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11、物質スライムが心配してるの

「緑の集落で、昼食を食べてきたのかい?」


 家に到着すると、オバサンは何も話してないのに、ごはんを食べたことを言い当てたの。漁師のお兄さんが、オバサンに何か合図をして、スカーフを渡したよ。



「どうしてわかったの?」


「ジュリの服に、ソースが付いてるからね。あー、手もベトベトじゃないか」


 オバサンは、私の手を、濡れタオルで拭いてくれたよ。よく見ると、肉団子や丸い芋が飛んできた跡や、フォークで刺したときに飛び出した肉汁みたいなシミが、シャツにたくさん付いてる。


「ちょっと難しかったの」


「ジュリ、すぐに服を着替えてきな。お腹がいっぱいなら、窓を開けて昼寝をすると、風が気持ちいいよ。そのまま寝ちゃダメだよ? ベッドにソースが付くからね。服を着替えてからだよ?」


「はーい、わかったの」



 ◇◇◇



 私は、自分の部屋に戻って、服を着替えたよ。緑色だらけの蒸し物は、とっても珍しくて美味しかった。また食べたいと思ったけど、行けないよね。私の髪色は、嫌われてるみたいだから。


 漁師のお兄さんは、白い髪は、異世界からの転生者の証だって言ってた。転生者って何なのかな? 赤の王国で生まれたロックスさんは、私から目を逸らしてた。私が呪われた子だから怖かったのかな。



『ジュリちゃん、元気を出して』


「私は、元気だよ」


 銀色の指輪についた無色透明な玉が、キラキラと光ってる。物質スライムは、私を心配してくれてるみたい。



 窓を開けると、部屋の中に爽やかな風が入ってきたよ。私の部屋の窓からは、海は見えないの。人化するスライム達の家が並んでいるのが見えるよ。


『ジュリちゃんは、呪われてないよ。大丈夫だよ』


「でも、ロックスさんは、目を逸らしたよ。王国で生まれた人は、白い髪が怖いんだよ、きっと」


『ロックスは、びっくりして言葉が見つからなかったんだよ。16歳といっても、まだ子供だからね』


「ロックスさんは、大人だよ」



 王国生まれじゃない人も、白い髪は怖いのかな。緑の帝国の人は、呪いは信じてないって言ってたけど。


 私が赤ん坊のときに海岸で泣いていたのは……私の髪色が怖くて、お父さんとお母さんが、私を捨てたのかな。白い髪の赤ん坊は殺されるって言ってたっけ。私を海に捨てて、殺そうとしたのかな。


『ジュリちゃん! しっかりして!』


 物質スライムが、また心配してる。


『ジュリちゃん、お昼寝する方がいいよ。ベッドに入って、少しお昼寝しよう』


「うん、そうだね」


 私は、ベッドに転がったの。ふわっと優しい風が吹いてきたから、なんだか涙が出てきちゃった。




 ◇◆◇◆◇




「カール、どういうことか説明しな」


 村長は、二人に、冷たい視線を向けていた。


「俺が、悪いんです。カールさんから頼まれていたのに、まさかジュリちゃんがスカーフを取られるなんて、予想もできなかったし、それに白い髪を見て動けなくなって……」


 ロックスは、小さな声でそう話すと、ガクリとうなだれた。


「俺は、緑の村長に呼ばれて、席を外したんだよ。そんなに長い時間じゃない。緑の集落なら大丈夫だと思っていた俺の落ち度だ。なぜスカーフを取られたのかは、わからないが」


「ジュリが、何かしたのかい?」


「ジュリちゃんは何もしていません。ただ、床に落とした料理を拾っただけです。3人の男がジュリちゃんの背後に立ち、話しかけたんです。緑の集落では髪を隠す必要はないと言って、突然スカーフを取ったんですよ」


 ロックスがそこまで話すと、村長は深いため息を吐いた。


「緑の集落は、自由気ままに暮らす人間が多いからね。ジュリには、大陸へ渡る前に世間を教えなきゃいけないが……私の判断が甘かったよ。あー、やはり、そうなったか」


 村長は、どこからかの念話を受けた様子。



「ジュリちゃんの様子ですか」


「あぁ、ジュリの物質スライムが、昼寝させたみたいだ。ジュリは、自分は呪われているから両親が海に捨てて殺そうとしたと言ってるみたいだ。かなり悪い傾向だよ」


 村長の言葉に、ロックスは強い衝撃を受けていた。彼は、白い髪の子は呪われているという噂を信じていた。目が合うと呪われるという恐怖心さえ、あったようだが……。


「緑の集落の奴らが、ジュリちゃんに、その歳までよく生きていたな、と言ったんです。俺は、そこで会話を止めるべきでした。ジュリちゃんが、なぜかと聞いたとき、奴らは、王国では、白い髪の赤ん坊は殺されるからだと言った。緑の帝国では、呪いは信じないから軍事利用すると言っていて……」


 ロックスは、自分を強く責め、言葉の続きがうまく出てこない。


 村長とカールも、自分の失敗だと後悔していた。二人は、緑の集落で、まさかジュリのスカーフを取る人間がいるとは考えていなかったようだ。



「ロックスは悪くないよ。ジュリの髪色を見せてなかったから、咄嗟のことで身体が動かなくなったんだね。私が生まれた頃は、ここまでひどくなかったが、白い髪は気味悪がられた。この悲劇は、青の王国がダークスライムに滅ぼされてから、始まったんだ」


「青の王国って何ですか」


 ロックスの問いに、カールが口を開く。



「冒険者なら常識だぞ。少し前までは、大陸には、4つの大国と無数の小国や集落があったからな」


「大国は、3つでは?」


「緑の帝国と、赤の王国、黄の王国、そして、広大な青の王国だ。青の王国の最後の国王が白い髪だったらしい。どういう戦いかは伝わっていないが、広大な青の王国が、ダークスライムに飲み込まれたんだ」


「そんなに大きな国なんて、どこに」


「青の王国があった場所は、今は、さすらいの荒野と呼ばれている。ダークスライムは、洞窟から地底に潜って、大陸全体に生息域を広げているからな」



「あっ! 名前がわからないけど、漁師の髪が青い人は、その青の王国の出身なんですか」


 カールは答えずに、村長に視線を移した。


「漁師をしている彼は、名を言わないだろ? 私も、名乗らない。名乗らない人間には事情があるんだよ。気になるなら、本人に聞きな。出身国くらいなら教えてくれるだろうよ」


「わ、わかりました」


「それと、ロックス。ジュリへの態度を変えるんじゃないよ? あの子にとって、この島にいる知り合いは、みんな家族なんだからね」


 村長の強い口調に、ロックスはしっかりと頷いた。


「俺も、幼い頃から親がいないので、ジュリちゃんの不安がわかります。もう失敗はしません」



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