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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
請負人見習い

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ライテの市場で昼食

 

 2つの店でかなりの時間を過ごしたので、魔道具店を出た直後にお昼を告げる鐘が鳴った。


「お腹すいたなぁ」

「そうだな。市場に行くか」

「ですね。まだまだ武器を買い替えたいので余裕もないですし」


 2人はお金の入った皮袋を触りながら市場へ行くことに決めた。

 迷宮で稼いだ分が武器へと消えたので、食事処ではなく市場の屋台で済ますことにしたのだ。

 屋台であれば交渉次第で大きい物を同じ値段で買うこともできるし、お腹を満たすものだけを狙って買うこともできる。


「明日は迷宮潜る?」

「そうだな。少しでも稼ぎたい」

「地下4階でリトルボアを狙いましょう。お肉と毛皮です」

「せやな」


 欲を言えばホーンボアを狙いたいところだけど、待ち時間を考えるとリトルボアの方が効率がいいと思う。

 並んでなければホーンボアに切り替えればいい。


「市場の場所はウチが知ってるで。一旦大通りに出てもええ?」

「いいぞ」


 組合で聞いた美味しい店情報は組合基点なのだ。

 そのため、裏道に入った今の場所からだと自信がないので、一度大通りに出て組合の方向を確認してから進む。

 途中なんどか迷いつつも、なんとか市場の入り口まで来ることができた。


「ここが市場や!」

「入り口付近は雑貨とかなんだな」

「中に広場があって、その辺が屋台通りになってるらしいわ。その周辺で食材を売ってる。奥に行けば掘り出し物があるかもしれへんねんて」

「へぇ、じゃあ食べた後に見に行くか」

「楽しそうですね」


 食事の後は掘り出し物探しに決定した。

 いい物が見つかるといいなという思いと、美味しそうな匂いでワクワクが2倍になったウチは、組合でおすすめされた屋台を探す。

 人気なので広場沿いに出店されると聞いていたそれは、間違いなく大通りへと繋がる一等地に建っていた。

 ホーンボアステーキのお店である。

 網で焼かれている大きく切られた肉から骨が突き出ており、店主である熊の獣人は骨を掴んでくるりと回す。

 肉から浮き出ていた脂が網へと落ち、じゅうぅぅぅという音と共にいい匂いが漂う。

 味付けはシンプルに塩。

 それをパラパラとかけたら、屋台の前で待っていた客に骨を持ち手にして渡す。

 ニヤリと笑う熊が差し出す肉……めちゃくちゃ美味しそうだ。


「うぅ……早く食べたい……」

「結構並んでるけど……これは並ぶだろう」

「じゃあわたしは飲み物と野菜を買ってきます。お肉はお願いします」

「パンも買ってきてくれないか。一応俺の金も持っていってくれ。多分大丈夫だと思うけど」

「わかりました。行ってきます」


 お腹が空きすぎてあまり動きたくないウチと、そのお守りとしてカインが行列に並ぶ。

 ネーナは肉以外の物を買いに分かれる。

 合流は買ったものが食べられるように椅子と机がいくつか置かれている場所になった。


「この待ち時間が拷問や……」

「だなー。あー腹減った……」


 ぎゅるぎゅると鳴るお腹を押さえながら列が進むのを待ち、ようやくウチらの番が来た。

 目の前では肉汁が垂れる大きな肉、香ばしい香り、凶悪な笑顔を浮かべる熊だ。


「肉3つ!」

「あいよ!大銅貨6枚だ!」

「高いなぁ!味の保証はしてくれるんやろな!」

「もちろんだ!食って驚くんじゃねぇぞ!ほらお待ち!」

「おおきに!」


 一つ大銅貨2枚、3つでポコナのいる獣の尻尾亭に泊まるより高い。

 間違いなくこの辺りの屋台で食べられる最高額だろう。

 周囲を見回しても、一番高いので新鮮な果物が銅貨4枚だから、肉はその5倍ということになる。

 これがリトルボアだともっと安いのだろう。

 さすが階層主の肉と言ったところだ。


「ネーナは……あそこだな。おいエル、大丈夫か」

「だいじょうぶ……肉しか見えてへんだけや……」

「大丈夫じゃないだろ……」


 何とかネーナの待つテーブルに着いたので、早速取り分けて食べる。

 もう我慢できない。


「んー!!んまっ!!めっちゃジューシー!肉の味がガツンときて、脂の甘みを塩が引き立てる!野生み溢れる後味が果実水を旨くするわ!!」

「勢いがすごいな……」

「美味しいですね!」


 一口が小さなウチと違って、ネーナとカインはガブリと噛みちぎっている。

 カインはさらにパンも齧っているので、ウチより勢いがあるように見えるのは気のせいではない。

 ちまちまと齧りながら果実水を飲み、半分ほど食べたところでようやく落ち着いてきた。


「ん?この野菜ドレッシングかかってるやん」

「そうなんです。野菜売りの人とドレッシング売りの人が合同で屋台を出していたので買っちゃいました」

「ふーん。気になるなぁ。後で連れてってくれへん?」

「いいですよ。すぐ近くです」


 ドレッシングは移動途中の村にもあった。

 そこからさらに広まった可能性もあるけど、村に広めた人がこの街でも広めた可能性の方が高い。

 獣の尻尾亭でウチからレシピを買った請負人か、あるいは商人。

 もしかしたらレルヒッポかもしれない。


 ・・・もしもレルヒッポならカツを売り込むチャンスかもな。いい値段で売れたら水生みの水筒かコップ買おう。


 そんな事を考えながら食べた野菜にかかっていたドレッシングは、フルーツの優しい香りがした。


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