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111、かわいい生き物

 晩ごはんの後、今日の出来事の説明はアルくんに任せて、私は、小さな女の子と一緒にお風呂に入った。


 花の匂いのする石けんで、頭を洗ってあげると、小さな女の子の髪には、花の香りがついちゃった。人化していても吸収しやすいみたい。頭の帽子に見える部分が吸収するのかも。


「このみずは、スライムのみず?」


「うん、そうだよ。お湯になってるから不思議だよね。海辺の集落には、いろいろなスライムがいるよ」


「にんげんは、すくないね。でも、ジュリエッタのスライムよりすぐれたスライムは、いないよ」


「キララとネイルは、すごい子だからね」


「うん、こわいスライムだね」


(怖いのか……)



 お風呂からあがると、オバサンが小さな女の子の分の着替えを置いてくれていた。海辺の集落には、たくさんの子供が流れ着くから、子供服はたくさんのストックがあるみたい。


(あれ?)


 さっきまで裸だったのに、タオルで身体を拭くと、小さな女の子は服を着ているように見えた。


「いつ、服を着たの?」


「ん? でてきた」


「へぇ、面白いね。村長が子供服をいくつか用意してくれてるけど……」


(あっ、裸になった)


「それをきてみたいっておもったら、きえちゃった」


「便利だね。じゃあ、着てみようか。どれがいいかな? やっぱり可愛いのがいいかな」


「うん! かわいいのがいい」


 いろいろと着せてみたけど、一番最初に着た物になった。少し大きめの白いモコモコした生地の、フードつきのスエットのような上下。フードが気に入ったらしい。


(着ぐるみみたいだな)


 赤ちゃんというか幼児用の服だから、素材も柔らかくて着心地は良さそう。


 靴も少しブカブカだけど、履かせてみると床の上に立ってくれた。そういえば、クイーンホワイトさんも、分身のこの子も、靴がなかったかも。



 ポテポテポテポテ


(ふふっ、かわいい)


 不思議な音が鳴るのは、靴のせいかな。その音も気に入ったらしく、小さな女の子は、ポテポテと食堂へと歩いていく。



「なんだい? このかわいい生き物は」


 オバサンは、メロメロになってる。白いモコモコな着ぐるみを着て、ポテポテと歩き回る2〜3歳の女の子は、完全にアイドルだね。


「ジュリエッタと、えらんだよ。これがかわいいの」


 フードをつまんでクルクルポテポテと回っている姿に、アルくんも、ぽわぁ〜っとした顔をしてる。



「ジュリ、明日も大陸に行くんだね?」


「ん? うん、青の王国の生き残りの人達に、そう言ったからね。それに、お兄さんを地下庭園に置いてきちゃったし」


「お兄さんって、誰のことだい?」


(忘れたの?)


 すると、アルくんが口を開く。


「赤の王国の英雄カールさんですよ。俺達は何も言わずに戻ってしまったけど、地下庭園を守ってくれていると思います」


「そうかい。じゃあ、明日は早起きしてパンを焼こうか。昨夜も大量に焼いた気がするんだけどね」


(あっ、あの二人がいない)


「村長さん、オレンジ色の髪のオジサン達は、戻ってきてないの?」


「ジジイとタームかい? しばらくは、山の中の集落を手伝うらしいよ。子供の数が増えすぎているからね」


「そっか、その方が良いと思うよ。オレンジ色の髪のオジサンは、子供達がいると楽しそうだったし」


「まぁ、そうだね。ジュリ、その子はどこで寝るんだい?」


 オバサンは、ポテポテと歩き回る白い髪の小さな女の子に、視線を向けながらそう尋ねた。


「私の部屋じゃないと眠れないかも」


「ジュリのベッドで、一緒に寝られるかい?」


「大丈夫だと思うよ。ふわしろスライムさん、私の部屋に行くよ」


「ぼくは、ジュリエッタといっしょがいい」


「もちろん、一緒に寝るよ。こっちだよ。歩ける?」


「うんっ」


 まだ寝るには早いけど、たぶん、オバサンはアルくんと話したいのだと思う。私が部屋へと歩いていくと、ポテポテと音を立てて、白い髪の小さな女の子がついてきた。




 ◇◆◇◆◇




 キララの気球が去った直後、地下庭園に置き去りにされたカールは、苦笑いをしていた。カールの物質スライムを経由して、留守番を頼むと、キララ達が言ったためだ。



「皆に紹介しますね。彼は、赤の王国の英雄と言われているカールです。彼も、ジュリエッタと同じく、スライム神から物質スライムを与えられていますよ」


 クイーンホワイトは、地下庭園で隠れ住んでいた青い髪の人間達に、カールを紹介した。


「ふわしろスライムさん、物質スライムと何ですか? 我々には、その知識がありません」


「そうでしたね。物質スライムは、スライム神の島に流れ着いた子供に、スライム神が加護として与えているものです。カールは、槍ですね。物質スライムを使って大陸を正常化することを、スライム神は期待したのでしょう」



 青い髪の人達は、ジュリ達が去り際に置いて行った、大量の食料をチラチラ見ながら、話を聞いていた。カールは、彼らの視線に気づき、口を開く。


「ジュリちゃんが置いて行った食料は、皆が必要な分を家や倉庫に収納してくれ。ロクに食べてないんだろ?」


「大変ありがたいが、後で何かを強いられるのも困る。しかも、こんな色とりどりの食料には、戸惑いもある」


「あぁ、そんな心配はいらないぜ。そういえば、アルがきちんと自己紹介をしてなかったな。青い髪の子がいただろ? 彼は、青の王国の王家の血を引いている。青の王国を再建したいと言ってたぜ」


 カールがそう話すと、青い髪の人達の表情は、一気に輝いた。


「なんと! 亡き王の子孫は、すべて殺されたと聞いていたが、生きておられたのか」


「あぁ、スライム神の島には、他にも青い髪の子がいたな。その子は王族ではないみたいだったが、元気な子だよ。俺が知っているのは、2年程前のことだが」


 ポロポロと涙を流す人もいる。地上に買い物に出たときに、王族の生き残りを必死に探していた者達だろう。



「皆さん、まずは、たくさん食べてください。ジュリエッタ達は、明日、また来てくれるでしょう」


「ふわしろスライムさん、本当に食べても大丈夫なのですか。緑の野菜を食べると、髪が緑色になったりしないでしょうか」


「ジュリエッタやアルフレッドの髪色は、緑色になっていましたか? 食べ物は髪色に影響はないでしょう」


 クイーンホワイトがそう伝えると、彼らは競うように山積みの食料を、それぞれの保管場所へと移動させた。



「俺は、ジュリちゃん達が戻るまでは、ここの護衛をするよ。皆は心配しないで、普通にしてくれ」


 カールがそう言うと、彼らはホッと笑顔を見せた。


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