107、ジュリ、ダークスライムと話す
キングシルバーさんとの念話を、スライム達は聞いていたみたい。物質スライムを経由して、漁師のお兄さんとアルくんにも、伝わったかな。
大陸は人間の領土だから、キングシルバーさんが何かを決めることは、越権行為になるのね。だけど、私に考えてくれと言われても、判断できない。
ダークスライムになる前の状態に戻っている、黒と白のまだら模様のスライムは、外に出ると、また人間の悪意を吸収してダークスライムになってしまうなら、討伐するしかないのかもしれない。でも、選択肢がないなら、キングシルバーさんは、私に判断を委ねないよね。
(孤独に弱いグリーンスライムか)
黒と白のまだら模様のスライムは、グリーンスライムの変異種らしい。クイーンホワイトさんの分身をたくさん喰ったから、まだら模様だけど、元は黒いスライムだったみたい。
「アルくん、どうしたい?」
「俺は、討つべきだと思う。ジュリちゃんの不思議な魔法で、あの個体が吸収したゴミは消えたみたいだけど、外に出ると、また吸収するんだろ?」
(やっぱりね)
アルくんとしては、この場所には置いておきたくないよね。ここは、ダークスライムによって滅ぼされた青の王国の旧王城跡だもの。
「お兄さんの意見は?」
「あぁ、やはり、外には出せないな。ダークスライムになる前の状態は、ブラックスライムの変異種だから、今なら弱点属性がある」
(お兄さんも、かぁ)
二人が討伐を望んでいることは、黒と白のまだら模様のスライムも、わかっているみたい。たぶん、キングシルバーさんも知ってたよね。その上で、私に考えてって言うってことは……。
キララとネイルの顔をチラッと見ると、力強く頷いてくれた。二人は、私に任せるってことね。
だけど、黒い髪の人化したスライムは、ちょっと複雑な表情をしてる。同じブラックスライムだから、仲間意識があるのかも。あっ、でも、あの子は、赤いスライムからブラックスライムになったから、根本的には同じ種族ではないけど。
クイーンホワイトさんの分身は、小さな女の子の姿をした子は何も考えたてなさそうだけど、この地下庭園を守っていた真っ白なスライムは、迷っているように見える。
青の王国の最後の国王と、力が弱くなって人間の悪意を浄化できなくなったクイーンホワイトさんは、ダークスライムを討つために手を組んだらしいけど。
(あっ、他にもいるよね?)
ダークスライムは、かなり数が増えたって聞いた。だから、この個体だけじゃない。大陸全体に広がってしまってるなら、相当な数のダークスライムがいるはず。
「私、ちょっと話をしてくるよ」
私がそう言って、黒と白のまだら模様のスライムの方へと歩き始めると、キララとネイルが、私と手を繋いだ。
アルくんも来ようとしたけど、お兄さんが止めてる。アルくんは知らないと思うけど、白い髪じゃないから、ダークスライムの影響を受ける。つまり、逆に言えば、ダークスライムになる前の姿に戻った個体に、影響を与える可能性がある気がする。
黒と白のまだら模様のスライムが、全く動かないのは、近寄ることで、また濁ることを恐れてるんだと思う。だから、私が怒るかもしれないって、考えてたのかも。
「まだら模様のスライムさん、人間の言葉は話せる? スライムの言葉でも、私は理解できるよ」
(ベースコートがあるからね)
『僕は、人間の言葉もわかる。今は、わかるけど、身体がドロドロになったらわからなくなる』
「きちんと話せるね。私は、ジュリ。スライム神の島から来たの。赤ん坊の頃からスライム神の島にいるから、ダークスライムのことは、よくわからない。だから、教えてくれる?」
『ジュリさんは、あの青の国王とは違って、僕の話を聞こうとしてくれるんだね。いいよ、何を知りたいの?』
黒と白のまだら模様のスライムは、プルプルと小刻みに揺れている。緊張してるみたい。近寄ってみると、大きなスライムの草原にいるスライム達より、ひとまわり大きいことがわかった。
「ダークスライムは、あと何体いるの?」
『それは、難しい質問だよ。僕が感知できる範囲には、あと8体いるけど、大陸全体だと、すごく多いよ』
「感知できる範囲って、青の王国があった場所くらい?」
『僕には、そんな感知能力はないよ。この洞窟の中にいる数だよ。この場所に通じる通路には居ないけど、洞窟は広いからね』
(ここに、まだ8体も?)
そんなに大量のダークスライムを、どうすればいいのかな。洞窟内のダークスライムを討伐できても、ダークスライムはどんどん仲間を増やしていくんだよね?
(ん? 仲間? あっ、そっか)
「まだら模様のスライムさん、なぜ、ダークスライムになってしまったの? 人間をダークスライム化させて仲間を増やしてるよね?」
『僕達は、青の国王と戦うことは避けたかった。大陸のスライムは、人化し始めて、人間と話せるようになって喜んでたよ。でも、だんだん人間をいじめるようになったんだ。だから、僕達は、スライムを喰うスライムに進化した』
(やっぱり、そうなのね)
「人間をダークスライム化させてるよ? だから、青の国王は、キミ達を討伐しようとしたんだよ」
『うん。僕達に触れると、少し体液が人間に入ってしまうんだ。でも、それだけなら、髪が黒くなるだけなんだ。だけど、その人間の中にある汚れた心が放つゴミに反応すると、体液が増えてしまう』
「あっ! それでダークスライム化するのね。黒い髪になった人間の心の問題か」
『うん。すぐに吸収してしまうからね。だから、心を清らかにしていれば、黒い髪になるだけなんだ。人間は、髪色の違いで戦乱ばかりしている。みんなが黒い髪になれば、平和になると思ったんだ』
「でも、実際には、スライム髪の島に来た人以外は、ダークスライム化してしまうよね。キミ達の想像より、人間は悪意のかたまりだもの」
『普通の人間のワガママは、かわいいんだ。人化するスライムが、人間をおかしくしてしまった。僕達は、傲慢なスライムを喰う種族に進化して、人間を元に戻したかったんだ』
「キミ達は、人間のことを理解できてなかったんだよ。この進化は大失敗だったね。ダークスライムになると、話せなくなるってことは、ただのバケモノになってしまったんだよ」
私は、ちょっとキツイ言い方をした。黒と白のまだら模様のスライムが、激しく後悔していることが伝わってくる。
『ジュリさんは、僕達を討つんだね』




