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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
請負人見習い

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強化と武具新調

 

「それでは実際に強化を見ていただきます」

「ありがたいけど、なんで見せてくれるん?」

「効果があることを証明しないと強化しづらいだろうというオーナーの指示です」

「確かにそうやな」


 説明受けただけだと『そんなにすごいことができるんやな。で?効果はいかほど?お値段は?』になる。

 実際に見せてもらえるなら、同じ効果を自分の武器にもと言いやすい。


「この2本の投げナイフですが、未強化のまま互いにぶつけ合うと……、このように両方とも刃こぼれします」

「確かに」

「え?ウチわからん。どこ?」

「ここですよエルちゃん」


 ネーナが指差すところをじっと見ると、一部が欠けていることがわかった。

 日頃から剣の手入れをしている2人にはすぐわかっても、ウチにはあのあたりをぶつけたはずということしかわからない。

 そこからさらに爪の先よりも小さな欠けを見つけるのは不可能だ。


「では、片方の投げナイフを強化します。効果はただ硬さが上昇するだけです」


 お姉さんが机に置いた投げナイフの上に、石のような素材を置く。

 その上に魔石を乗せて、しばらくじっとしていると、かすかに魔石が光りだし、その光が素材に移る。

 素材の光が少しすると投げナイフに移り、ジワっと溶けるように光が消えた。

 お姉さんは息を吐き、投げナイフを手に取って色々な角度から見つめて、頷いた。

 どうやら成功したようだ。


「それではもう一度ぶつけます。左手が強化された方です。では」


 キンッと音がした。

 小さな火花も出たように見えた。

 でも、ウチにわかったのはそれだけだった。


「おぉ、こっちは欠けてない」

「あれだけの素材でこうなるんですか」

「同じ素材の武器同士なので差が出やすいんです。これが違う武器だったら差がわからないと思います」

「なぁなぁ、どこがどうなってるん?」

「こことここがぶつかったんだ。こっちは欠けてるけど、こっちは欠けてないだろ」

「お〜。ほんまや」


 示された場所は言われた通りだった。

 同じ武器でも強化されている方が強い。

 当たり前のことだけど、これが生死を分けることにつながると考えれば、できるだけ強化したいところだ。

 ふむふむと見ていると、お姉さんは使った道具を片付けた。


「それでは、試しに魔力を流してみてください」

「ありがとうございます。じゃあ俺から……あー、なんか投げナイフの中に魔力が流れていく感じがする。身体強化で武器を含めても表面にしか流れないのに」

「わたしにも……。あ、こういう感じになるんですね。腕と一体になっているような気もします」

「お嬢さんはいいのですか?」

「ウチは身体強化もできへんから遠慮するわ」

「そうですか。では、以上で案内を終わらせていただきます。何かありましたらお声がけください」


 お姉さんはぺこりと頭を下げた後、使った道具を片付けてカウンターから出て行った。

 そして、陳列された武具の位置を調整しながら、入り口付近に待機する。


「それじゃあ武具を見にいくか」

「せやな。綺麗な棒があったら欲しい」

「棒……棍ならあるんじゃないか」

「棍?」

「ほら、エルと仲のいい狐のお姉さんが使ってるやつ」

「あぁ。キュークスの武器!ウチのサイズであればええけどな〜」

「サイズのことを考えると作ってもらうことになりそうですね」

「そうなるかー」


 話しながら2階へと上がる。

 最初に目に入ったのは、煌びやかな装飾がこれでもかと付いている鞘に収まった大剣だ。

 もちろん柄にも邪魔にならない程度の装飾があり、柄頭はドラゴンの頭になっている。


 ・・・誰が買うねん……。


 それの近くには他にも装飾されている物も飾られているけど、大剣だけギラギラしている。

 他の装飾は綺麗なのに、ギラギラのせいで目がおかしくなりそうだ。

 2人も同じ意見なのか、目を細めて装飾された武器が飾られている壁側を見ていた。


「あれはないな……」

「儀礼用でも華美過ぎます……」

「とりあえず他の見よか……」

「そうだな」


 ギラギラ以外の場所は種類ごとにまとめて置かれていて、壁に飾ってある物、立て具に立てかけて置かれている物、樽や箱にごそっと入れられている物などに分かれている。

 飾られている物が高級品で、立て掛けられている物は良品、樽や箱の物は数打ちや中古品のようだ。

 ウチらが買えるのは樽や箱になると思う。


「とりあえず今のやつと同じような物を探そうぜ」

「そうですね」

「ウチは棒を探してくるな〜」

「気をつけろよ」

「あ〜い」


 2人と分かれて店内を回る。

 商品は剣や槍が多く、次に斧とナイフがよく目につく。

 ナイフは一つ当たりが小さいので、もしかしたら一番多いかもしれない。

 棍棒などの打撃武器もあるけど、見た目が凶悪なのと想像以上に重いので扱い辛そうだ。


「お、ここやな」


 変に湾曲した剣や、斧と槍が合体した物など色々見ながら回っていると、棍が置いてある場所に出た。

 キュークスが使っている身長よりも長い棍もあれば、ウチでも持てそうな小さな棍もある。

 商品説明を見ると、片手に剣を持った状態でもう片方で持つバトンらしい。

 相手への牽制や武器の破壊を目的とした硬い素材で作られていて、押さえ込みに使ったり防御にも使えるそうだ。

 剣だと刺さるため押し込んだ時に奪われる可能性もあるが、バトンは先が丸まっているので刺さらず鋭い打撃を与えることができる。

 トドメを刺すには別の武器が必要だけど、固有魔法の延長を狙うなら丁度いいかもしれない。

 木の棒より見栄えもいい。


「どれがええかな〜。木でもこんなツルツルテカテカになるんやな〜。金属のはちょっと重いし……。お、これ綺麗で可愛いやん。えっと……ホーンボアの角から削り出したんか」


 目の前には真っ白なバトンがある。

 両端は輪っかのような出っ張りの先が丸まっていて、持ち手から輪っかまでは同じ高さで揃えられている。

 棍は持ち手の範囲に皮が巻かれていたけど、バトンは輪っかから輪っかまでが持ち手となるようで、滑らせやすくするために何も巻かれていない。

 試しに軽く握って左右に勢いをつけると、手の中を滑っていく。

 端の方を持てばウチにとって結構なリーチになるし、真ん中を持てば左右を抜ける魔物を同時に牽制できそうだ。

 長さはウチの身長よりも頭半分ほど小さく、重さもそこまでないので持ち運びしやすい。

 何より真っ白なのがとても気に入った。


「これくださいなー」

「いらっしゃい!お嬢ちゃんが使うのかい?」

「そうやで!ウチが使う!」

「これは魔力を通せば硬くなるから、いい品だぞ!」

「そうなんやな〜」

「あぁ。大銀貨40枚だが払えるか?」

「問題ないで!はい!」

「ありがとよ!」


 レシピの販売代金のおかげで問題なく払えた。

 魔力を流すうんぬんについては諦めているので軽く流す。

 他にも手入れの方法を聞いてカイン達に合流する。

 手入れといっても水洗いして切に拭き取るだけだったけど。


「2人は決まったん?」

「俺はこれ」

「わたしはこれです」


 カインは今使っている剣とほとんど同じ物を、ネーナは少し小振りになって先が鋭く尖っている物を持っている。

 ネーナは取り回しやすさと、素早く突くことに特化するそうだ。

 カインが切り、ネーナが突く。

 役割もはっきり分かれていいと思う。


「じゃあ次は防具見る?」

「一応見るか……」

「持ち合わせが厳しいですけどね……」


 武器購入後、防具を見るために3階へ上がる。

 革鎧や金属鎧、魔物素材を使った鎧。

 小手やグローブ、盾に兜、肩当てや胸当てなど色々な物が種類ごとに置かれていた。

 しかし、武器を買って持ち合わせが少なくなった2人は買うことなく眺め、店員さんから武器よりも命を守る防具を優先すべきだったと言われていた。

 前の武器はまだ使えなくなったわけではないので。


 ・・・請負人向けの魔物素材を使った服とかもあったけど、見習いサイズは全部オーダーメイドやったしなぁ。ウチも今すぐ買う物ないわ。


 2人は1階で武器を買取という名の処分にしてもらい、一食分ぐらいのお金を得た。

 本来ならただ引き取るだけになる程度の品質だったけど、武器を購入しているのでおまけしてくれた。


「次はどうする?」

「わたしは魔道具が見たいです」

「それええな!」


 ウチに使えなくても料理がしやすくなる魔道具があれば、色々思いつくかもしれない。

 ぜひじっくり見たい。


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