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102/132

102、砂地から生まれた赤い髪の女の子

 私の手から放たれた光は、空に向かっていった。


(あっ、失敗したかも)


 だけど、すぐに空から光が降り注ぎ、緑色の髪のスライムは炎に包まれた。一人しか見えてなかったけど、違ったみたい。次々と、あちこちで炎があがる。



「ジュリちゃん、すごいな。転移してくるスライムを狙い撃ちしてるのか」


 漁師のお兄さんが褒めてくれたけど、たぶん、ネイルが偉いんだと思うよ。


「たまたまかも。あれ?」


 緑色の髪のスライムは、炎に包まれて止まったけど、赤い髪の人化したスライムは、超スローモーションになってる。合わせ技のつもりだったのに、失敗したみたい。だけど、黒い髪の子やアルくんは、普通に動いてる。



「ジュリちゃん、今のは何? 状態異常をターゲティングできるのか?」


(アルくんの言葉は難しいな)


「よくわからないけど、スロウを使ったよ。改造スライムっぽいのは炎に包まれてるけど」


 そう話していると、アルくんと黒い髪の人化したスライムが私達の近くに戻ってきた。それを追いかけようとした赤い髪のスライム達は、なぜかフリーズしてる。


「スロウを受けた状態で転移魔法を使おうとすると行動不能になるのに、アイツら、頭悪いよな」


 お兄さんはそう言いつつ、超スローモーションの人化したスライム達の動きを警戒してる。



「この大陸には、強いピンクスライムは居ないから、知らないんじゃないでしょうか。ジュリちゃん、チビっ子が何かしてるよ?」


 アルくんは、白い髪の小さな女の子の動きが気になったみたい。手を下から上に何度も振り上げてるから、踊ってるようにも見える。


「うん、賢いスライムが生まれるんだって」


「ブラックスライムは、大量に生まれたよ。ブラックさんが、眷属けんぞく召喚をしたみたい」


「けんぞくって何?」


「アル、眷属じゃなくて転生だ。俺がやると黒くなるが、転生直後の無敵ゾーンが消えたら、本来の色になると思うぜ」


「転生させたんですか! ブラックスライムが生死を司るって、こういうことなんですね!」


(全くわかんない)


 アルくんは目をキラキラさせてるけど、黒い髪の子は、少し困ってるみたい。


 たくさんの黒いスライムは、超スローモーションになった人化したスライムに、普通に体当たりして攻撃してる。状態異常を受けてる人化したスライム達は、攻撃され放題だね。




「一体、何なんですか!」


 また新たに、人化したスライムが転移してきた。もう、空から光は降り注いでないから、状態異常は受けてない。


 赤い髪の人化したスライムだけど、他の個体とは何かが違う。見た目が少し若いからかな? お兄さんやアルくんが身構えたのが伝わってきた。


 すると、小さな女の子が口を開く。



「ジュリエッタがおこってるよ。アルフレッドもおこってるよ。ぼくもおこってる」


「は? 赤い丘は、レッドスライムの地ですよ! レッドスライム以外が立ち入ることは認めません」


(言葉遣いは丁寧なのね)


「たいりくは、にんげんがすむばしょだよ。にんげんにばけたスライムがすむばしょじゃないよ」


「何を……ここで何をしたんですか! 皆が状態異常を起こしているのは、なぜ……」


(ひぇっ)


 赤い髪のスライムが、私を真っ直ぐに睨んだ。すごく怖い顔をしてる。でも、私が言い返すべきね。



「ピンクスライムの能力を借りました。アナタが、すべての元凶ですね?」


 私の声は、驚くほど冷たかった。私の感情というより、何かの影響を受けている気がする。墓地だからかな。


「は? ピンクスライムなど、どこにいるのですか」


「私は、スライム神の島から来ました。アナタ達は、私達がこの場所に立ち入っただけで攻撃してきましたが、アナタ達がスライム神の島に入り込んで、どれだけの人間を殺したか、まさか忘れたとは言わせませんよ」


「チッ! 加護持ちか。くだらない。人間なんて、いくらでも湧いてくるじゃないですか。ダークスライムを生み出すゴミだから、排除するだけのこと。この世界は、スライムの世界ですよ? 人間のせいで、私達がダークスライムに襲われるようになった。だから、始末しているだけです」


(傲慢なのね)




 ガタガタッと、何か妙な音と振動が地面から伝わってきた。その直後、若い人化したスライムは魔力を放ったみたいだけど、何も起こらない。


(わっ!)


 小さな女の子が踏み固めていた白い砂地から、白いコンクリートの塊みたいな物が、生えるようにせり上がってきた。


 若い人化したスライムは怒ったみたい。いや、違う。怯えているのかも。


 状態異常魔法が解け、赤い髪のスライム達の動きが普通に戻った。すぐに、私達の方に来ようとしたけど、何かに怯えたように立ち止まった。


「くそっ! 死霊が実体化したか」


(死霊って何? 幽霊?)


 若い人化したスライムが呟く声が聞こえたけど、誰も動かない。




「でておいで!」


 小さな女の子がそう言うと、白いコンクリートのような物が、ガラガラと崩れた。


(女の子?)


 その中からは、赤い髪の人化したスライムが現れた。赤い髪の人化したスライムは、男性しか見たことないけど、目の前にいるのは、私と同じくらいの年齢の女の子だった。


 腰までの長い髪は巻き髪になっていて、真紅の大人っぽいドレスを着ている。歌劇団の人みたいな雰囲気ね。



『クリアスライム、状況がわからない』


(念話だわ)


「ジュリエッタがおこってるよ。アルフレッドもおこってる。ぼくもおこってる。だから、キミがうまれたんだ」


 赤い髪の女の子は、ぐるっと周りを見回した。


『レッドスライムが暴走したのだな。人間の領土を奪い、奴隷化しようとしているのか』


「それだけじゃないよ。ダークスライムがたいりくにひろがった。かみさまのしまを、しゅうげきした。にんげんをだまして、スライムのかいぞうをした。かみさまがたいせつにしているのに、しいくばしょの、にんげんをぜんめつさせるつもりなんだ」


(大陸は、人間の飼育場所なのね)



 赤い髪の女の子は、若い人化したスライムの方に視線を移した。


「違う! 大陸にいる人間は、ダークスライムを生み出すゴミだ。腐っているから……」


『腐っているのは、おまえ達の方だ。すぐさま大陸から出て、適当な小島へ移住しろ』


「そんなこと、できるわけないだろ! 俺が今まで、どれだけの時間をかけてゴミ掃除をしてきたか」


『おまえが一番臭いゴミだろ』


(えっ?)


 赤い髪の女の子がサッと手を振ると、若い人化したスライムは、一瞬で黒くなり、石の置き物のような姿に変わった。



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