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1、スライム神からのギフト

新作はじめました。

よろしくお願いします。

 珊瑚礁に囲まれた孤島。

 そこには、千年を生きる優しい賢者が住むという。


 これが事実なのかは誰も知らない。不思議な神のような存在を信じる者達が語り継ぐ、ただの伝説なのかもしれない。



 ◇◆◇◆◇



「王妃様、珊瑚礁に阻まれて、これ以上は進めません」


 ぼんやりと海を眺めていた美しい赤髪の女性。彼女は、膝の上で眠る赤ん坊の真っ白な髪を、そっと撫でた。


「ごめんなさい、ジュリエッタ。貴女をこんな呪われた髪色に生んでしまって……」


「王妃様、そろそろです。海流にうまく乗れば、きっと」


「そうね……」


 彼女は、すやすやと眠る赤ん坊を抱き上げた。頬に願いを込めたキスをして、用意された小さな脱出用ボートに、そっと乗せる。


 賢者への手紙と、国を示す赤い宝石を添えて……。


「ジュリエッタ。どうか、生きて」


 赤ん坊を乗せた脱出用ボートは、青い海へと消えていった。




 ◇◆◇◆◇




「さぁ、ジュリ、長老様の前へ進みなさい」


「はいっ!」



 今日は、私が、この島の神様からギフトをもらえる日。昨日、長老様からいろいろなことを教えてもらって、すっごく驚いたの。


 私は赤ん坊の頃に海岸で泣いていたところを、この集落の住人に拾われたんだって。ここにいる人達はみんな、森や海岸で迷子になっていたみたい。


 だけど私達は、本当はここに居ちゃいけないんだって。ここは人が住むべき集落ではないって言われたの。


 大きくなって、この島の神様からギフトをもらえたら、出て行かなきゃいけないみたい。だからみんな、どこかへ旅立ってしまうのね。




 私は、長老様が描いた黄緑色に輝く魔法陣に、そっと足を踏み入れた。


(はぁぁ、緊張する)


 次の瞬間、魔法陣から立ち昇る淡い光が、私の身体を包み込む。ふわふわした気分。何かを話しかけてくるような、少しくすぐったい光。


 綺麗な剣や大きな盾をもらえるのかな。女の子は盾をもらう人が多いみたい。



 光が収まると、キラリと光る物が、長老様の前に浮かんでいた。それはとっても小さく見える。


(なんだか違う)


 いつも冷静な長老様も、目を見開いてる。


「神から与えられしギフトだ。ふむ、ジュリは6歳になったようだな。まだ早い気もするが、ギフトを得ると大人の仲間入りだ」


「ありがとうございますっ!」


 教えられた通り、長老様の前でかしずき、そーっと両手を伸ばす。長老様は触手を伸ばして、私の手のひらに神のギフトを置いてくれた。



「さぁ、装備してみなさい」


 私の手のひらには、小さな指輪がひとつあるだけ。目をパチパチしてみても指輪だよね?


「長老様、これは指輪ですか? 剣でもないし盾でもない……」


「これは、ジュリに適した物資スライムだ。どの指に装備するかは、指輪が教えてくれるぞ」



 私は立ち上がり、右手で指輪をつまんでみる。すると、左手の人差し指がウズウズしてきた。ちょっと近づけただけで、指にピタリとハマっちゃった。


 銀色の指輪には、無色透明の小さな玉がついている。宝石なのかな? すっごく綺麗。



「ジュリ、ギフトを使ってみなさい。物質スライムの声が聞こえるはずだぞ」


「あ、はいっ」


 指輪をジッと見てみる。


 長老様も注目しているみたい。ギフトにどんなチカラがあるかは、長老様にもわからないんだって。


 突然、魔法陣が、ぐんっと大きく広がった。集まっていた人達は慌てて、魔法陣を踏まないように離れていく。だけどスライム達は、気にしないのね。


 魔法陣から優しい光が指輪に集まってくる。誰かが何かを話してる気がするけど、よくわかんない。


 指輪は、ピカ〜ッと強く光った。



『ジュリちゃん、はじめまして! スライム神からのギフトは【出店】だよ。ボクは、キミを守る物質スライム。広い場所に向けて【オープン】って言ってみて』


(び、びっくりした)



 物質スライムは、念話を使うんだっけ。頭の中に直接、元気な声が響いてきた。


 キョロキョロと見回してみる。


 他の人達には聞こえてないみたい。だけどスライム達には聞こえたのね。プルプルと不思議そうにしてる。


 長老様は、とっても驚いた顔をしていたけど、私と目が合うと、優しく頷いてくれた。


「さぁ、ジュリ、心配しなくていい」


 長老様は、優しい笑顔でプルプルと震えてる。私よりも長老様の方がドキドキしてるみたい。



「じゃあ、オープン!」


 私がそう叫ぶと、指輪に付いていた無色透明の小さな玉が消えちゃった。魔法陣の上に、小さな敷き物が現れたみたい。魔法陣の淡い光が吸い込まれていくけど……。


(これだけ?)


 私の背と同じくらいの大きさ。つるんとした長方形の白い布に見える。



『ジュリちゃん、これで開店したよ。売り物を並べたら、それを必要とする人に売りに行くよ。ボクは生まれたばかりだから、まだ遠くへは行けないけど、頑張るね!』


(この白い布がお店?)


『ボクとジュリちゃんのお店だよ。【クローズ】で、ボクは、ジュリちゃんの指輪に戻るよ』


「クローズ?」


 小さな声で呟いたけど、白いつるんとした布は消えて、指輪に無色透明の小さな玉が戻ってきた。


(面白〜い!)



「その指輪は、ジュリに与えられた物資スライムだ。店を出すスライムというのは珍しい。どう成長するかは、ジュリ次第だぞ」



見つけていただき、ありがとうございます。

今夜、もう1話の更新を予定しています。


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