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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
請負人見習い

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71/305

ライテ小迷宮 地下31階(新階層)

 

 -ライテの請負人-


 地下30階の階層主は昨日倒したばかりだ。

 なので、復活までまだ2日はかかる。

 それを知っている俺たちのパーティは、道中の魔物をできるだけ避けて進み、他の階層主を素早く倒しながら新階層に一番乗りした。

 残りのパーティも少ししたら来るだろうが、階層主がいるかもと思って進むなら、自然と消耗を避けようと慎重になる。

 この差はでかいはずだ。


「ふぅ〜。さすがに20、25階層の主とほぼ連戦は疲れたな〜」

「だな」

「でも、その甲斐あって一番乗りなら文句はないだろ」

「サクッと見回って組合に報告しようぜ」

「低層とは違って1層見れば魔物の傾向もわかるだろうし」


 1〜10階までは頻繁に魔物の分布が変わるけど、11階から下は同じ魔物の大きさが変わったり、属性持ちになったりする程度の変化しかない。

 ライテに住んでいる請負人達は、自分達に狩れる程度の魔物を狙いつつ、属性の付いた魔石を集めて稼ぐのが主流だ。

 食肉なんかも取れるけど、持ち帰ることを考えるとあまり大量に手に入れるのは辛い。

 重くなると進むのが遅くなるし、戦闘の邪魔になる。

 軽量袋を持った運び屋を雇ってもいいが、護衛もしないといけないので依頼がなければ基本持ち帰らない。

 帰りに軽く手に入れる程度だ。


「見た目は変わらず洞窟だな」

「まぁ、小迷宮じゃ環境は大きく変わらんだろう」

「中迷宮からは自然の中だから面倒らしいけどな」

「俺たちにはここが合ってる」

「違いない」


 一度近くにある草原の中迷宮に行ったことはある。

 階あたりの広さ、魔物の強さに数、色々なところが比べ物にならなかった。

 低階層ならなんとかなったが、中階層では1、2体の魔物を相手にするのがやっと。

 手こずっていたら追加が来て苦戦、あげく撤退ということを何度も繰り返した。

 今だからこそ分かるが、圧倒的な装備不足が原因だ。

 小迷宮で稼いだ金で、中階層から取れる素材を使った武具を購入するべきだった。

 小迷宮では倒した魔物の素材を使って徐々に装備を新しくしていたけど、そのやり方では中迷宮に対処できないのだ。

 さらに魔道具の購入や、武具の強化なんかもやる必要があり、それを知らずに挑んだ結果ライテ小迷宮に出戻った。

 俺たちには敵の動きがある程度制限される洞窟が合っているんだ。

 機会があればもう一度挑戦してみてもいいかもしれないけどな。


「しかし、魔物が出てこないな」

「ひとつ上が蛇だったから壁や天井にも気をつけているが何もない」

「強い奴が一体だけ存在する階ってことか?」

「ほかの小迷宮の構成でそんな場所あったな」

「あぁ」


 結構歩いているし、何度か分かれ道を曲がったり、行き止まりを引き返したりもした。

 だけど、今のところ魔物の気配はない。

 各階が階層主ぐらい強い魔物1体だけの小迷宮があるので、そういった階かと思ったけど、その迷宮は一本道ですぐに広場に出たはずだ。

 構成が違うだけだとしたら言い返せないが、恐らく1体だけの階ではないと思う。


「ん?さっきここ通った時、床こんな感じだったか?」

「濡れているな」

「何かがいるのはわかったが、洞窟にいる濡れている生き物ってなんだ?」

「カエル?」

「カエルなら鳴き声がしそうなものだが……」


 突き当たりを引き返して分かれ道に戻ってきたら、その床が濡れていた。

 全員で床を気にしていると、頭上から妙な気配を感じた。


「上だ!」

「散れ!」


 何とか間に合って全員が分かれた。

 そして、俺たちがいた場所に落ちてきたのは、子供を丸呑みできそうな大きさのスライムだった。


「スライム!」

「なんてデカさだ!」

「攻撃はするな!何か素材を投げて動きを止めろ!」


 手早く背負い袋を開いて、途中の階で集めた素材をスライムに投げ込む。

 スライムは何かを消化している間は動かない。

 その間に体勢を立て直し、倒すかどうかを考える必要がある。


「消化が早い!」

「また集めればいい!じゃんじゃん投げろ!」

「さらにデカくなってないか!」

「撤退だ!今のうちに回り込め!」

「こっちだ!」


 素材をばら撒きながら地図担当が示す道へと走る。

 スライムは俺たちではなく素材を狙って動き始めた。

 しかし、素材を体内に引き込むと、もっと寄越せと言うようにこちらに移動してくる。

 小さなスライム程度なら武器に魔力を流して斬れば何とかなるが、この大きさを相手にするにはいささか品質不足だ。

 こうなるとわかっていれば中迷宮産の素材を使った武器にしていたものを、小迷宮だから十分と素材を強化に使わず売り払っていたツケが回ってきた。


「倒せないか?!」

「全員の武器を失うつもりなら何とかなるかもな!」

「途中の攻撃もあるのでうまくやれば消耗を抑えられるのでは?」

「勝てない戦いはしない!逃げるぞ!」


 スライムは溶解液を飛ばせば体積が減る。

 さらに動けば動くほど魔石が小さくなっていくので、持久戦なら倒せるかもしれない。

 だが、その場合2体目が出てきた時点でアウトだ。

 今は逃げて上からくる他の請負人に情報を渡すことだけを考えるべきだ。

 命あってのことなのだ。

 逃げるのは恥じゃない。


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