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  作者: VISIA
7/15

連れて行かれる

 私は、その家の一室で布団に横になっていた。

 ただ、どれだけ時間が過ぎても眠れそうにない事はわかっていても、目を閉じて横になっていたかった。


 暫くして、隣の布団で夫が寝始める。


―その数時間後

 私が、なかなか寝付けず色々考え事をしていると、隣の布団で寝ていた夫が起き出す。


…トイレかしら?


 暗闇でバランスを崩した夫が、足で私の頭を踏みつけた。


「ぐっ」

「あ、スマン…」


 フラフラと、手探りで夫が部屋を出て行き、静かな部屋が、更に静かになった。

 同時に、何かの不安が急に心を浸食し始めていく。


…私もトイレ行こうかな


 体を起こそうとした瞬間、金縛りになり仰向けのまま、目を閉じることも出来なくなった。


あれ?


 ゆっくりと、床を擦る足音が近づいてくる。


 嫌な気配、まるで私はここにいるよ、と言っているような何かの存在がゆっくりとゆっくりと、枕元まで来て立ち止まった。


…わああああっ!


 青い顔が、私を上から見下ろしていた。


…あの時の少年?


 その少年から、あの時と同じ鼻水が、ツツゥと私の顔に垂れ迫る。

ワザと口元を狙っているようだ。


…避けられない!!


 だが、鼻水が口にあと数ミリというところで奇跡が起きる。

 屋根が吹き飛ぶのではないか、と思うくらいの凄い¨くしゃみ¨が、私から出たのだ。


べひゃぁくしょいっっ


 そのくしゃみは鼻水を少年の顔へ飛び散らせただけではなく、風圧と鼻水で、少年の髪さえも逆立ててしまうほどの威力があった。


 私は、その少年の姿に笑いが止まらなかった。 そして暫く笑っていると、いつの間にか金縛りはとけていた。


…君、昔のままだね。全く変わってない


「あれから、何年過ぎたのかな?」

「………」


 少年は何も答えない。

ただ、こちらをジッと見ているだけだった。


「君のお墓とか、どこにあるの?」


 少年は、首を横にふって少し悲しそうな顔をする。


「じゃあ、君の体は今どこにあるの?」


 少年は、私の手を掴むと信じられないほどの力で引っ張り、どこかへ連れて行こうとした。


 私は、暫く床の上を引きずられながらも、なんとか立ち上がり、少年に引っ張られていった。

 夫は、トイレから戻る途中、玄関の戸を体当たりでブチ抜いて行く裸足の妻の姿を見ていた。


 妻は他にも、柱や襖、家具家電などを破壊していったみたいだった。


 夫は気になって、妻の後を追った。

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