ヘンテコ えんぴつ
「 ヘンテコ えんぴつ 」が巻き起こす、キュンをくれる物語。
私の高校には、ヘンテコなえんぴつがある。それは、校舎3階の隅、生徒会室前にあった。
学校への要望など、自由に書けるノートと一緒に置いてあり、えんぴつの先には鳥なのかワニなのか、よくわからない物が付いていた。
「 見てこれ〜、制服もっと可愛くしてとか書いてあるー! 」
「 もう、間に合わないじゃーん! 」
3年生の私は、暇つぶしに毎日友達とこのノートを見ては楽しんでいた。
半分以上が、落書きに近いような内容の中、私はこの日、見つけてしまう。
「 何、このヘンテコな生き物?! 」
猫なのか犬なのかよく分からない生物が、毎日1匹ずつ書き足されていくのを、私はいつしか心待ちにしてた。
「これ、誰が書いてるか知ってる? 」
生徒会室に出入りする役員にも聞いてみたが、結局誰が書いているか分からないままの日々が続いた。
卒業を控えた2月の放課後。数日ぶりの登校で、ノートを見た私は驚いた。
「 何これ? ハート抱っこしてる! 」
今までの素っ気ない絵とは違い「 N 」と書かれたハートを胸に抱いていたのだ。しかも、あの ヘンテコえんぴつ がどこにも見当たらない。
私はモヤモヤとした気持ちのまま、自動玄関へと向かって階段を降り始めた。1階に着く少し手前で、1人の生徒とすれ違った。
「 あ……、生徒会の子だ 」
彼は、少し驚いたようにこっちを見ると、足早に階段を駆け上がって行く。
「 待って! 聞きたい事があるんだけど……」
振り向いた私は、すぐに気付いた。
あの、ヘンテコ えんぴつ の、ヘンテコな生物がポケットから覗いていたのだ。
「 ねぇ、その えんぴつ、生徒会の……。もしかして…」
結局、立ち止まってくれない彼を追いかけて、3階の生徒会室の前まで戻ってきてしまった。
「 先輩、気付くの遅すぎます!! 」
彼は、ヘンテコえんぴつ をポケットから取り出すと、ノートに「 N 」の文字を書き足した。
「 内藤 奈々 先輩、俺の事、覚えてないですか? 」
「 えっと……、去年 委員会で一緒だった……かなぁ? 」
「 はぁ〜、脈なしかぁ〜 」
彼はそう言いながら、スネたようにしゃがみ込んだ。そんな彼の姿が、私の目にはなんだか可愛らしく映った。まるで、あの ヘンテコえんぴつ みたいに。
私も、彼の横にしゃがみ込むと言った。
「 ねぇ、あの絵って、猫?犬? 」
すると彼は、あの ヘンテコえんぴつ を私の目の前に持ってきた。
「 えー!! ヘンテコすぎー!! 」
私の笑い声が、3階の廊下に響きわたった。
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