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106、黒と白のまだら模様の大きなスライム

 しばらくすると、キングシルバーの盾が消えた。もう、この場所は安全みたい。特にツーンとした臭いはない。


(でも、どういうこと?)


 ダークスライムに対して、ネイルが新たに作り出した魔法は、私の感覚では、自作自演のカビ掃除。だから、全然スッキリしない。


 ネイルが、キングの色を利用して、別の魔法に作り替えたのは、すごいと思うし、消えた草原を再生した魔法は、素晴らしいと思うけど。



「ジュリさん、成功ですよ?」


「なんだかスッキリしないよ。自作自演のカビ掃除で、ダークスライムを倒せた気がしないもん」


 ネイルは、私が浮かない顔をしているから、困っているのかな? でも、漁師のお兄さんやアルくんは、まだ警戒しているし、黒い髪の人化したスライムは考え込んでるみたい。


「ジュリさんの知識を借りたんです。ダークスライムは、すべてを取り込もうとする習性があるから、上手くいきました」


「私の知識って、カビ掃除?」


「それもありますが、ジュリさんの知識で分類すると、ダークスライムは粘菌だそうです。粘菌はカビ菌とは別の構造のようですが、ダークスライムがカビ菌と結合した直後に、カビ菌を殺す薬を使えば、その薬は、当然ダークスライムに効きます」


「うーむ? よくわかんないけど、カビ菌をばら撒いて、カビ掃除したら、カビ菌に食いついていたダークスライムも一緒に退治されちゃったってことなのね」


「はい。未知の物を取り込んだときには、それを吸収するために、ダークスライムは取り込んだ物に似た身体を作って同化するようです。消化液を使うスライムとは別の種なんですよ」


「ダークスライムが黒カビに化けたところに、カビを殺す薬をぶちこんだってこと?」


「はい、そういうことです」


(なるほど……)


 私は、わかったようなわからないような複雑な気分だった。ダークスライムには弱点がないから、弱点をつくって討伐したってことなのかな?



「ジュリちゃん、すごいな!」


 漁師のお兄さんが目を輝かせてそう言ってくれたことで、私は、ダークスライムを討てたことを実感できた。


「私じゃなくて、ネイルが賢いんだよ」


「ジュリちゃんが、黒カビという未知の言葉を使ったからだ。ネイルが新たな魔法の組み替えができることにも驚いたけどな」


「私もビックリだよ。新しい魔法が……あれ?」


 チェーンブレスレットに石が増えていると思ったけど、変わりがないみたい。マニキュアリストを表示してみたけど、青紫色も赤紫色も増えてない。ネイルが使った草原の再生も、新たに作り出した魔法だよね?




「あっ! あれは……」


 お兄さんが槍を構えた。それに気づいたアルくんも、剣を抜いてる。


 彼らの目線の先には、黒と白のまだら模様のスライムが一体いた。かなり大きい。



「ネイル! 黒カビのマニキュアを塗って」


「ジュリさん、できません」


「どうして? さっき塗ってくれたじゃない」


「先程は、キララの出店を妨害されたから、オレにも不思議なチカラが湧いたんです。今のオレには、キングの色の組み替えはできないみたいです」


「あっ、じゃあ、キララ!」


「ジュリちゃん、慌てなくて大丈夫だよ。あのスライムは、ダークスライムになる前の状態に戻ってる。ブラックスライムの変異種だよ。クイーンホワイトの分身を喰ったから、まだら模様になってるけどね」


「あんなに大きなスライムだよ? あっ、そうか、ゴミを吸収する前か……」


 クイーンホワイトさんの分身が、真っ白な状態から褐色になると、頭がボーッとしてきたって言ってたっけ。人間の悪意を吸収すると、理性を失うのね。



「ジュリエッタ、あのスライムは、こまってる。どうしてここにいるか、わからないみたい」


 小さな手が、私の手を掴んだ。私を見上げる顔は、不安そうに見える。


「ふわしろスライムさん達は、どうすれば良いと思う?」


 真っ白な分身も、私の足元に近寄ってきた。


「ぼくたちは、ダークスライムが、ここにこなければいいんだ。ぼくたちは、にんげんのせわをしているから」


「まだら模様のスライムは、ダークスライムじゃないの?」


「ダークスライムだったけど、ゴミがきえたよ。ジュリエッタをまもるスライムが、ぼくたちのしらないまほうをつかって、じょうかできないダークスライムを、じょうかしたよ」


「あのスライムは、もうスライムを喰わないのかな?」


「ダークスライムにならないと、たべないよ。それに、ジュリエッタをまもるスライムが、こわいみたい。あっ、ちがうって。ジュリエッタは、しろいかみだから、ぼくたちとなかよしだったにんげんみたいで、こわいっておもってる」


「青の王国の最後の国王も、白い髪だったから?」


「うん。スライムは、にんげんをこわがることはないけど、かみさまがあたえたスライムのことは、すごくこわい。ジュリエッタをまもるスライムは、ジュリエッタとつながってるから、ジュリエッタがこわいって」


「ふぅん。物質スライムは、人化するスライムよりも格上だからかな。あの大きさなら人化できるんじゃない?」


「できるとおもうよ。でも、ジュリエッタがおこるかもしれないから、こわくてうごけないみたい」


(確かに動かないね)


 お兄さんやアルくんが、武器を構えているからかも。黒い髪の人化したスライムは、なんだかボーッとしてる。



『ジュリちゃん〜、ブラックは、ジュリちゃんのイヤリングを経由して、アタシと交信中よ〜。ダークスライムの状態を聞いていたの〜』


(あっ、イケメンさん。どうしよう? 大きなまだら模様のスライムだよ)


『ブラックのサーチによると、グリーンスライムの変異種らしいよ〜。だから、寂しがりで怖がりなんだよ〜』


(ん? そうなの? 色の違いはよくわからないけど……あっ、人間も同じかな。スライムに影響を受けるから)


 赤の集落は、潔癖で堅苦しい雰囲気。黄の集落は一番よく行くけど、仲間意識が強くて他の髪色には無関心。緑の集落は、初めて行ったときはスカーフを外されたから乱暴な集落だと思ったけど、自由でいろいろな人を受け入れるし、細かいことを気にしない。


『グリーンスライムは、孤独に弱いんだよ〜。ダークスライムが人間の悪意を吸収してしまうのも、種族に関係なく、受け入れてしまうからなんだろうね〜。このまま外に出すと、またダークスライムになるよ〜』


(じゃあ、どうすれば……)


『アタシは、これ以上は口出しできないよ〜。どうするかは、ジュリちゃんが考えて〜』


皆様、いつもありがとうございます。

月曜日は、お休み。

次回は、12月23日(火)に更新予定です。

よろしくお願いします。

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