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株券

作者: 尚文産商堂
掲載日:2024/03/01

祖父が亡くなった。

まあ人はいつか死ぬということは、前々から知っていたし、長患いもしていたから、医者からは近々ともいわれていた。

だから、それは問題はないのだ。


じゃあ何かといえば、祖父が残した遺産だ。

多くは祖父の子、つまり俺の父親へと渡されていった。

また父親の兄弟姉妹にも分けられていくのは当然だ。

ただ、絶対にこれは俺に分けよと厳命されていたものがあるという。

「それがこの風呂敷に入れてあるという話だったんだ。開けてくれないか」

父親が居並ぶ親戚一同の前で、何かが包まれている風呂敷を持ってきた。

紙が入っているかのように薄く、それでいて幅はA3くらいは十分にありそうだ。

「は、はい。改ます」

緊張で変なことを口走りながら、俺は風呂敷を開けていく。

傷つかないように気をつけて最後まで行くと、年代物の茶封筒が、封筒の口には知らない印影が刻まれている。

というよりも、これはどこかでみた気がする、蜜蝋とかで溶かして固めたものだ。

「開けてくれないか、中身を知りたい」

全員が思っていることだろう。

固唾を飲んで、一同が見守る中、俺は借りたペーパーナイフで蜜蝋部を破り、中身を確認するために、ゆっくりと、封筒を傾けながら風呂敷の上へと出した。

出てきたのは英語の書類だ。

「英語?」

「なら自分の出番か」

叔父さんがのっそりとやってきてその紙を見る。

口にはマスク代わりのハンカチで、直接息がかかるのを防いでいた。

「これは株券だ。名称はアマーダン、えっとアマーダン鉄道公開会社の株式を1000株有しているとある」

「アマーダンってどこ?」

叔母さんが言ったがそれは俺も同じ気持ちだ。

そして父親がスマホでサッサか調べると結果が出てきた。

「イギリスだ。イギリス北部、今はダンディー州となっているが、以前はアマーダン州としてあったらしい。グッディ家という、今はアマーダン公爵が治めていた土地だそうだ」

「そういえばお父さん、イギリスに単身赴任していたわね。もうずいぶんと昔だけど」

そのあたりの話は、昔聞いたことがあった。

ただ多くは覚えていないし、仕事で行っただけというニュアンスだった記憶がある。

「これって、今も有効なのかしら」

「破産していなければ、この株券には有効期限なんて書かれていないからね」

弁護士にでも聞かないとわからないだろうけど、と叔父さんは続けた。

「ともかく、これはマサアキのものだ。好きにしたらいい」

いいながらも叔父さんが封筒へと株券を戻す。

封は破れていたが、それをつけることはもうできない。

そして、俺はこのアマーダン鉄道という会社の株主になったわけだが、あとは弁護士を探して自分ですることになりそうだ。

面倒なわけだが、それでこの株の配当でももらえるのなら、きっと安いものなのだろう。

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