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112、アルくんの別れの挨拶

「ジュリ、気をつけていくんだよ。ジュリ達の弁当も用意した。アルは、そのまま大陸に残ると言っているよ」


 翌朝、朝ごはんを食べた後、オバサンが焼いてくれた大量のパンを収納してもらおうとキララを呼び出したとき、オバサンが驚きの発言をした。


「アルくんは、もう、島に戻らないの?」


「俺は、青の王国の生き残りの民を導く義務があるからな。本当なら、スライム神からギフトを得た時に、大陸に渡る決まりになっている。遅すぎるくらいだよ」


「そっか。さみしくなっちゃうね」


 昨夜、私が寝た後、オバサンとそういう話をしていたのね。アルくんは、青の王国の王族だし、まだ子供に見えるけど成人だって言ってたから、この決断は当たり前のことなのかもしれない。


「ジュリちゃんは、大陸と島を行き来できるじゃないか。村長や爺ちゃんとは、もう簡単には会えなくなるけど」


(確かに)


 アルくんは、オバサンに深々と頭を下げた。別れの挨拶は、昨夜のうちに終わってるみたい。



「スライムや爺ちゃんに挨拶して来る」


 アルくんがそう言って外に出ていくと、オバサンが、キララのワゴンに、タオルや男物の服を乗せた。


「村長さん、これはアルくんに渡すの?」


「ジュリが上手く渡してやってくれるかい? 昨夜は断られたんだけどね。アルは、ほとんどお金を持ってないはずなんだ」


「わかった。こんな荷物は、アルくんが持てないからかもしれないよ。小さな魔法袋しかないみたいだし」


 私がそう指摘すると、オバサンはハッとした顔をしてる。アルくんの物質スライムが剣なのを忘れていたのかも。オバサンは、どこかに収納できるもんね。



「ジュリは、戻ってくるんだよね?」


(ん? なぜ?)


 オバサンは不安そうに見えた。


「うん、戻って来るよ? どうしてそんなことを聞くの?」


「いや、それならいいんだよ。忘れておくれ」


(何だか、変だな)




「ジュリちゃん、待たせたな。行こうか」


 アルくんが、グレー髪のオジサンと黒い髪の人化したスライムを連れて戻ってきた。キララは慌てて、タオルや服を収納したみたい。


(あれ? お友達?)


 白い髪の小さな女の子は、話の途中に、どこかに出掛けていたけど、小さな白いスライムを連れて戻ってきた。


「うん、キララ、海岸に行くよ。ふわしろスライムさん、その子はどうしたの? お友達?」



『ジュリ、私は、大きなスライムの草原にいるクリアスライムだよ。正確に言えば、その分身だ。一緒に連れて行ってくれるかい?』


「あっ! 私に色をくれた大きな白いスライムさん?」


『あぁ、そうだよ。役に立っていて何よりだ』


 確か、クイーンホワイトさんの子供だったはず。クイーンホワイトさんが力を失っているから、回復に行きたいのかも。


「わかったよ。一緒に行こう」


 私がそう言うと、白いスライムは、白い髪の小さな女の子の腕の中にぴょんと飛び込んだ。だけど……。


(ありゃ……)


 まだ人化に慣れていない女の子は、その勢いに耐え切れず、尻もちをついて目に涙を浮かべてる。


「ふわしろスライムさんに抱っこは難しいね。私が抱っこしようか」


 そう言うと、白い髪の小さな女の子は、私に抱っこを要求するように片手を伸ばした。私はスライムを抱っこしようかと言ったんだけどな。


「ぼく、ジュリエッタといっしょがいい」


(仕方ないな)


 私は、白いスライムを抱えている小さな女の子を、頑張って抱っこした。白いモコモコを着ているから、ぬいぐるみを抱きかかえているような感じだけど、白いスライムの分の重さは感じない。



 私達は、海岸にいるキララの気球に乗り込んだ。ネイルは、腕輪から出たいとは言ってこない。行き先が安全だってことかな。


「村長、お世話になりました」


 キララは、ちゃんと、アルくんがお別れを言うのを待ってたみたい。


「じゃあ、行ってきます」


 私がそう言うと、気球はふわっと空に浮かび、転移魔法の光に包まれた。




 ◇◇◇



「皆さん、こんにちは」


 キララは、昨日の地下庭園に着地した。昨日、ワゴンが出ていた場所に到着したみたい。


「わっ! 本当に戻って来られた!」


(ん? 嘘だと思われてたの?)


 青い髪の人達は、続々と集まってくる。何だか、昨日とは雰囲気が違う。ご飯を食べて元気になったのかも。


 私達が気球から降りて、キララが屋台に変わった頃には、昨日見たよりも多くの人がいると感じた。昨日は出て来なかった子供の姿もある。


(あっ、お兄さん)


 漁師のお兄さんも、ふわふわ浮かぶ白い髪の女の子と一緒に、どこからか現れた。



「ジュリちゃん、キララ達に言われて、この場所を守っていたぜ。冒険者らしき人間のグループが洞窟に潜ってきたが、それ以外は何もなかったよ」


「そっか、お兄さん、ありがとう。あっ、赤の王国に戻らなくて大丈夫だった?」


「それは問題ないぜ。俺は、王家の兵じゃないからな。俺以外にも、物質スライム持ちはいる。昨日、会っただろ?」


「うん、そうだったね。あっ、土の壁はそのまま放置してたから、消さなきゃね」


 緑の帝国の軍隊を止めようとして、大きな土壁を作ったことを思い出した。


「いや、あれは、あのままで良いよ。状態異常の術の効果が切れた後、緑の帝国は引き返したようだ。あの道以外にも行き来できる道はあるからな」


「そっか。でも平地は、あの土壁で塞いじゃったよね。山道を通れば行き来できそうだけど」


 私は、地理を正確に覚えていた。たぶん、キララがサポートしてくれているんだと思う。


 お兄さんは少し驚いた顔をしたけど、キララの屋台を見て頷いている。キララが大陸全体をサーチしたことを伝えたのかも。



「カールさん、俺は、村長に挨拶してきました」


 アルくんがそう話すと、お兄さんは大きく頷いた。


「アルは、ここに移住することにしたんだな」


「はい。スライム神の島には、俺の側近になることを希望する子もいます。ここに隠れ住んでいた民と一緒に、いつか、青の王国を再建したいと思っています」


(あれ? 静かだな)


 アルくんの爆弾発言に、みんな驚くかと思ったけど、青い髪の人達は静かに話を聞いてる。



「お兄さん、もしかしてアルくんのことを、みんなに話した?」


「あぁ、話したぜ。ジュリちゃんが、赤の王国の王族だということもな。ジュリちゃん、いや、王女ジュリエッタ様、赤の王国へのご帰還を、騎士としてお供いたします」


 お兄さんはそう言うと、私に頭を下げてる。


「ちょっと待って! 私は、赤の王国に帰還なんてしないよ?」


皆様、いつも読んでくださってありがとうございます。

月曜日は、お休み。

次回は、12月30日(火)に更新予定です。

よろしくお願いします。

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