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迷宮王国のツッコミ娘  作者: 星砂糖
請負人見習い

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ガドルフたちの帰還

 

 ボーラを得たウチは草原ニワトリと草原ウサギを狩ったり、清掃の依頼をこなしながら過ごしていた。

 時たま発作のようにアンリから森へ連れて行かれ、スライムの魔石を抜き取ることもあったけど、アームベアなどの強い魔物に遭遇することなく安全に採取もできていた。

 そんな日々を過ごしていたある日、いつも通り草原ウサギと草原ニワトリの肉を女将さんに渡した時に呼び止められた。


「そういやガドルフたちが帰ってきたよ」

「ホンマに?!」

「あぁ。荷物を置いてから組合へと戻っていったのさ。今ならまだ居るんじゃないかい」

「おおきに!行ってくるわ!」

「行ってらっしゃい!」


 女将さんに送り出されて組合へと向かう。

 解体をお願いした時に何も言われなかったけれど、買取所の人達はウチとガドルフたちの関係をあまり知らないんだと思う。

 そもそもガドルフ達が買取所に寄ったかもわかってない。

 依頼の完了と報告でずっと会議室に篭ってる可能性もある。


「ミューズさん!ガドルフ達が帰ってきたってホンマ?」

「あ、エルちゃん。はい。本日昼過ぎに戻られて、荷物を置いた後に再度来られました。今は会議室で報告中です」

「そうなんや。じゃああっちで待ってるな!」

「はい。何かあれば声をかけますね」


 食事処で待つことを伝え、移動した。

 果実水を飲みながら周りの請負人を観察して待っていると、ミューズさんがやってきた。


「会議室へ飲み物の追加を持っていった際にエルちゃんのことを伝えました。会議室に来てほしいそうです」

「ウチが行ってええの?」

「はい。主要な話は終わったそうです。この後は情報の整理とエルちゃんへの説明をするようですよ」

「おおきにミューズさん!」


 ミューズの案内で会議室へ向かう。

 扉を開けるとガドルフ達の3人に加えて、アンリの父親でウチの診察をしてくれたサージェと、知らない男の人がいた。

 男の人はウチが入ってきたのを見て、4人に挨拶をして席を立ち、扉に近づいてくる。


「君が生き残りの少女ですね。これから1人で大変だとは思いますが、腐らず生きてください。それでは」


 ウチの返答を待たずに言いたいことだけ言い、頭をポンと叩いて出ていった。

 どうやら激励されたようだけど、どうしてだろうか。

 調査の結果大変なことが分かったので、それに巻き込まれたウチを思ってのことかもしれない。

 ただ、今はそれよりも大事なことがある。


「おかえり!」

「おう」

「はっはっは!元気そうだなぁ!」

「ただいまエルちゃん!」

「キュークスはボサボサになってるなー」


 ウチの挨拶にそれぞれが返してくれた。

 手招きしてくれたキュークスに近づくと、出発前はツヤツヤだった毛並みが、ボサボサになっていて、所々汚れがついていた。


「アンリは問題なく教えれただろうか」

「教えてくれたで。ウチに合ったやり方も提案してくれるからめっちゃ助かった!」

「そうか。それはよかった。アンリも成長したな」


 しみじみとサージェが呟いた。

 アンリには大変お世話になっているので、父親の評価が良いのは嬉しい。

 話を聞くと、魔法に傾倒するあまり人と話すのが苦手なことに危機感を覚えていたがどうすることもできなかった。

 そんなところにウチが現れ、師事する相手が必要だと分かったのでねじ込んだそうだ。

 固有魔法で興味がひけるはずなので、そこから会話できるようになればいいと考えた。

 対象が子供だから大人を相手にするよりはいいという判断もあった。


「ウチと話せるようになるだけでええの?」

「ん?あぁ、今のところはそれでいい。今後のことはどうなるかわからないが、あの子にも色々な選択肢を用意してあげたいのでな」

「ふーん。よくわからんけど、そういうもんなんやな?」

「そうだ。人と関わって自分のやりたいことを探してほしいと考えている」


 アンリの戦い方や知識はサージェとその仲間が教えたもので、それ以外の人と関係が薄い。

 組合関連の人とは話せるが、それも最低限なため一人で依頼を受けさせるには心配になる。

 そうなったのも過保護に接したサージェ達のせいなのだが。

 アンリ本人は特に気にしておらず、サージェの後をついていくつもりだと過去に話したことがあるようだが、親としてはもっと色々なことを経験してほしい。

 そのためのウチらしい。


「何にせよ、独り立ちまでもうしばらくかかるだろう。その間アンリをよろしく頼む」

「わかった。まぁ、よろしくされるのはウチやねんけどな」

「そうでもないだろう。ウサギ狩りの実力、見させてもらうぞ」

「もうすでに知ってるんか!」


 ニヤリと笑ったサージェからウチの二つ名が飛び出した。

 ガドルフ達も笑っているので、3人も知っているようだ。


「さっき出ていった役人も知っているぞ。ここに戻ってきて一番最初に確認したのがエルのことだったからな」

「そうなんや。ほんでさっきの人は街の役人なんか」

「あぁ。一緒に調査に出向いた人だ」

「へー」


 だからウチのことを知っていて、将来について話したのだろう。

 街ではどうしようもできないけれど、祈っておくということらしい。


 ・・・街では何もできないと宣言するのがポイントなんやろな。助けを求めても街で援助はせぇへんし、自分でどないかしろと。孤児院に入れば違うんやろうけど、ウチは自由に生きるんや!


「それでは、エル。座ってくれ。君のいた村で何が分かったかを説明する」

「わかった」


 サージェに促されて椅子に座る。

 ガドルフ達はのんびりと飲み物を飲んでいるので、そこまで深刻な何かが起きたというわけではないようだ。

 もしも村と同じようなことがここでも起こるとなったら、こんなにのんびりできるわけがない。


「結論から言うと、よくわからなかった」

「はい?」


 ・・・わからんかったんかい!!


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