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103、すべての元凶のレッドスライム

 私達は今、赤い丘にある白い砂地で、立ち尽くしている。何が起こったのか、全然わからない。


 白い砂地から生まれた赤い髪の女の子が、サッと手を振ると、大陸のスライムのリーダーっぽい若い人化したスライムが、一瞬で黒くなって、石像みたいな姿に変わってる。


(なんか、怖い)


 私がそう考えていると、小さな手が、私の手を掴んだ。



「ジュリエッタ、こわくないよ。かしこいこが、うまれたよ。このばしょは、いのちがたくさんあるからね。にんげんのいのちも、かしこいこのなかに、はいってるよ」


「えっ? 墓地から生まれた女の子は、人化したスライムに見えるよ? 人間の魂も入ってるの?」


「うん、ぼくが、かしこいこをよんだからね。たくさんのいのちがあつまるばしょだから、ぼくのこえをきいたこが、あつまって、かしこいこがうまれたよ」


「じゃあ、赤い髪の女の子は、スライムと人間のハーフってこと?」


「ん〜? かしこいこ、せつめいして」


 白い髪の小さな女の子は、ギブアップみたい。クイーンホワイトさんの分身だけど、この子も人化したばかりだからかな。



『ジュリエッタ、私は、そのクリアスライムによって新たに作り出された種だ。この場所に眠っていた多くのレッドスライムの変異種であろう』


「クリアスライムの能力って、私はよく知らないんだけど、この子はクイーンホワイトさんの分身だから、特殊なのかな」


『クリアスライムは、そこにいるブラックスライムと同じく、スライムの転生を司っている。その違いは、ブラックスライムは種の変更はできないが、クリアスライムは新たな種を生み出す力がある点だ』


「あっ、だから生と死を司るって……」


 黒い髪の人化したスライムの方を見ると、軽く頷いてくれたけど、赤い髪の人化するスライムがさらに増えたから、あちこちを警戒しているみたい。


 アルくんは驚いた顔をして、キョロキョロしてるけど、剣はしっかり握ってる。



『ジュリエッタがハーフと言った意味は、大きく外れているわけではない。人間の魂も私の中に入ったことで、人間の思考も正確に理解できる。また、残留思念を私の知識として受け継いだ。レッドスライムの一部が、スライム神に逆らっていることも理解した』


 赤い髪の女の子は、石像になった若い人化したスライムを睨んでいる。


「スライム神の島に襲撃してきた赤い髪の人化したスライム達は、青の王国の王家の血を引く人間を恨んでいるみたいだったよ。より強いダークスライムが生まれるって言ってた。ダークスライムは、人間の悪意から生まれたらしいけど、それって、そもそも違うよね? 大陸にいる人間を、人化したスライムがしいたげるようになったことで、人間を守ろうとしたスライムが進化したんだよね?」


 私は、集まっている人化したスライムに聞かせるために、こんな話をした。


『ジュリエッタが気づいたように、すべての元凶は、このスライムだ。人化した姿が若く見えるのは、人間の子供を喰ってきたからだ。スライム神は、人間をかわいがり、この大陸を飼育場所として新たに創造された。人間の世話をしたがるスライムだけを、大陸に棲まわせたはずだ』


「えっ? スライムが人間を食べるの?」


『人間のしかばねを喰うスライムは、少なくない。特にグリーンスライムやイエロースライムは、屍を喰い、排泄することで、土壌を豊かにしてきた。そして、人化する能力を得る個体も現れた。だがそれは、死んで土葬された屍の話だ。生きている人間を喰うのは、レッドスライムだけだ』


「グリーンスライムやイエロースライムは、死体を分解する役割があるのね。でも、レッドスライムは、潔癖症だから、屍なんて食べないから?」


『そういうことだ。グリーンスライムやイエロースライムの中に、人化する個体が現れたことで、レッドスライムにも対抗心が生まれたのだろう。だが、人間の屍を喰わなくても、同じ土地に共存して人間と関わっていれば、自然に進化は起きる。それを、クリアスライムは教えていた。だが、生きている人間を初めて喰ったのが、コイツだ』


 赤い髪の女の子は、石像の方に視線を移した。そして、集まってきた多くの赤い髪の人化したスライム達に、鋭い視線を向けている。


(この子も私と同じね)


 私に説明してくれているけど、人化したスライム達に聞かせたいんだと感じた。それなら、スライム達の疑問も解消する方がいいかも。



「石像になったスライムは、生きているの? 赤いスライムのリーダーなんだよね?」


『ふっ、ジュリエッタは優しいのだな。すべての元凶であるレッドスライムは、殺さない。これだけ多くの人間を喰ってきた個体は、殺しても、転生したときには同じことを繰り返すだろう。これは、強い石化の呪いだ。私の中に入った魂達が望んだことを、私が代わりに実行した』


「呪いで石像になっちゃうの?」


 私は単純に驚いただけだったけど、赤い髪の人化したスライム達は、すごく怯えてるみたい。


『私には、レッドスライム以外のスライムも入っているからな。レッドスライムには使えない術も使える。あぁ、安心しろ。石化は、この地にいた人間の魂の呪いだ。だから、人間を殺したスライムにしか使えない』


 赤い髪の女の子は、不敵な笑みを浮かべて、人化したスライム達を睨んでいる。逆に考えれば、人間を殺したことのあるスライムは石像にできるんだぞって脅してるよね。




「ジュリエッタ! ぼくたちのにわに、ダークスライムがくる。ぼくが、まもっていたつうろに、ダークスライムをつれたにんげんが、はいったんだ」


(えっ、大変!)


 白い髪の小さな女の子は、目に涙をためてる。自分のせいで、ダークスライムが入り込んだと思っているみたい。


「それで、クイーンホワイトは、慌てて戻ったのか」


 漁師のお兄さんはそう言うと、アルくんの方に視線を移した。洞窟の地下庭園には、青の王国の生き残りが、隠れ住んでいるんだよね?



「助けに行かなきゃ! でも……」


『ジュリエッタ、私が、愚か者に代わり、レッドスライムの王となろう。改造スライムは退化させる。だがダークスライムには、スライムでは対抗できない。すぐに行け』


「わかった。賢い子に任せるね。キララ、オープン!」


 キララを呼び出すと、キララは人の姿で現れた。



『まぁっ! なんて素敵な……』


(えっ? 何?)


 赤い髪の女の子が何か言ったけど、すぐにキララの転移魔法の光に包まれたから、よく聞こえなかった。



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