えた頃、グレー髪のオジサンが、ふわふわ浮かぶ女の子の方へと近寄っていくのが見えた。


 白い髪の小さな女の子は、アルくんも一緒に、青い髪の人達の中で、ニコニコしてる。クイーンホワイトさんは、青の王国の生き残りを守っていたから、彼らの中にいるのが楽しいんだね。


 黒い髪の人化したスライムは、ずっと黙っているお兄さんの側にいる。何か話しているのかもしれないけど、声は聞こえない。


(あっ、タオルや服)


 オバサンに預かった物を渡さなきゃと思い出すと、キララのワゴンの上に出てきた。私は、それを草原に置いた。



「アルくん、オバサンから預かった荷物は、ここに置いておくね。私は、赤い丘の様子を見てから、島に帰るよ」


 私がそう言うと、キララは、草原に食料をドサッと出した。昨日もたくさん渡してあるけど、アルくんの分のつもりで、キララが大量に出したんだと思う。


「えっ? ジュリちゃんは、もう帰るのか。赤の王国には……」


「アルくん、私の家はスライム神の島だよ。私は、海に捨てられたんだから」


 私は、白い髪の赤ん坊を海に流す判断をした親を恨んでいるわけじゃない。手紙からは、母親の愛情も感じた。だけど、赤の王国が私を武器として利用したいことが明らかだから、私は大陸に居るわけにはいかない。


 赤の集落の人達との関わりから、赤の王国の考えも理解しているつもりだし、そもそも堅苦しい生活なんてしたくない。


 アルくんは、私の言葉に反論できないみたい。私が嫌な理由をつけているからだよね。でも、これでいい。私は、私を捨てた人達の元には帰らない。




「あの、ジュリさん、僕から話があるんです。皆さんも聞いてもらえますか」


 クイーンホワイトさんと何かを話していたグレー髪のオジサンが、私の方へ近寄ってきた。


(あれ?)


 気のせいかもしれないけど、昨日より少し若返ってる。青い髪の人達は、彼がダークスライムだったことがわかっているから、警戒してるように見える。



「ジュリさん、昨夜、僕は、スライム神と話をしました。スライム神からは、ジュリさんやアルさんがダークスライムの制圧に失敗したら、リセットするつもりだったと言われました」


(そんなことを言っていいの?)


 私が抱っこしてる白いスライムも驚いたのか、プルプルと震えてる。あっ、この子は、スライム神に声を伝えるために、ついてきたのかも。私はキングシルバーさんのイヤリングも付けてるけど。



「リセットって何?」


 アルくんが冷たい口調で尋ねた。グレー髪のオジサンがギリギリごまかして話したのに、聞いちゃダメだよ。


「アルさん、僕の口からは言えません。僕は、スライム神から役割を与えられました。ジャックを任されたのです」


(ジャックって何?)


 ふわふわ浮かぶ女の子だけが、驚いた顔をしてる。


「ジャックの意味もわからない。わからないことだらけで、何を話したいんだ!?」


 アルくんは、今にもグレー髪のオジサンに剣を向けそうな、なんだか嫌な雰囲気。


 すると、黒い髪の人化したスライムが口を開く。



「私から話す方が良さそうだな。アル、そんな顔をするな。ジュリちゃんは、だいたいわかってるよな? スライム神のリセットとは、無かったことにすることだ。つまり、大陸を消し去ることを、考えていたみたいだぜ」


 シーンと静まり返った。みんな倒れそうな顔をしてる。


「大陸をってことは、大陸に住む人間も……」


「あぁ、人間の悪しき支配欲から、戦乱が続いている。キッカケを与えたのは人化するスライムだが、もうどうにもならない状態まできてるだろ。このままなら、戦乱で死ぬかダークスライムにすべて飲み込まれるか、という状況だ。もう、悪意や恨みの連鎖は、止められないだろ」


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