101、ダークスライムが生まれた理由
「あれ〜? ぼく、にんげんみたいになってる」
私の腕の中で目を覚ました小さな女の子は、不思議そうな顔をしてキョロキョロしてる。スライムの姿とは見え方が違うのかも。
「クイーンホワイトさんが、チカラを分け与えてくれたんだよ。人化するとゴミを吸わないんだって。私に託すと言われたんだけど」
「ふぅん、あれ? ここには、たくさんのスライムとにんげんがいるね」
白い砂地を見て、クイーンホワイトさんの分身は、またキョロキョロしてる。スライムと人間がいるってことは、人間も埋葬してあるのかな。
(私達が入っていいの?)
そう考えていると、小さな女の子は、私の腕の中からピョンと飛び降りて、白い砂地で足踏みしている。まさか、お墓を踏み固めてるの?
「ジュリちゃん、ふわしろスライムって、クイーンホワイトなのか?」
漁師のお兄さんがこちらを向いたとき、赤い髪の人化したスライムが何かを飛ばしてきた。お兄さんは、咄嗟に槍で払ったけど、また飛んでくる。赤い髪のスライム達は、白い石灰の平原には立ち入らないみたいだけど、攻撃してくるってことは、ここが神聖な場所でもないみたい。
「キングシルバーの盾!」
私は、キングシルバーさんの盾を使った。白い砂地の周りを囲むように、透明な盾がズラリと並ぶ。
(あっ、打ち返してる)
透明な盾は、まるで生きているかのように、それぞれが個々に動いて、何かを飛ばしてきた赤い髪のスライムに的確に、跳ね返していた。
「うん、アルくんにも聞こえてなかったみたいだけど、キングシルバーさんは、そう言ってたよ」
「スライムには、キングだけじゃなくて、クイーンもいるのか。知らなかったな」
「私も初めて聞いたよ。白いスライムは特殊なんだって」
私がそう説明すると、お兄さんは何かを思い出したように、あぁって小さな声で呟いた。
「俺達が、物質スライムの自爆でスライム神の島に帰還できるのは、この大陸にクイーンがいるためなんだな。以前、死にかけて戻るときに、優しい女性の声が聞こえた。さっきの、ふわしろスライムの声は、どこかで聞いたことがあると思ってたんだ」
「クイーンホワイトさんが、帰還を助けていたのね。彼女は、大陸にいるスライムを統制する役割があったみたいだけど、出来なくなってるみたい。今、あんなに弱ってるし」
「そうだな。人間達が負担をかけているのだろう」
「うーん、大陸にいる人間を滅ぼそうとしているのは、人化するスライムだよ。ダークスライムを生み出した青の王国の人間を恨んでるみたい」
「ダークスライムは、緑の帝国で生まれたはずだぜ?」
「うん、私もそう思う。だから、アルくんのお爺様が倒そうとしたんだよ。でも、ダークスライムは人間を仲間にして増えてるけど、スライムは溶かして食べちゃうんだよね」
私がそう話すと、お兄さんは、ハッとした顔をしてる。
「そうか。ダークスライムは、人間の悪しき心から生まれたと言われているが、スライムが人間を追い詰めた結果かもしれないな」
「ん? どういうこと?」
「俺の婆ちゃんが子供だった頃には、弱いスライムしか居なかったらしい。人化するスライムが生まれて、人間を追い詰めた結果、それに対抗するように、ダークスライムが生まれたのかもしれないぜ」
(なるほど)
人間の髪色は、その地に棲むスライムの色になるように、人間はスライムの影響を強く受けている。そして、スライムは、弱いスライムでもきっと、人間をペットのように想っていると思う。
だから、人間が追い詰められたことで、スライムが人間を守ろうとして特殊な進化をすることは、十分にありえる。人化するスライムに対抗するために、スライムを喰うダークスライムが生まれたのかも。
「ジュリエッタは、かしこいね。そのとおりだよ。しろいばしょには、にんげんとスライムがねむってる。このたいりくは、にんげんとなかよくしたいスライムしか、いなかったんだ」
(あれ?)
踏み固めが完了したのか、白い砂地は、コンクリートっぽい感じになっていた。
「私の考えがわかるんだね。ふわしろスライムさん」
「うん、ぼくは、れきしがみえるんだよ。レッドスライムは、けっぺきだから、あかいおかに、ちらばっていたしがいを、ぜんぶあつめたんだ。だから、ここには、いろんないろのスライムとにんげんがいるよ」
「赤い丘で亡くなった人間も集めたのね。赤いスライムの墓地かと思ったけど」
「ゴミすてばだよ。きたないとおもってるから、レッドスライムは、ここには、はいってこないんだ。でも、ここは、いのちがたくさんあるばしょだよ」
小さな女の子との話を、お兄さんはジッと聞いてる。彼が知る話とのズレを確認しているのかも。途中で、何かに納得したように頷いていた。
「ふわしろスライムさん、今、ここを踏み固めて、何をしていたの? たくさんのスライムと人間が眠る場所なら、踏んでいいのか悩ましいんだけど」
「ぼくは、おこしてたんだよ。ブラックスライムがつれていったのは、すこししかいないから」
「へ? あ、黒いスライム? あれって、ここで眠っていたスライムなの?」
「うん、そうだよ。ジュリエッタがそだてたブラックスライムは、もともとはレッドスライムでしょ? いろがあるから、にんげんはケンカするんだよ。ダークスライムも、にんげんのいろわけをなくそうとしたんだよ。しっぱいしてるけど」
「あっ、それで、ダークスライムに襲われた人間の髪色は黒くなるの? でも、だんだん溶けてしまうんだよね?」
「ダークスライムは、にんげんのカラダをわかってないからね。でも、もうすぐ、かしこいスライムがうまれるから、だいじょうぶだよ」
「賢いスライムが、生まれるの?」
私がそう聞き返したとき、こちらに向かって、ボォッと爆炎が放たれた。キングシルバーさんの盾が防いでくれたけど、その隙に、私達の背後に回った人化したスライムが、突風を起こした。
(なぜ、風?)
キィン!
緑色の髪のスライムが、背後から襲ってきた。レッドスライムとは違って、グリーンスライムは墓地でも平気なのね。
お兄さんが、緑色の髪のスライムの攻撃を弾いたけど、ちょっとよろけてる。私は、マニキュアのおかげで、いろんな耐性があるからダメージはないけど、お兄さんには、そんな耐性はないよね。
(改造スライムかも)
「レッドスライムの火魔法! ピンクスライムの状態異常魔法・スロウ!」
私は両手を上にあげ、二つの術名を叫んだ。




