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  作者: VISIA
14/15

限界

─昔、「五色景」と呼ばれていた池があった。


 どこにでも在るような普通の池が、突然に白く濁りだし、酒の匂いを放つだけではなく、その池の水を完全に酒にかえてしまうのだ。


 すると、その匂いに引き寄せられるように人が集まりだし、我を忘れ限界を越えて酒を飲み続ける。


─やがて池は、その人達の嘔吐物で黄に染まり、嘔吐物に混じる血で赤黒く変化していく。


 最後には、池に遺体が浮かぶのだ。


 だが、次の日には、それらの遺体は無くなり、元の池に戻ってしまうのだと言う。


 遺体は、どこへ行ったのだろうか?

 そして、二時間が過ぎた。


 池の酒は約半分に減るが、周りの人?たちの飲むペースは変わることがなく、二時間ずっと顔を突っ込んだままだった。


 自分は、機嫌よく酒を啜ってる感じで、目的を忘れそうだった。


…エへへへへへ


 後ろで、一人酒を舐めていた婆さんが何かに気付く。


「とうとう来たか…」

「うぇ?なぁにがぁ?」

「池の調整部隊だ。」

「どぉこおでーすかぁ?」


 婆さんが指差す。


 自分は、思わずその指をくわえてしまう。


「わんわんっ」


 婆さんは、表情を変えず池の向こう側を見ていた。


「…………あそこだ。」 池を挟んで反対側に、人?たちがゾロゾロ集まってくる。

 やがて、その集団がガヤガヤ打ち合わせを終えると、一人を中心に人の輪ができ、ゆらゆら揺れ動きだした。


「始まったぞ、雨乞いの儀式だ。もうすぐ雨が降る。」

「わふ?」


「アンタも、少し酔いをさました方が良いみたいだな。私の母乳でも飲むか?あはん。」

「…………結構です。」


「…そうか。」

「はい。」


「………。」

「…さて。」


 元の場所に戻って、再び飲み始める。


 だが、最初のペースに戻れる筈もなく、一口喉を通すにも時間がかかった。


 周りを見ると、最初に比べて人?の数が少し減ったように感じられる。脱落者が出ているらしかった。


 限界を超え、そのまま池へ落ち、沈んでいく猛者な人?たちは、二度と浮かんでは来なかった。

…えと…あの先客は、大丈夫だろうか?


 気になって隣をみる。

 先客は、うつ伏せ状態で池に浮かびながらも、酒をガボゴボ吸い込んでいた。

 そして、冷たい雨がポツリ頬にあたる。

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