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  作者: VISIA
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案内される

 手を掴まれた時、柔らかい感触はあったが、想像していたより小さい手だった。


 ひょっとしたら、自分の力で引き上げられるのでは、と一瞬思ったが、体が急に重くなり、動かなくなって無抵抗のまま池の中へ引き込まれてしまった。


…池の中


 自分の腕を引っ張っているのは、少年だった。

 その少年は前を向いたまま、特に手足を動かして泳ぐ事もなく、池の底へ向かって進んでいく。


 息は、苦しくならなかった。


 行き着く先が竜宮城なら、待っているのは乙姫だが、自分を待つのは…

 暗い池の底に、車が沈んでいた。

 古いタイプの車種だという事が、沈んでからの年月を感じさせる。


 周りには不法投棄が酷く、色々な物が沈んでいた。


(先輩がここに…)


 少年が、車の所へ自分の腕を引いていく。


(車の下に…何か白い……)


 近づくにつれ、ソレが人の形をしていることが分かってくる。


(何故、ここに…)


 黒く長い髪が水に揺れている、恐らく骨だけの肢体。

 ただ、目の前の少年が普通ではない為、ソレに何が起きていても不思議ではない。


(もし、生きてたら…)

 ようやく、目的の場所に着いたらしい。

 少年がソレを指差す。

 人の形をしたソレ、先輩だった人、うまく言葉が出てこないまま、三歩ほど進んで顔を覗いた。


(えっ……?)


 横たわったソレは、昔の先輩の姿をしていた。

 髪型も、鼻筋や赤い唇まで、自分の記憶にある先輩そのままに。


(先輩!!!!!!)


 先輩を、両手で抱き起こす。首を支え、昔の童話にあるように唇にキスをした。

 感情の高ぶりに自分を抑えられなかった。


 その時、先輩の閉じられていた目が大きく見開かれ、急に体が温まってきたように感じた。


(…生き返った?)


 だが、その目は無機質な感じのままだった。


(何だろう、この違和感は…なあ、君どういう事なの?)


 少年の方を見ると、ゲラゲラ腹を抱えて笑っていた。


(えっ?)


 急に、自分の体が軽くなる。

 すると、自分がキスをしたソレの正体が分かっった。



……大人向け高級人形。

 自分が、少年をキッと睨みつけると、少年は首を横に何回か振った。


(先輩はどこだっ)


 少年は、少し悲しそうな顔をして上を指差す。


…そういえば


 妻の過去の話を思い出す。


(先輩の目的は、典子なのか?)


 少年が頷く。


(先輩は死んでるんだろう?)


 少年は、首を横に振った。

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