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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
請負人見習い

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ライテの武具屋

 

 ライテで待機することになった初日。

 起きて準備をしたウチらは、アンリを始めとする迷宮調査に挑む請負人を見送りに来ている。

 アンリの他にはハロルドや他の指導役に加えて、ガドルフ達などの護衛パーティもいる。


「キュークス達も調査に行くん?」

「そうよ。とは言ってもわたし達はつゆ払いだけどね」

「つゆ払い?」

「そう。メインの調査担当を前後の護衛が挟んで消耗を抑えるの。速度重視だから護衛を多めに用意して、階層ごとに交代していくことになってるわ」

「へー。調査って大変やな」


 この編成は迷宮の調査だけでなく、辺境の調査、地方の開拓初期の物資運搬などにも使われる。

 メインとなる物を中央付近に置き、その周囲を大量の護衛が囲んで進むのだ。

 周囲の護衛は交代制で、消耗が激しい場合は途中離脱もありえる。

 目標達成のためにどれだけの人数を揃えるかが問題となり、場合によっては食料を運搬するだけの人員も用意する。

 今回はそれぞれが保存食を持ち、飲み水は魔道具で用意するそうだ。


「それじゃあ行ってくるわ」

「無茶はしないこと」

「はーい。いってらっしゃい!」


 キュークスとアンリに返事をして、調査団を見送る。

 ざっと数えて40人は超えていた。

 道中の魔物を倒すパーティ、階層主を倒すパーティ、調査をするパーティに分かれているらしい。

 キュークスは魔物を倒すパーティで、アンリは調査をするパーティ。

 ライテの請負人パーティが階層主を倒すパーティとなる。

 慣れているパーティに階層主を倒してもらい、報酬として素材を渡して、魔法陣を使って帰還する流れになる。


「よし!どこ行く?」

「まずは武具と防具を見たい!」

「そうですね。大物を見てから細かい物行きましょう」

「そうしよか」


 ウチら3人は武具屋を目指すことにした。

 組合で聞いた駆け出しが行くのは、武器屋と防具屋が合わさった武具屋だ。

 専門店より品数や品質が劣る分金額も少し下がり、駆け出しが必死に貯めたお金を使って買えるような物が置いてあるお店になる。

 中古品もあれば新品もあり、見習いから正式な請負人になった際に、先輩から後輩へとプレゼントするにも丁度いい品質だと説明を受けた。


 ・・・ウチの武器はハンマーから棒に変えるし、いい棒があれば買おうかな。木の棒で戦うのは見た目が悪いし。あと、とどめをさせる何かもあるとええな。


「ここやんな?」

「そうだな」

「なかなかの大きさやな」

「武器と防具のお店だからですね」


 教えてもらった武具屋は、大通りから2本路地に入ったところにあった。

 路地とは言っても、都市が大きいので普通に馬車が2台すれ違えるほど広い。

 ポコナが住んでいるウアームの大通りより少し狭いぐらいだ。

 その道に面して、石造りの3階建てで建っているのが目的の武具屋で、幅や奥行きは馬車5台を余裕で並べられるぐらい広い。


「いらっしゃいませ!」


 入ると女性の店員が出迎えてくれた。

 一階は買取や相談がメインになっているのか、武具はそこまで置いておらずカウンターが多い。

 置いてある武具も大きなものはなく、ナイフや靴といった比較的細かい物ばかりだ。


「お客さまは初めてのご来店ですね。簡単に説明させていただきます」


 入り口付近で周りを見渡していることから初めてだと判断され、お店の説明を受ける。

 1階は予想通り買取と相談がメインで、相談は体に合った武具の提示から、今後の依頼プランまで人に合わせた内容を幅広く行う。

 2階は武器のフロアで、振り回して試せるように大きな空間が用意されている。

 残る3階は防具のフロアとなり、試着スペースが併設されているそうだ。

 どのフロアでも制作依頼を受け付けていて、体に合った装備の作成や既製品の調整をしてくれる。


「当店に初めてですと、武具の強化についてもご存じないでしょうか?」

「ウチは知らんなぁ」

「俺は魔物の素材で武器や防具を強くできるってことぐらいしか知らないな」

「わたしもそのくらいです」

「わかりました。それでは強化についても説明させていただきます。こちらへどうぞ」


 店員にカウンターへと連れていかれる。

 ウチらには少し大きい背もたれのない椅子に座り、店員のお姉さんが来るのを待つ。

 お姉さんはカウンターの向こう側で、小さな投げナイフと細かい石や魔石を取り出していた。


「お待たせしました。こちらの投げナイフと各種素材、魔石を使って強化の実演を行います」

「「「お願いします」」」

「まずは強化についてです。強化とは文字通り武具を強くする方法です。手に馴染んだ武器、デザインを凝った防具など、愛着のある物を長く使いたいけれど、戦う魔物によっては心もとない。そういった時に行います」

「なるほどなぁ」


 せっかく依頼して作ってもらった武器が、迷宮の階層を少し進んだだけで使えなくなるなら、誰も作らなくなる。

 そういった時に強化を行うことで長く使えるようにするというわけだ。


「強化には対象の武具、魔物の素材、魔石または大量の魔力を持った付与ができる人が必要になります。魔石または付与を行う人の魔力で、素材にある魔力特性を武具に押し出すことで強化できます」

「魔力特性?」

「魔力を流した時に発生する特性です。例えば魔物のほとんどが持っている硬くなる能力や、飛行系の魔物が持つ風を纏う能力、水生の魔物が持つ水を操る能力などです。それを武具に付与することで、水や風を纏う以前よりも硬い武具が出来上がります。

「火を出す魔物の素材なら燃える剣とか作れるってこと?」

「そうです。そういった剣を作るためには強力な素材か、ある程度の素材を大量に用意する必要があります。魔石費用も必要です」

「簡単には作れへんってことか」

「そういうことです。他にも色々と条件はありますが……」


 属性を付与する場合、その属性に合った魔石も必要になるそうだ。

 無属性の魔石で動かせるのは無属性の魔力だけ。

 火の効果を移したければ、火属性の魔石が必要になる。

 幸い迷宮には色々な属性を持った魔物がいるため、時間をかければ素材と魔石がそれなりに集まる。

 それを買取に出さずに確保していけば、いつかは作れる。


「最初の武器を細かく強化していけばいつまでも使い続けられるのか……」

「いえ、それができないのです。付与対象となる武具には許容できる魔力が決まっています。大きな武器ほど多く蓄えられ、元から魔力を多く持っている素材ほど器が大きいため入る量も多いのです」

「へー」

「鉄などの鉱石よりも魔物素材の方が魔力容量は大きいのですが、元々の硬さや加工のしやすさなどで、値段に影響します」

「俺の剣を強化してもらっても、すぐに強化できなくなるのか」


 カインが腰に下げた剣を鞘ごと取り外しながら言った。

 カインの剣は中古の数打ちで、材質はそこまで品質の良くない鉄。

 子供にとっては両手で持たないとダメなほど大きいけれど、大人であれば片手で振れるぐらいだ。

 素材は鉄で大きさもそこまでじゃない。

 説明の通りならそこまで強化できないだろう。


「そうですね……その剣だと地下10階程度に対応できるぐらいが限界でしょう。強化するならその時詳しく調べますが、あまりおすすめできません」

「そうですよね」

「わたしのも同じですね」

「はい」


 ネーナの剣はカインのよりも品質が悪い。

 家を飛び出した結果、中古の剣を買うことすら躊躇われて、組合で貸し出される物の中から1本貰ったからだ。

 訓練にも使われるため、どれだけ手入れをしても劣化が早く、今もなんとか使えるけれど早く買い換えた方がいいとハロルドからも言われていた。

 せっかくなのでここで何か見つかればいいと思う。


「強化した武器は魔力を流すことでその効果を発揮します。そのため、属性を使う場合はその属性に合った魔石を埋め込み、そこに魔力を流す必要があります」

「魔力流すんか……」


 ウチには使えないことが決まった。

 背中から出る魔力を考えると、防具なら可能性があるので、そこに期待しよう。


 ・・・ウチも燃える剣とか、風が出て吹き飛ばせる盾とか欲しかったわ。盾に関してはウチが当たれば吹き飛ばせそうやけども。


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