株券
祖父が亡くなった。
まあ人はいつか死ぬということは、前々から知っていたし、長患いもしていたから、医者からは近々ともいわれていた。
だから、それは問題はないのだ。
じゃあ何かといえば、祖父が残した遺産だ。
多くは祖父の子、つまり俺の父親へと渡されていった。
また父親の兄弟姉妹にも分けられていくのは当然だ。
ただ、絶対にこれは俺に分けよと厳命されていたものがあるという。
「それがこの風呂敷に入れてあるという話だったんだ。開けてくれないか」
父親が居並ぶ親戚一同の前で、何かが包まれている風呂敷を持ってきた。
紙が入っているかのように薄く、それでいて幅はA3くらいは十分にありそうだ。
「は、はい。改ます」
緊張で変なことを口走りながら、俺は風呂敷を開けていく。
傷つかないように気をつけて最後まで行くと、年代物の茶封筒が、封筒の口には知らない印影が刻まれている。
というよりも、これはどこかでみた気がする、蜜蝋とかで溶かして固めたものだ。
「開けてくれないか、中身を知りたい」
全員が思っていることだろう。
固唾を飲んで、一同が見守る中、俺は借りたペーパーナイフで蜜蝋部を破り、中身を確認するために、ゆっくりと、封筒を傾けながら風呂敷の上へと出した。
出てきたのは英語の書類だ。
「英語?」
「なら自分の出番か」
叔父さんがのっそりとやってきてその紙を見る。
口にはマスク代わりのハンカチで、直接息がかかるのを防いでいた。
「これは株券だ。名称はアマーダン、えっとアマーダン鉄道公開会社の株式を1000株有しているとある」
「アマーダンってどこ?」
叔母さんが言ったがそれは俺も同じ気持ちだ。
そして父親がスマホでサッサか調べると結果が出てきた。
「イギリスだ。イギリス北部、今はダンディー州となっているが、以前はアマーダン州としてあったらしい。グッディ家という、今はアマーダン公爵が治めていた土地だそうだ」
「そういえばお父さん、イギリスに単身赴任していたわね。もうずいぶんと昔だけど」
そのあたりの話は、昔聞いたことがあった。
ただ多くは覚えていないし、仕事で行っただけというニュアンスだった記憶がある。
「これって、今も有効なのかしら」
「破産していなければ、この株券には有効期限なんて書かれていないからね」
弁護士にでも聞かないとわからないだろうけど、と叔父さんは続けた。
「ともかく、これはマサアキのものだ。好きにしたらいい」
いいながらも叔父さんが封筒へと株券を戻す。
封は破れていたが、それをつけることはもうできない。
そして、俺はこのアマーダン鉄道という会社の株主になったわけだが、あとは弁護士を探して自分ですることになりそうだ。
面倒なわけだが、それでこの株の配当でももらえるのなら、きっと安いものなのだろう。




